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もっと平均的な女の子を

「あなたの悩みはなんなのかな?」


 さて、始めてきた悩み人への質問が始まった。時計は放課後の4:30を示している。


「え〜と……その……」


 なにか歯止めがかかっているような感じで、うまく切り出せていない。目の前の女の子はそんな感じだった。


「なんですか?悩みがないなら帰ってください」

「そういうこと言うなよ」


 香澄の発言に俺はストップをかけるのだが。


「だって私と兄さんの時間の無駄じゃないですか」


 相変わらずこいつはストレートに物事を言ってくる。


「香澄ちゃん、なにかな?」


 ゴゴゴと字幕がつきそうな雰囲気を漂わせるのは天音さん。ああ、やっぱりこの人怖いな。


「で、悩みはなんなんだ?」


 神楽が香澄からバトンを継ぐように質問をした。香澄とは違ってまともな質問の仕方だ。


「ここで、言わないといけませんか?」


 と、彼女は俺に視線を送ってくる。恥じらいを込めた顔で。


「………」


 香澄、なに睨んでるの。あとで殺しますから、みたいな。なに、私の兄さんに色目使ってるんですか、みたいな。


 黒く染まった瞳で彼女を睨み刺していた。


「はい!わかりました言います!」


 それに気づいたか、彼女は虚勢を張って叫んでいた。


「私…………好きな人がいるんです」

「もしや、それが兄さんだなんて言いませんよね?もし、そうだとしたならば?ええ、わかってますよね」

「………はいっ」


 びくっと肩を震えながら、彼女は首肯した。


「同じクラスの、箱舟くんって子なんですけど」


 箱舟、なんか耳にする言葉だな。まあ、どこにでもありそうな名前だもんな。


「ああ、あいつか」

「知ってるのか?」

「まあな」


 へえ、神楽はこんなの興味ないと思ってたから、ちょっと驚いたぞ。だが、その本人の表情はどうも微妙で。


「いや、まあいいか」


 え?なんの話。見てみれば他の面々もなんとも言えない表情をしていた。もちろん、天音さん以外だが。


「えーと。なにちゃんだっけ?」


 そういえば名前聞いてなかったな。恵グッジョブ!


「あ、すいません。1年3組、赤坂由奈と申します!」

「由奈ちゃんはその箱舟くんのことが好きなの?」

「はい!」


 なんの淀みもなくはっきり言えるなんてよっぽど好きなんだな。


「またか………あいつ」


 神楽が呻きをあげながらそんなことを言っていた。一体なんなんだ?


「まあ、別に兄さんには関係のないことですから、知らなくてもいいですよ。というか知らないでください。兄さんが私以外の女のことを考えるなんてあってはならないことですから」

「いや、多分そうはならないから」


 恵が苦笑いでツッコミをしていた。あの恵が!


 っていうか、なんで俺だけ知らないの。


 あ、そうだ。俺教室でいつも一人だったわ。ぼっちだったわ。忘れてたわー。


 忘れてたわー。


「兄さん?涙流してどうかしたんですか?」

「うるさい。お前には関係のないことだ」


 嘘だ。やっぱり関係ある。お前がきてから人が寄り付かなくなった。だから、今俺はぼっちだ。


 嘘だ。ずっと前からぼっちだったわ。


「で、その箱舟とかいうやつと何をしたいんだ?」

「え、具体的には決まってないというか……」

「なんだ、ヤりたくねーのか?」


 ああああああ!ここでそれ言っちゃう?男の俺がいる中でそんなこと言っちゃう。めっちゃ恥ずかしんだけど。ほら、女の子が俺の方を睨んでくるって。


 あれ?香澄は、なぜか嬉しそう。恵は恥ずかしながらも俺の方をチラ見している。天音さんは微笑ましい表情で俺を眺めている。神楽は………おい。なんでお前が睨んでるんだよ。お前が作った話題だろ。


「ヤりたいですけど………」


 ああああああ!赤坂さんもそれ言っちゃう?!釣られて言っちゃったのか?


 っていうか。なんで俺の周りには普通の女子がいないんだよおぉぉぉぉぉおおおおおお!

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