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告白作戦、壁にドーン!

「す、好きです。付き合ってください!」


 結局、相手役は俺がやる羽目になった。香澄は天音さんにマークをされており、身勝手に動くことができない状況だ。


「よろこんで」

「兄さん?」


 あああ!じゃあ、なんて答えるの。断るの?練習段階から断るの?それは酷すぎるよ。


「たくちゃん………気にしなくていいから」


 さすが、恵は大人だな。うん、言葉にしてないだけマシだ。だが、その岩さえ砕けそうな握り拳を作るのをやめたらなを良かったかな。


「なんか………ダメだな」


 この口調はやはり神楽。腕を組んで何か違うという旨の言葉を挙げている。


「そうですよね」


 それに赤坂さんも同意しているようだ。まあ、たしかにありきたりではあるな。ありきたりでダメとは思わないが。


「こう、もっとバンッと行く感じで」

「そうですね、ドンッと」


 赤坂さんもこの部活の空気に飲み込まれてしまった。バンッとかドンっとか、何をしたらそうなるんだよ。


「壁ドンとかどうでしょうか?」

「よし、それだ」


 天音さんの言葉に即神楽は返答する。相変わらず天音さんには忠実だな。


「え?私が男の子にするんですか?」

「そうだが、何か問題があるか?」

「…………別にいいです」


 そしていきなり赤坂さんが近寄り、俺にドンッ。


 その顔の距離は近くなる。だが、髪に隠れて赤坂さんの顔は確認できなかった。やはり、緊張しているのか、恥ずかしいのか。


「これでいいですか?」


 と、思うとすぐさま起き直り神楽に問うていた。


 うん。俺に興味ないのか。当然だけどさ、なんか傷つくわ。


「で?神辺はどう感じた」

「ん、俺はなにも感じなかったぞ?愛すべき妹以外の女の顔に興味なんてないしな」


 俺はその言葉をスルーしながら、感想を述べていた。他の面々もスルーするようだ。


「ドキドキはしたけど」


 覗き込む香澄。


「兄さん?」


 なんでさ?!ていうか、俺の真似して情報を偽装するなよ。全然似てなかったけど。


「やっぱり、男の人側からしないとこういうのは意味がないのかしら」

「そうっぽいな」


 天音さんの意見にはちゃっかり乗っかる神楽。


「逆に男の人がしたらどうなるのかしらね?」


 ふと、天音さんが出した一言。それに釣られるかのようにもう一つの言葉が放たれた。


「さあ、兄さんしましょうか」

「黙れ!天音も、そういうこと言わない」

「え〜。面白そうと思ったのに……」

「さあ、やってくれ」


 神楽てめ〜!天音さんの意見に左右されすぎだろう。おい、香澄が近寄って来るんだけど。


「ストップ香澄。恵もそこを動こうとするな!」

「神辺………」


 労いの一言でも来るか?別に嬉しくないけど。


「早くやれよ」


 労いの一言ですらなかった。なんなの、この独裁者。顎をくいくいするな。


 そんな中でも香澄は近づいてきて。


「兄さん、早くしてください」


 なんで、お前が俺に近づいてくるんだよ。俺が壁ドンする側だよな。するとは言ってないけど。なのに、なんでお前がこっちに迫ってくるんだよ!


「ちょい、待ち」


 俺は少し後ずさる。そして、方向転換、右に全速力。


 天音さんへと近づいていく。そう、香澄封じである天音さんの元へ。香澄の方を見ながら俺は足だけを動かす。


 だから、こうなってしまう。


 これまた、香澄の挙動を見ていた神楽は俺の方に目を向けていない。


 そして、ドーンッと。咄嗟に俺は床に手を突き体を支える。だが、神楽は背中から落ちてしまい、背に寝転がるように倒れてしまっていた。そして、その上にある俺の体。


「へ?」

「な?!」


 気がつけばお互いの顔の距離は数センチ。その透き通った肌の色が見えてきた。たが、その白に若干のピンクが混ざり始める。


 そして、それと同時に。


「ふざけるな!どけ!」


 空いた俺のお腹に右足が炸裂。そのまま何メートルかを宙で駆け、壁にドーンッ。


 すいません。これ最初、壁ドンについてやってただけですよね?

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