部活会議。え?まだ入部してないんですけど
「それでは会議を始める」
神妙な面持ちでそう言ったのはすーちゃん。
しかし、おかしい。俺はまだ正規部員ではないはずなのだが。
「すいません………俺まだ入るとは」
「会議中は静かに!」
すーちゃん、なんかさっきとキャラが違うんだけど。
俺たちは今なぜか、円卓を囲んで会議をしていた。もちろん俺の両側には香澄と恵が待機している。そして、先程俺に注意をしてきたスーちゃんは真ん前に座っている。
そして、真ん中には部長の天音さん。
「天音、よろしく頼む」
「じゃあ、行くよ」
と、ゆったりとした声が響く。そして、何秒か間を空けて。
「なにを話すんだっけ?拓人くん」
「知らないよ」
思わず俺は吹き出していた。まずここが何部かも知らないのに、そんなの俺に聞くなよ。
「天音、今日の仕事はなんだ?」
「あ、そうそう」
スーちゃんの助言によりなにをするかを見出した天音さん。そのまま取り出したのはスマートフォン。一件の画像を開いて俺たちに見せてきた。
「今日はこれだよ」
そこにあったのは可愛らしい猫の画像。一本の指に縋り付いてる感じがまた良い。
「かわいい」
ふと漏らしていたのは恵だった。香澄も無関心というわけではなく覗いていた。もちろん、俺だってとてもかわいいものだと思った。
スーちゃんは………。
「……」
めっちゃガン見してる。愛でたいと思ってるような目だった。
「これがどうしたんですか?」
「これはね、ある人が飼っている猫なんだけど。行方不明になっちゃってね」
つまりは猫の迷子か。で、それがどうしたんだ。
「行くよ」
そう言いながら天音さんは立った。
「え、どこにですか?」
「分かってなかったのか?さすが変態は理解力がないな」
「な?!」
「兄さんを侮辱しましたね」
「そうだな。なんだ?やるか?」
「あなたはそれを望んでいるらしいですから、望みを叶えてあげましょう」
スーちゃんvs香澄勃発。
しかし、その裏に現れた存在がいた。この部屋の絶対的支配者。
天然である。
「スーちゃん?香澄ちゃん?…………なにしてるの?」
「いえ、なんでも」
「なんでもないよ」
先ほどまで闘志剥き出しだった二人が今では静かになっている。
「じゃあ、行こう!」
そうして、天音さんはそのまま扉を開いた。
この人やっぱり天然だな。怖すぎ。
「だから、どこにですか?」
「分かれよ。だいたい文脈で分かるだろ」
さっきから、辛口だなこの人。
「猫探しに行くんだよ」
「なんで?」
「なんでって………まさか?!」
「まさか………?」
スーちゃんはなにかを察したように天音さんの方に向かって歩いた。
「おい、天音。まさか、この部活について話してないのか?」
「あれ?そうだっけ」
「はぁ」
ため息を吐いたのはスーちゃん。
「悪い。そりゃ理解できないわ」
「どういうことなんですか?」
「あ、ここはな………奉仕部、というかボランティアとか何でも屋さんだな」
「なるほど」
だから、猫探しか。これから暇だし、別にいいか。よし、付いて行こう。早速報告しよう。スーちゃんに教えてもらったし、スーちゃんに報告しよう。
「スーちゃん、ついて行きます」
あ、間違えた。
「す、すす、スーちゃん?な、おま、お前がなんでそのあだ名で呼んでいるんだ!」
「ごめんなさい!」
慌てて謝罪の意を表するが、そんなこと聞いてくれなさそうなくらいな、スーちゃんは頬を赤く染めてこちらを睨んでいた。
「私の名前は神楽 雛だ!」
その恥ずかしさに満ちた声は、部屋の中で反響した。




