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お悩み相談室のお知らせ

すいません。少なめです。

『お悩み相談室のお知らせ』


 この度、お悩み相談室を開始することになりましたことをご報告させていただきます。


 この取り組みは我が校生徒を対象としておりますが、ゆくゆくは外部の人も対象にしようと考えております。


 何かお悩みがあればどしどしお越しください。お待ちしております。


 ♦︎


「いいんじゃないか―――――」

「ダメですね」


 俺の言葉に被せるように香澄が言い放った。え?どこが?無難な感じだっただろう。


「これじゃあ、無難です」


 無難じゃダメなのかよ。


 俺たちはいま、新たに開設した『お悩み相談室』の案内ビラのレイアウト、内容を決めていた。ちなみにさっきのは恵が発表したものである。


「こう、もっとインパクトがないといけません」

「おう!案外気が合うな神辺妹」


 まあ、この二人ならもっと刺激を求めるだろうとは思っていたけど。


「貸してください。私が書きます」


 香澄は恵からパソコンを奪い取り、カタカタとタイピングを始めた


 ♦︎


 お悩みありますか?


 対人関係、迷子の捜索など。様々な悩みをお待ちしております。


 え?悩みがありませんか?


 そんな人はこの世に存在しません。なぜなら、私たち人間というのはとても揺れ動きやすい生き物だからです。


 自分の胸に手を当てて考えてみてください。かならず悩みは浮かんできます。


 ほら?浮かんできたでしょ?


 え?浮かんでこない?


 じゃああなたは人間ではありません。


 たくさんのご来客、お待ちしております。


 ♦︎


 え?何書いちゃってんの?


「神辺妹、これは?」

「お知らせのビラですけど」


 いやいやいや。確かに最初はすごく引き込まれやすい導入の仕方だったし、その内容も良かった。でも後半から暴走し始めたよね。インパクトは強烈だけど、終始意味がわからなかった。


 挙げ句の果てにお前人間じゃない発言するし。さすがにこれはダメだろ。見てみれば俺と同じ意見の表情が垣間見えた。


「神辺妹。これは流石に却下だ」

「な?!いいと思ったのに。人間誰しも悩みを持っているんだぞ、って伝えようとしてたのに」

「うるさい!お前人間じゃない宣言してる時点でアウトだろうが」


 うん神楽。超正論。


「貸せ。私がやる」


 う〜ん。できるのかな?


 ♦︎


 悩み求む。


 ♦︎


 はい!だめでした〜。


「ちょ、ちょっと待ってください」

「なんだ?」


 恵の声が聞こえてきた。


「いや、四文字ってどうかと………」

「内容は十分伝わるし、インパクトもあるし」


 たしかにインパクトはあるんだけど、俺の思ってたのとベクトルが違うんだよな。


 と、騒いでいると。


「これはどうかな」


 打ち終わった天音さんが俺たちの方に話しかけていた。


 そのスクリーンを俺は覗き込んだ。


 ♦︎


 悩み解決します!


 悩みの種類は問いません。

 秘匿情報は必ず守ります。


 たくさんのお悩み、お待ちしております!


 ♦︎


 あ、これだ。


 その場にいた全員がそう思ったことは言うまでもない。


「どうかな?」

「いいと思いますよ」


 返事をしたのは俺だけだった。神楽は当たり前といった風に鼻を立てている。恵はわずかに首肯をし、香澄は黙っているようだった。


「じゃあ、これでいい?」

「はい」


 そして、お悩み相談室が幕を開けた。

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