土曜日の朝
今回ちょっと少なめです
いつも通りの朝だ。
そう、香澄が起きた時目の前にいても、もういつも通りの朝だ。俺が起きたときに目の前で香澄がニコニコして俺の方見てたけどいつも通りの朝だ。
「おはようございます!兄さん」
「おはよう。どいてくれるか?」
なんかもうこれが普通になっちゃった。
「あ、起きたか少年」
「おはようございます建造さん」
やっぱりこの人は健康的だな。
借りている部屋からリビングへ向かうと、そこには朝の運動をしていたのか、少し汗をかいた建造さんの姿があった。
「飯はもうすぐできるらしいから、リビングで待っとけ」
「はい」
そのまま建造さんはシャワーを浴びに歩いていった。
リビングに入り、適当にニュースを見ているときに、恵は現れた。
「お、おはよう。たくちゃん」
「ああ………」
昨日の一件もあり、二人ともぎごちない雰囲気を作っている。
「い、良い天気だね」
「ああ、そうだな」
その日の天気は雨。どこがいい天気なのだろうか。
「あ……朝、早いんだね」
「うん?そうか?」
朝の8時ってそんなに早いか?恵にとっては早いのかもしれないな。
「ご飯できたわよ」
俺はその言葉に感謝して、テーブルが置かれている場所へと向かった。
♦︎
「すまなかった!」
大路地にそんな声が響く。俺と香澄は唖然としてその光景を眺めていた。ボスと思われていたその男が頭を下げていたのだ。
「え?………え?!」
ど、どういうことだ。
「あ、ああ。なんで謝ってるかって?」
うんうん、と俺と香澄は激しく首を上下していた。
めっちゃ気になるもん。てっきり、報復にまた喧嘩を始めるんだとばかり思い込んでいたから。
「これはな、うちにはどんな理由があろうと、女に手をあげるのはダメっていう掟があるからなんだよ」
へぇー。なんか不良っぽいのにそういうところはちゃんとしてるのか。
「悪いな、デートの邪魔しちまって」
「へ?」
今なんて言った?
「本当失礼しちゃいます。さあ、行きましょう」
「待って!違うからね!デートじゃないからね!こいつは俺の妹だからな!」
そんな声など届かぬまま俺は香澄に引っ張られるようにその寄り道の続きを始めた。
♦︎
「うう、しんどい」
「大丈夫ですか……兄さん?」
「あ、ああ」
お前のせいだろうが!でも、こんなこと言えないんだよな。良くも悪くもへんな方向に絶対行くから。
「そういえば昨日は二人とも帰りが遅かったな。何してたんだ?」
「兄さんとデートです!」
間髪入れずに香澄が答える。そのせいで、恵の雰囲気が変わってしまう。
泣きそうな、弱々しいオーラを放つようになっていた。
それに対し………。
「おう、少年とデートか。それは良かったな」
「はい!」
その時香澄は小声で「このジジイ話わかりますね」と呟いていた。ああ、聞かれれば良かったのに。
「へ、へぇ〜。デートか。いいなぁ」
「恵さんも好きな人とすれば楽しいですよ」
バキッと恵の箸が折れる。そして、先ほどまでとは雲泥の差である覇気を纏って、香澄の方を睨んでいた。
「あっ!箸折っちゃった」
「恵は………何回折るの」
何回も折ってんの?たしかにこいつ強いけどさ、そんなレベルなの?!
「そうだね。私も好きな人とデートしてみたいなぁ」
「すればいいじゃないですか。恵さん可愛いしすぐ男なんて出来ますよ」
「はっ!恵に男なんて作らせませんけど!」
急に横からこの会話に入ってきたのはもちろん恵大好き香織さんだ。
だが………
「そうかなぁ。でもね、私の好きな人の隣にべったりついて離れない子がいるんだよね」
あ、香澄のことか。なんか今すっごく火花がバチバチしている気がする。
「そんなの引き剥がしてしまえばいいじゃないですか」
思わぬ香澄の案に恵は目を丸くする。俺はそれを遠目に眺めている。恵(親)も子達の話し合いを暖かく眺めている。
「え?!そんなのありなの?」
「ありも何も、好きな人が違う女の人といたら引き剥がすに決まってるじゃないですか。邪魔ですし」
「へぇ〜。すごいね」
「女として当たり前です!」
当たり前ではありません。
と恵が唖然としていると。シスコンが動いた。
「嘘でしょ!恵!お姉ちゃん大好きって言ってたころの恵はどこにいったの?!なんで男なんて好きになっちゃうのよおぉぉぉおおおおお!」
だから、あんたは黙っとけ。




