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昼の道場にて

「あれ?恵どこか行くのか?」

「あ、えーと。道場の方に、ね」


 なるほど、昼のお稽古っていうやつか。毎日の鍛錬が欠かせなあってことだな。


「たくちゃんはこれからどうするの?」


 そういえば、やること何もないな。香澄は相変わらず横にいるけど。


「何もない、な」


 そんなことを俺が口にした瞬間。恵の表情は明るさを増していた。


「なら、一緒にお稽古しよっ!体動かしたほうが絶対良いよ!」

「あ、ああ。そうだな」


 恵の強烈な勧誘に俺は若干気圧されながら、答えていた。


「あれ?兄さん。どこ行こうとしてるんですか?」


 わおぅ。お前いたんだった。気づけば香澄は俺の右腕を抱きかかえていて、上目遣いでこちらを眺めていた。


「それはだな」

「たくちゃんは私と一緒に空手のお稽古に行くの。だから、ね」


 そのまま恵は俺を引いて行こうとする。が、ヤンデレである香澄がそんなことを許すわけがない。


「待ってください。なぜ、兄さんがそんなところに行かないといけないんですか?」


 片方の腕を握って離さない香澄はそんなことを言っている。


「運動した方が健康的でいい、と思うよ」

「恵さんの価値観を押し付けないでください。私はどんな兄さんでも受け入れる覚悟があります」


 そんな覚悟いらないよ!


 ふと見ると、恵がとてもピンクに染めた頬とともに、モジモジしているのが見えた。


「でも、健康じゃないと………その、生まれる赤ちゃんが…………」

「ああ!そうですね!恵さんのくせになかなか鋭いところをつきます」


 香澄は「さあ、行きましょう」と言って、俺を連れて行った。



「来たか恵………….と少年?」

「よ、よろしくお願いします。建造さん」


 俺がきた事に少し疑念抱いた建造さんだったが、そんなこと関係あるか、とでも言うように稽古を始めようとしていた。


 やっぱりすごいな。適応力が。


「そういえば、ここって何人くらい来ているんですか?」


 そんな俺の質問を聞いた建造さんはなにか躊躇うでもなくそれを教えてくれた。


「そうだな。20人くらいかな」

「へぇー」


 まあ、そんなものだろう。近所の子供達を集めて数えたらそれくらいなのだろうか。


 俺が通ってたころも、それくらいだった記憶がある。


「あ、もうそろそろだな」


 来る生徒に若干の緊張を抱きつつ、俺は門の方に目を向けていた。


「ああ、道着姿の兄さんも素敵です〜♡」


 と、くっ付いて来ようとする香澄をなんとか避けながら、俺はそれを待っていた。


「たくちゃん。これ久しぶりだね。なん年ぶりかな?そういえばたくちゃんあの時………」


 と、昔話に耽っている恵に相槌を打ちつつ俺はそれを待っていた。


「兄さん!」

「たくちゃん!」


 お前ら黙れよ!


「こんにちは!」


 と元気良い声がその門から聞こえてきた。何人かの足音。十人はいるだろう。


「よう、お前ら!」


 建造さんも元気良く挨拶を返している。


「あれ、新入りですか?」


 俺の存在に気づいたのだろう。その中の、ボス格の大男が建造さんに質問していた。


 あれれ?何かデジャブを感じたぞ?


「いや、違う。恵の友達の神辺拓人くんだ」


 久しぶりに建造さんに少年以外の呼び名で呼ばれた気がする。


「へぇ〜。姉さん(あねさん)の」


 は?姉さん?


 どういうこと、どういう関係。弟…………なわけないしな。


「どれどれ」


 と、その男は俺の方にしっかりと顔を合わせてくる。そしてお互いの顔がしっかりと見えたところで。


「ああ!」

「ああ!」


 お互いがお互いを指差し、驚愕の表情に満ちていた。


 俺は覚えている。昨日、駅前に香澄と行った時に、この男が俺たちに謝ったことを。


 な、なんで。ここにいるんだ?


「なんで、あんたはここにいるんだ?」


 考えたことは同じらしかった。


 恵もこれは驚きの様子で目を丸くしてる。


 香澄は………。

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