表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/53

捜索ペア分け

「ね〜こ〜」


 とある町の一角にて、そいつらはそこにいた。


「いませんね」


 と、口にしていたのは俺だった。俺たちは依頼人の人と一度会ってから、捜索を始めていた。そして、早30分。


 未だになにも見つけることができていなかった。


「路地裏の方にもいない、と」

「次行くぞ」

「どこにだ?」

「一々言わないといけないのか?」


 威圧感を込めた鈍重な響きの声音。それを吐き出していたのは神楽だった。ちなみに聞いてみれば俺と同い年の高校2年生らしい。


 だが、神楽の当たりが予想以上に強い。さっきだってそうだ。聞いたら、なんか聞き返されるし。しかも、めっちゃ怖いし。


「はあ。なんでこんなにトロイのと一緒に捜索しないといけないんだ」

「な?!」


 失礼な!と、言うことができなかった。だって怖かったんだもん。仕方ないよね。


 っていうか、神さま恨むからな。なんで、俺と神楽を一緒にしたんだ。


 ♦︎


「じゃあ、今からペアを決めま〜す!」


 唐突に天音さんは口を開いていた。


「ペア?」

「集まって探すのは効率が悪いし、かといって一人で探すのも危ないでしょ?だからペアを作るの」


 と、説明が終わったころで動き出した影が二つ。その影は一寸の狂いなく最短距離で俺に近づいてきた。


「じゃあ、私は兄さんとがいいです。というか、それ以外に選択肢はないと思うのですが」

「いや、たくちゃんは私と組むべきだと思うよ。だって幼馴染だし、一緒に暮らした時間がこの中で一番長いから、こういう共同作動もうまくやりやすいと思うの」

「いえ、兄さんは私と。この中で一番兄さんのことを理解しているのは私ですから」


 と、お互い取り留めのない持論を披露している。ここにいるのは5人。つまりは2と3に分けるのだろう。


「待って!ペアはもう考えてるの」


 そう切り出したのはこの部活の部長でもある天音さん。


「私と香澄ちゃんと、恵ちゃん。もう一つが拓人くんと、スーちゃん」


 なるほど。なるほど?なるほど?!


 いや、待て。


「どういうことですか!」


 そう騒ぎ立てるのはやはり香澄。おそらく理由は……。


「私と兄さんが別々というのはどういうことですか」


 やはり、か。香澄はひと時も俺から離れたくないのだ。だから、こういうことには敏感なのだ。


「まず、私とスーちゃんは経験者だから別れるでしょ。そして、さっきスーちゃんと拓人くんが仲よさそうだったから、組ませてみたんだけど」

「なら、天音さんと恵さんで組んで下さい。私はあっちへ行きます!」


 香澄は有無を言わさぬ態度で、香澄は俺の方へと向かってきた。向こう側には涙目の天音さんが見える。


 それを見てか、神楽が香澄の前に立ち。


「いいから、天音の言ったペアで組め」

「嫌です。私と兄さんが離れるなんて、そんなことあっていいわけがありません」


 お互いに意見を譲らない。そして、それは激化して行く。


「いいから、天音の言う通りにしろ」

「誰の権限があって、私と兄さんの仲を引き裂けるのですか?」

「もう、喧嘩しないで!喧嘩したっていいことはなにもないよ」


 間に入り込むように、天音さんは開口していた。


「元はと言えばあなたが私と兄さんを違うペアにしなければ―――――――」

「でも、それは」

「なんでもいいです。私は兄さんといきます」


 と香澄は強引に推し進めようとするのだが。


「あんまり聞き分けない子は私あんまり好きじゃないなぁ〜」


 ぎくっ、一瞬で背筋が凍てつくような雰囲気にそこは変わる。まるで氷点下の世界だ。


 それっても『あんまり好きじゃない』とかいう次元じゃないよ。怒っているわけではなさそうだけど。


「ですが―――」

「香澄ちゃん」

「…………わかりました」


 あの香澄が押し負けするくらい天音さんのそれが強いのだ。


 やばい、この天然。香澄に対する抑止力になる可能性がある。


 まぁ、それは置いといて。


「なんで俺がこいつとなんだ!」

「それはこっちのセリフだ変態!」


 さきほどまで黙っていた神楽が、俺と同じ瞬間に動き出した。


「あらあら、仲が良いわね」


 と天音さんの声とともに、香澄と恵のなにか暗いものを含んだ視線が当てられる。ああ、怖い。


 そして、俺と神楽は同時に。


「「どこが!」」


 と、叫んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ