告白作戦、シチュエーション
「告白するなら学校の外の方がいいと思います」
「なぜだ、香澄」
ラブレターを書き終え、さて次はどこで告白するかを考えよう。ということで、みんなで意見を出し合っていた。
「どうもこうも、学校内だと邪魔が入りやすいじゃないですか」
「邪魔、ね」
おそらく俺の考えている邪魔者と、香澄の考えている邪魔者は別物だろう。推測でしかないが、そうだと直感が告げていた。
「それに、相手が逃げ出すことを阻止することもできます」
「あ、うん」
適当に答える俺に対して赤坂さんは真剣に答えていた。たしかに自分に関わることではあるけど。そんなに真面目になっちゃう。
「阻止、ですか」
赤坂さんもこのノリについてこれるようになっている。なんてことだ。これではこれが新たな感染病ということになってしまう。
「ええ、だんだんと壁に追い込んでいき、流れなくなったところで、アタックするんです」
「なるほど」
「何言ってんだ?こいつ」
神楽がなぜか俺に尋ねてきた。たしかに俺は香澄の兄ではあるが、全てを理解できるほど有能ではないし、まず香澄の行動を理解できるとは思わない。
「神楽さんはバカなんですか?その胸のように頭の中身も貧相なんですか?」
「あ?喧嘩売ってんのか?売ってたな。今のは明らかに挑発だったよな?」
「ただ見たままの事実を言葉に表しただけですけど何か?」
「そっちも言うほどないじゃないか」
「発展途上なんですー」
きゃー。龍虎の一戦が幕を開けようとした時、そこに雷鳴が轟いた。
言わずもがなその正体は天音さん。視線という武器だけで香澄と神楽を追い込んでいる。それも無自覚に、だ。
「とにかく、なにか文句があるなら自分が案を出してください」
「最初からそう言えよ」
悪態をつきつつ神楽は案を出そうと開口した。
「やっぱり帰り道一緒に帰りながらだな―――――」
「すいません、なぜ学校の中という意見が出ないんですか?」
「な?!邪魔するなよ。今はあたしが意見を出してるから」
いや、素朴な疑問を言ってみただけなのだが。
そして神楽。その案外可愛い恋愛小説脳を少しは隠せよ。
「学校内で、ですか……」
「なにかあるのか?」
「いや、敵……ライバルがたくさんいるんですよね」
今こいつすごい形相で敵とか行ってたんだけど。超怖いんだけど。なぜか、香澄に通づるものを見出さずにはいられなかった。
「学校ていうのはアリだと思うよ」
今の声は恵からだ。俺の後方から声を出していた。なんで、後方にいたの?たまだたよね。
「というのは?」
「いや、一緒の方向に帰るとは限らないし、そこまで話題が弾むとも思わないから。多分気まずくなるんじゃないかな」
「なるほど。ですが、大丈夫です。一緒の方向に帰りますから」
「なんで、知ってるんだ?」
「知らないんですか?」
「知らないわ!」
なんでそんなに「ありえない」見たいなら顔でこっちを見てくるんだよ。そっちの方こそありえないわ。
「好きな人に関することってリサーチするでしょう?」
うん、しない。
「私は学校内派かな〜」
間の抜けたゆったりとしたようなあまねさんの声が反響した。
「学校だと、見せつけることができるから」
ほう、なかなかえぐいこと考えるじゃないですか。そして策士。だが、これをほぼ無自覚に言ってるんだから末恐ろしいよな。
「ああ、なるほど。見せつける、ですか。考えてませんでした」
あら、またいらないことを教えてしまっていた。




