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なあ、両手に花って喜ばしいことか?

少ないです

「んうっ」


 なんか、苦しい。昨日もなんかはちゃめちゃだったからな。体に疲労が溜まっているのだろう。


 と、体を起こそうとするのだが。


「う?」


 手足が動かない。なにか動きを止められているような気さえする。


 ふと、細目に周りを見渡す。


 そこには、肌色の女の子が二人いた。俺の片腕に一人ずつ。ぎゅっと抱きしめて離さずにいる。


 そして、柔らかな女の子の胸が俺の腕を挟んでいた。


「え?!」


 動きたい。逃げ出したい。けど、こんな状況で動けない。


 だれか、助けて。内心嘆きながら手足を動かした。そんなところで。


 香澄と目があった。


 だが、一瞬でまた寝たふりを再開した。


「おい」


 返答の代わりに腕を抱きしめる力が強くなる。そして、そのたわわな胸が俺を包んで………。


 やめろ!そんなことを考えるな!俺。


「香澄。どいてくれ」

「兄さん、今私は寝ているんです」

「どけ」


 一切譲らない俺に香澄はため息混じりに諦めの宣言をする。


「わかりました。そのかわりに――――」

「なにもやらん。そして恵もどいてくれ」

「な?!なんであなたがいるんですか!」


 香澄が今気づいたかのように恵の方を指差した。指された恵はパッチリとした目で香澄を見据えていた。


「香澄ちゃんだってなんでここにいるの?」

「それは私は兄さんの妹ですから、運命の相手ですから」

「それは香澄ちゃんの勝手な解釈だよね。それに普通の兄弟は一緒に寝たりしないよ」

「私と兄さんの関係をバカにしますか。そうですか。あなた覚悟はできてますよね」

「香澄ちゃんこそ妹なのにそろそろ兄離れしないといけないんじゃない?」


 そして、朝からこれである。今から始まる学校生活はどうなるんだ?


 そんな不安など知らずに二人は火花を散らしていた。



「兄さんいい天気ですね。空が澄んでいます。まあ、横にそんなやつがいなければもっと気持ちが良かったかもしれませんが」


 ちなみに、これは登校中の会話である。悪いがそうは聞こえない。


「香澄ちゃん、たくちゃんに寄りすぎだと思うな。ほら、たくちゃん困ってるじゃない?」

「兄さんが私のことを拒むわけないでしょう?ふざけないでください」


 そんなことを言う香澄は俺と自分の腕を絡ませて組んで歩いていた。そして、その反対方向には恵がいて。これまた、けっこう近い距離で歩いている。


「ふざけてなんかないよ。でも、朝からこの格好はどうかと思って…………」


 恵、正論すぎる。もっと言ってくれ。まあ、いうことを聞くとは思わないが、とりあえず言ってくれ。


 しかし、恵はなにか吹っ切れたような顔をして。


「ああ、香澄ちゃんずるい!近すぎ。私だって!」


 そう言って恵は俺に抱きついてくる。そして、香水の匂いが俺の鼻腔を充満する。


 突如現れた柔らかい球体が俺の体で弾む。ああ、気持ちいわ。


「恵さん!なにしてるんですか!兄さんは私のものです!」

「そんなことないよ。たくちゃんはみんなのだから」

「勝手に人を誰かのもの扱いするなぁぁぁぁああああああ!」


 現在、神辺拓人は両手に花です。


 ですが、それは本当に喜ばしいことなのでしょうか?

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