表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/53

戦闘用妹?

「え?」


 こいつは、俺と香澄が出かけた時に絡んできた輩のボス。そんなやつがどうしてこんなとこに。


 道場破りか?


「おう!来たか!」

「え?!」


 建造さんの元気そうな言葉が飛べば、門下生たちは笑顔で挨拶を返している。そう、門下生たちは。


 そして、俺の頭の中にある説が浮上する。それは見事事実を射抜くことになるのだが。


「まさか………!」

「うん。この人たちはここの生徒さんだよ」


 えー。意外だな。


 こんなところに通ってるなんて知らなかったよ。たしかに強そうだったもんね。ここに通ったら強くなるもんね。ああ、なるほど。だから、ボスはあんなにも優しかったんだ。


 えー!意外すぎんだろ!


 ヤンキーとか不良とかがここに来るとか知らねーわ。聞いたこともねーわ。


 そんな俺の頭の中のタイフーンなど知る由もないその男は。


「牛原圭介です。よろしくお願いします」


 と、自己紹介をしていた。


「こ、こちらこそ」


 そのあまりの迫力に思わず返事を返してしまった。



「はぁ!」


 そんな気合の入った声が道場では聞こえていた。腕が宙を舞う音、足が勢いよく地に付く音。無論、俺もその音源の中の一人だ。


「せいやっ!」


 ああ、懐かしいな。昔はこんな活発に声を出してたんだった。大声を出す機会もなくなったからな。やっぱり久ぶりに感じる。


 だが、やはり。この前の件があったせいかもしれないが。


 牛原圭介。お前には違和感しか感じねー!


 横目には香澄の笑顔が映る。壁際によって俺の方をじっくりと眺めていた。その瞳は獲物を喰らう大蛇のようだった。


「じゃあ。ウォーミングアップは済んだろう?今から試合を始める」


 建造さんがそんなことを言うと、各々は自分の相手を探しにか、動き始めた。


「た、たくちゃん。私と―――――」

「恵さん。お願いします」


 俺になにかを言おうとした恵だったが、その恵に試合のお誘いが殺到。そのまま、試合する流れとなってしまっていた。


 無論、恵が負けるわけがないのだが。


「たくちゃん。やろ?」


 恵の突然の上目遣いによって俺は目眩を起こしてしまう。だって、可愛すぎるんだもん。


「あ、ああ」


 後ろから黒い眼差しが俺を指している気がするけど、気のせいだろう。そうだろう?香澄。


 道場中央に設置された場所でそれは始まる。


 最初は俺の突貫だった。小学生の頃も、とにかく前に突っ走って先手必勝するのが、俺の作戦だった。


 作戦というには杜撰すぎるが。


 もちろん、恵はそんなもの軽々と避ける。横から迫った恵の拳を腕で逸らすように防ぎ、間合いを取った。


 一度、呼吸を整えてから、お互いじわじわと接近して行く。足を地面に擦るようにして、間合いを詰めていく。


 そして、動いたのは恵。


 一瞬で俺までの距離を詰め、その腹に拳を入れ込もうとしていた。それを俺は寸前で回避する。ほぼ、条件反射だ。まぐれだ。


 そして、恵の横を取るように俺は迫るのだが、その瞬間恵も俺の方向を向く。


 よって、二人の顔の距離は異様に短く、すぐそこに見れる範囲だった。


「あっ!」

「ひゃっ!」


 そして、俺の胸板に柔らかくかつ反発的なものが押し込まれる。ピンク色の唇から溢れる甘やかな吐息と共に。汗ばんだ胴着の胸あたりは少し開けていて、中がうかがえるようだった。


「………たくちゃん、見ないで。恥ずかしい」

「ああ!ごめん。すぐにどくから、今すぐどくから」

「いや……見ても、いいんだよ?」


 なに、言ってんの?そんな恵の顔はやはり真っ赤に染まっていて。だが、逆にその表情が俺の何かを刺激するようで。


 そんな、思考に脳が侵されそうになったとき。ある凛とした声がその場に広がった。


「兄さん?」

「ひっ!」


 暗く、虚ろな瞳が俺を捉えている。もちろんそれの持ち主はヤンデレである香澄だ。


 もう、生きてるのかも怪しいレベルの瞳なんですけど。


「怖がらないでください。悪いのは全部あの女ですから」


 そう言い終えると、香澄は恵の元へと詰め寄った。そして、渾身の右ストレート。それを察知していたのか、恵は戦闘態勢に入っていた。振るわれる右拳を逸らすように避ける。


「死ねっ!」


 そして、間髪入れずの第二撃。空いた左手からその拳は振るわれる。恵はこれを後方への跳躍で回避する。


「ちっ!ちょこまかと!」


 香澄は絶えずその攻撃を続けている。乱打乱打乱打乱打。狂ったようにその攻撃は続いた。それを恵は軽々と逸らし、受け止め、避け続けていた。


 明らかに香澄の優勢に思えた。


 が、香澄は次の瞬間恵から間合いを取るように後ずさっていた。


 そして、香澄がさっきまでいた場所に向かって、恵の拳は振るわれていた。ボワっと風の音が辺り一面に広がった。それほど、その攻撃威力が高かったことがうかがえる。


「姉さんと、互角?」


 牛原の方からそんな声が聞こえた。


「一体、彼女は何者なんだ?」

「妹、のはずだけど」


 妹がこんな武闘派タイプとか聞いてませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ