下校時刻
これからリアルの方が忙しくなるので更新が遅くなるかもです。本当にすいません。
「だから、ここはやっぱり押し倒して!」
「いや、誠実に行くべきですよ!」
神楽と香澄の不毛な攻防は数十分と続いていた。さすがの赤坂さんもこれにはついていけないようで。
「おい、そろそろ帰ろうぜ」
「兄さんは黙っていてください」
「神辺は黙ってろ!」
「はいっ………」
怖すぎない?怖すぎるよ。いくら喧嘩してるからって。ほら、もうすでに天音さんブチギレる寸前だって。やばいって。
「ねえ………」
天音さんが言葉を発したと同時に、校内中にチャイムの音が鳴り響いた。
「え?もうこんな時間ですか?」
香澄がキョトンとした声でそう呟いていた。
「あちゃー今日中に決まらなかったかー」
神楽がそんなことを言うのだが。え?あれで今日中に決めようとしてたの?
嘘でしょ?
「じゃあ、今日のところは解散ねー」
天音さんの甘い声音に包まれて今日の部活動はここでお開きとなった。
一体、部活で何をできたのだろうか?
「ふぅ〜」
今日はなんか無駄に疲れたな。あのテンポについていくなんて至難の技だぜ。明日もこの調子で行くのは少しばかりきついものがあるな。
「さっさと寝るか」
リビングのソファーでくつろいでいた体を立ち上がらせて、俺はお風呂場へと走って行った。
「なんで俺が告白練習相手しないといけないんだよ」
ばっと扉を開けて、誰もいないことを確認してから、俺はその中へと入って行った。
「兄さん!」
「あっ」
やってしまった。前に警戒しすぎて、後ろを警戒するのを忘れていた。
「おい香澄。俺たちは兄弟だ。男と女だ。なぜ、お風呂に入ろうとしている?」
「え?兄弟で入っちゃダメなんですか?」
「いや、それは」
「ダメではないですよね?」
「…………あ、ああ」
ダメではないけど!ダメではないけどさ、色々あるじゃん。世間体とかあるじゃん。
「世間体は気にしなくても大丈夫ですよ」
香澄が俺の考えていることなどお見通しといった風に言葉をあげていた。やべぇな。こいつエスパーかよ。
「それに今日は両親がいませんし」
「あのやろう」
「何ですか?」
「いえ、なんでも」
くそ親父が!なんでよりによってこの時にいないんだよ。あっ、逆か。こいつさてはいない時に狙って来たな。
「さて兄弟水入らずです。お風呂に水はつきものですけど、なんちゃって」
「あははははは」
笑えないな。
「おーけー。少し待ってくれ」
「え?兄さんは私とのとの時間を大切にしてくれないんですか?」
だから、なんで一々そんな怖い目で見てくるの?もう、視線が凶器なら何回も殺されてるよ。
「ちがうって。いちよう兄弟だけどお互い裸っていうのは………」
「私はいいですけど?」
「俺がダメなの!」
「兄さん、純粋ですね」
当たり前の反応だよ!
「わかりました。では兄さん前を見て目を瞑っててください」
「え?」
状況を飲み込めず俺は言われるがままに目を瞑った。
そして、頭の部分にフニャッという感覚。
「!なにしてるんだ!」
「なにって。洗っているのですが?」
見てみればタオルだけを体に巻いている香澄の姿がすぐ後ろにあった。そして俺の頭があったとされる場所には案の定、慎ましやかなお胸があって。
「兄さんの体を浄化しないといけませんからね」
「浄化って………」
「だって今日兄さん。あの赤坂とかいう雌豚に何回も話しかけられていたじゃないですか?何回も告白されてたじゃないですか?おまけに神楽とかいうやつにも床ドンしてたじゃないですか?」
わあああ!そんな並べないで。自分を殺したくなるから!
「これって立派な裏切り行為ですよね?でも、兄さんが本気でそんなことするわけがない。だから、浄化するんです。兄さんにこびりついた悪い瘴気を晴らすんです」
「え、え?え?」
「だから、兄さん。大人しくしてください」
それは虚空を睨む鋭い目つき。闇色に染まった瞳が俺を襲う。俺はそれに抗うことをしないまま、あっさりと負けてしまった。
「ふふっ、兄さんとお風呂デートです♪」
なんだよ。お風呂デートって。
そう言いながら香澄は俺の髪をわしゃわしゃと洗っている。そして、頭が揺れるたびに俺の後頭部は柔らかいそれへと激突する。
発育がよいとは言えないが、それは形を成していて可愛らしい。
って、ダメだダメだ!なに、妹に欲情してんの?!俺、お兄ちゃん、香澄、妹!
どぅーあいあんだーすたんど?
「兄さん、どんどん浄化されていきます。もとの、あの可愛らしい兄さんへと戻っていきます。私の愛と私への愛でできていた兄さんに戻っていきます」
もともと、そんなもんじゃなかったわ。
でも、あれだな。ヤンデレな妹を持つと大変だな。




