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朝の非常事態

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[香織→恵梨]

 眠れない。今日は脳に深く刻まれるようなことがあったから。


『恵との混浴』

『恵の俺に対しての告白』

『恵の、キス』


 それらが俺の脳内で乱舞していて、なかなか寝むることができないのだ。


 告白なんて、されたことあったっけ。

 もし、されてたら俺はなんて答えるんだろ。

 そんな解答のない問いかけを延々と続けている。

 無意味な時間を使って。


 ただ、答えが出ることはなかった。


 そういえば、香澄の様子もおかしくなかったか。いつも以上に俺にベッタリだった気がする。


 なにか、おかしい。


「だが、もう今日は寝る……」


 そのまま意識が宙に舞うまでそれほど時間はかからなかった。


 ♦︎

 ♦︎

 ♦︎

 ♦︎

 ♦︎

 ♦︎

 ♦︎


 私はたくちゃんが好き。大好き。


 その思いはずっと変わらないままで。でも、打ち明けることができなくて。日に日に想いは強まって行って。ずっと苦しかった。


 けど、たくちゃんにはそういう気持ちがない。だから、私はずっと隠し通すことができると思ってた。


 私が決心する、その時まで。


 最近だった。


 それが変わってしまったのは。香澄ちゃんが出てきてからだ。


 たくちゃんは気づいてるかもしれない。いや、多分気づいてる。香澄ちゃんがたくちゃんのことを好きなことを。


 しかもあんなに自分の気持ちを表に出せるなんて。


 私は焦った。そして、同時に後悔した。


 もっと早く、伝えておけば。と。


 何もしなかったこの長い年月。そのせいで私はアプローチの仕方が全然わからなくて、戸惑って。


 そして、焦りに焦った私は今日、言ってしまった。


 伝えてしまった。そして、早とちりした私は彼にキスをしてしまった。


 もしかして、嫌われてないだろうか。もしかして、避けられないだろうか。


 そんな不安を今も、明日もするだろう。


 でも、私は。今のままじゃいけないって分かってるから。


 だから………。


 ♦︎


「うぅっ……」


 朝日がブラインドの隙間を縫ってその部屋に差し込む。


 あ、もう朝か。そろそろ起きるか。


 そうして、動こうとするのだが………。


「ん?」


 手が絡まったかのように後ろから動かせない。それを理解するのに時間はかからなかった。手首の感覚からそこには縄が縛られることを悟ると、俺は犯人に目星がついていた。


「香澄、か」

「さすがです♡兄さん!」


 ハートマークがつきそうなほど可愛らしい声で応答したのはやはり香澄だった。横たわって寝ている俺の視界では香澄を見ることができない。よって、俺は転がるように声の方に移動した。


「きゃあ♡」


 しかしそこにあったのは香澄の顔ではなく、その中だった。


 要するに、スカートの中だった。香澄はもう制服を着てたのか早いな。


 それと、ごめんなさい。


「そんなに、見たいんですか。恥ずかしいですけど、兄さんなら………いいですよ」


 桃色に染めた頬は言うまでもない。恥ずかしいはずの香澄の手は、もう最初の時点でスカートを捲り上げ、それを全開にしていた。


「ですが……」


 声音が暗くなると同時、スカートも下がる。


「兄さん……」

「な、なんだ?香澄」


 さっきまでとは雰囲気が違う香澄に若干の不穏さを感じながらも、俺は返答していた。


「昨日、何してましたか?」

「昨日は、ふつうに寝ただけだぞ」


 俺がそう返すと、香澄は。


「言い方を変えます。兄さん…….昨日、()()()となんの話をしていたんですか?」

「え?」


 答えが出てこなかった。いや、昨日のことは鮮明に覚えているのだが、言うのが阻まれた。あれは恵と俺との話だったわけで、部外者である香澄には言っちゃいけないと思ったのだ。


 まあ、内容も内容だからね。


「まあ、昔の話をちょろっと」

「いえ、違います。もっと前の話です。具体的には兄さんがお風呂に入ってるあたりの話です」


 な?!


 嘘だろ?バレてたのか。


「心拍数が上がりましたね。兄さん、何を隠してるんですか?」

「し、心拍数とかわかるもんじゃ―――――」

「私には分かるんです。なにせ、私は兄さんの理解者であり、兄さんの運命の相手でもあるのですから」

「嘘だろ……?!」

「というのは冗談で、昨日から兄さんとあいつの様子がおかしかったのでもしかしてと思いましたが」

「まさか?!」


 はめられた!


 くそっ!どうにかして誤魔化さないと。流石にあんなこと言えない。


「さあ、兄さん洗いざらい全て話してください。そうすればわたし達は晴れて本物になれます」

「だから、何もなかったって言ってるだろ」


 誤魔化すしか、ない。そうすれば、香澄は少し残念な顔してから、俺のズボンに手をかける。


「ちょっと待って香澄さん。ナニシヨウトシテルノ?」

「残念です兄さん。こんなことをしないといけないだなんて」


 ちょっと待って、何をするつもりなの。やめてっ!やめてっ!


 俺はまだ動く足を乱れさせてなんとかそれを防ぐ。


「兄さん邪魔しないでください。これは兄さんのためでもあるんですよ!」

「やめてっ!俺に何をしようとしてるんだ!」

「これ以上拒むようでしたら、兄さん……いくら私でも怒りますよ」


 その目つきが鋭くなった。それには嘘じゃない、本気だ、というメッセージが込められているようにも思えた。


 さて、香澄にとって怒るとはどのようなことを指すのだろうか。そう考えたとき、俺は……。


「やめろぉぉぉぉおおおお!絶対怖いことするだろ!」

「ですから兄さん、早く抵抗をやめてください」


 そうして、俺たちの攻防は続いていく。


「だ、だれか!助けて!」


 ついに、俺は助けを呼ぶことに成功したのだ。そんな中でも香澄は俺のそれを脱がそうとしている。


「たくちゃん大丈夫?!入るね」


 戸を開けたその時、俺のそれも同時に飛んで行った。下着ごとごっそりと。


 そうして、現れたのは…………。


「きゃあぁぁぁあああああああ!」

「恵!大丈夫か!」


 すぐさま駆けつけたのは恵梨さん。そして、その香さんは俺に凄い形相を見せて。


「くっそぉぉおおお!この腐れ童貞が!死ねっ!」

「誤解だって!」

「兄さん、可愛いですね」


 おい、待て。


「いいから、だれか助けてぇぇええええ!」


 結局恵がなんとか正気を取り戻し、俺を助けることに成功した。

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