捜索ペア分け
「ね〜こ〜」
とある町の一角にて、そいつらはそこにいた。
「いませんね」
と、口にしていたのは俺だった。俺たちは依頼人の人と一度会ってから、捜索を始めていた。そして、早30分。
未だになにも見つけることができていなかった。
「路地裏の方にもいない、と」
「次行くぞ」
「どこにだ?」
「一々言わないといけないのか?」
威圧感を込めた鈍重な響きの声音。それを吐き出していたのは神楽だった。ちなみに聞いてみれば俺と同い年の高校2年生らしい。
だが、神楽の当たりが予想以上に強い。さっきだってそうだ。聞いたら、なんか聞き返されるし。しかも、めっちゃ怖いし。
「はあ。なんでこんなにトロイのと一緒に捜索しないといけないんだ」
「な?!」
失礼な!と、言うことができなかった。だって怖かったんだもん。仕方ないよね。
っていうか、神さま恨むからな。なんで、俺と神楽を一緒にしたんだ。
♦︎
「じゃあ、今からペアを決めま〜す!」
唐突に天音さんは口を開いていた。
「ペア?」
「集まって探すのは効率が悪いし、かといって一人で探すのも危ないでしょ?だからペアを作るの」
と、説明が終わったころで動き出した影が二つ。その影は一寸の狂いなく最短距離で俺に近づいてきた。
「じゃあ、私は兄さんとがいいです。というか、それ以外に選択肢はないと思うのですが」
「いや、たくちゃんは私と組むべきだと思うよ。だって幼馴染だし、一緒に暮らした時間がこの中で一番長いから、こういう共同作動もうまくやりやすいと思うの」
「いえ、兄さんは私と。この中で一番兄さんのことを理解しているのは私ですから」
と、お互い取り留めのない持論を披露している。ここにいるのは5人。つまりは2と3に分けるのだろう。
「待って!ペアはもう考えてるの」
そう切り出したのはこの部活の部長でもある天音さん。
「私と香澄ちゃんと、恵ちゃん。もう一つが拓人くんと、スーちゃん」
なるほど。なるほど?なるほど?!
いや、待て。
「どういうことですか!」
そう騒ぎ立てるのはやはり香澄。おそらく理由は……。
「私と兄さんが別々というのはどういうことですか」
やはり、か。香澄はひと時も俺から離れたくないのだ。だから、こういうことには敏感なのだ。
「まず、私とスーちゃんは経験者だから別れるでしょ。そして、さっきスーちゃんと拓人くんが仲よさそうだったから、組ませてみたんだけど」
「なら、天音さんと恵さんで組んで下さい。私はあっちへ行きます!」
香澄は有無を言わさぬ態度で、香澄は俺の方へと向かってきた。向こう側には涙目の天音さんが見える。
それを見てか、神楽が香澄の前に立ち。
「いいから、天音の言ったペアで組め」
「嫌です。私と兄さんが離れるなんて、そんなことあっていいわけがありません」
お互いに意見を譲らない。そして、それは激化して行く。
「いいから、天音の言う通りにしろ」
「誰の権限があって、私と兄さんの仲を引き裂けるのですか?」
「もう、喧嘩しないで!喧嘩したっていいことはなにもないよ」
間に入り込むように、天音さんは開口していた。
「元はと言えばあなたが私と兄さんを違うペアにしなければ―――――――」
「でも、それは」
「なんでもいいです。私は兄さんといきます」
と香澄は強引に推し進めようとするのだが。
「あんまり聞き分けない子は私あんまり好きじゃないなぁ〜」
ぎくっ、一瞬で背筋が凍てつくような雰囲気にそこは変わる。まるで氷点下の世界だ。
それっても『あんまり好きじゃない』とかいう次元じゃないよ。怒っているわけではなさそうだけど。
「ですが―――」
「香澄ちゃん」
「…………わかりました」
あの香澄が押し負けするくらい天音さんのそれが強いのだ。
やばい、この天然。香澄に対する抑止力になる可能性がある。
まぁ、それは置いといて。
「なんで俺がこいつとなんだ!」
「それはこっちのセリフだ変態!」
さきほどまで黙っていた神楽が、俺と同じ瞬間に動き出した。
「あらあら、仲が良いわね」
と天音さんの声とともに、香澄と恵のなにか暗いものを含んだ視線が当てられる。ああ、怖い。
そして、俺と神楽は同時に。
「「どこが!」」
と、叫んでいた。




