猫、捜索
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みなさん、これからもよろしくお願いします!
「ここもいないか」
ため息混じりに俺はつぶやいていた。30分続けるもあまりいい成績は残せていないようだった。
「お前ちゃんと探しているのか?」
「してるよ」
なぜか責任が俺の方に来た。神楽もなかなかしんどいのだろう。
路地裏を立ち去り、今は商店街を抜け切った住宅街。レンガの壁が横目に見える、そんな場所だった。
「なんか効率的な方法ないかな?」
「考えろ」
いつも思うが、神楽は少し刺々しい。気性が荒っぽいというか。
「猫じゃらしを仕掛けておびき寄せる、とか?」
「猫は猫じゃらしの在り処をどうやって見つけ出すんだ」
「歩いてたら、そこにあった!みたいな?」
その言葉に返しはなかった。やめてよ、自分でもちょっと恥ずかしいと思ってるんだから。
「結局、地道に探すしかないんだよ」
「…………はい」
しばらくして俺は返答する。
その背景は夕焼け色に染まりつつあった。
♦︎
「もう、兄さんに会いたいです!」
「香澄ちゃん。私もだから我慢して」
「?私と恵さんが持っている兄さんへの気持ちが同じと言いましたか?それは侮られたものですね」
私の愛の方が上に決まっています。なぜなら、兄さんと私は運命で結ばれているのですから。
「みんな〜!猫探してよ〜」
!
怖いものがあまりない私でもこの人はかなり上の部位にある恐怖だった。それくらい危険人物なのだ。
「わ、わかりました」
渋々私は首肯する。
ああ、早く兄さんに会いたいな。それよりも、あの女兄さんに手を出してないでしょうか。それが心配でたまりません。
まあ兄さんに限って私以外の女に靡くことなんてないと思いますが。
♦︎
夕日はもうその全貌を出していた。
「やばいな。早く作業を終わらせないと」
俺は内心焦っていた。猫が見つからないのだ。町中を回ってみたのだが、やはりどこにも見当たらない。
「神楽、今日は一旦引き上げて明日に延長しよう」
「あんた一人で帰っておけばいいじゃない」
神楽は未だに探し続けている。
「でも見つからないんじゃ――――」
「見つけるまで私は帰らない」
強い覚悟の上で神楽は捜索を続けている。こんな時間まで女の子を放っておくわけにはいかないし、仕方ないな。
「じゃあ、俺も帰らない」
「嫌なら帰っても文句は言わないぞ」
「別にいいんだよ。俺がしたいだけだ。ああ猫どこだろな?」
そんな俺の姿に神楽は目を丸くしていた。
だが、やはり見つからなかった。もう月が夜空に顔を出しているというのに。
「神辺。お前は帰っていいんだぞ。これは私たちの仕事だからな」
ここで言う私たちとは、神楽と天音さんを指すのだろう。たしかに俺は正規部員ではない。でも、ここまで来て帰るなんて俺にはできなかった。
「いいよ、俺も一緒に探すから」
「でも―――――」
神楽が何かいいかけた時。
"にゃあ"
と周囲から猫の鳴き声が聞こえてきた。ここは河川敷だ。草が生い茂っていて、そしてなおかつ暗く、視界が悪い。
「まさか」
俺はこれに一縷の希望を見出していた。神楽も俺と同じでその動きを止めていた。
「こっちの方だな」
耳だけを頼りに俺と神楽はその方向へと向かった。ザクザクと何度かの足音の後。
猫の鳴き声がどんどんどんどん大きくなって行く。
「見つけた」
微かに見えた影の動きから、俺は猫の居場所を見つけ出し、素早く飛びついた。
そしてその体を持ち上げて、その猫を確認した。しばらく画像と見比べて。
「この猫だ!」
神楽が歓喜をあげていた。
♦︎
「ありがとうございます」
俺たちは依頼人の家に猫を届けていた。
「この子は私の大事な家族なんです。見つけてくださってありがとうございました」
涙を流している依頼人。その姿に俺は胸が焼けるような感覚を覚えていた。
「神辺。ありがとな」
「なにが?」
「その………………最後まで一緒に探してくれたことだよ」
帰り道。神楽はいきなり俺にそんな話を持ちかけてきた。だが、最後になるにつれて声の大きさが下がって行っていた。
「案外悪くないな。こういうのも」
「だろ?」
そして、沈黙。ただ一瞬だけの沈黙であったが。
「本当に悪かったな」
「なにが?」
しばらくして、神楽は口を開いた。
「実は私お前のこと、女を侍らせる変態野郎と思ってたんだ」
「…………」
「でも、お前が手伝ってくれて、それだけじゃないってことに気づけた…………本当に悪かったな」
「別にいいよ。誤解が解けたようで何よりだし」
っていうか、お前俺のことをそんな風に思ってたのかよ。
あれ?香澄があんまりヤンデレしてない。
最近、これはタイトル詐欺なのではないかと密かに思っております。これから頑張って改善していきます。
よろしくお願いします。




