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襲撃者

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皆さんありがとうございます。

 朝、起きたらやはり例の影が。


「兄さん……はやく…」


 そう言いながら、香澄は全てをさらけ出した。服も下着も、おおよそ衣類と呼ばれるものが全て取っ払われ、裸体を晒していた。


 口から銀に光る筋が垂れ落ち、俺の身に降りかかる。それが俺の頬にかかれば、香澄はニヤリと笑った。


 そして、俺の体は不思議なことに動けない。香澄が両の手を使って俺をベットに押さえつけてるからだ。


「兄さん兄さん兄さん兄さん」


 そのまま体は俺に密着し、柔らかい二つのそれは形を崩し、その肌の温度が互いを温めあっていた。


 動けない。動けない。動けない。


 怖い怖い怖い。


「に・い・さ・ん♪」


 その顔は俺に迫って行き、距離を縮める。


 そして…………。



「うわあぁぁぁぁああああああ!」


 ふと、俺は現実に帰還した。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 今のは、夢………。あれは全部夢だったのか?まぁ、よかった。さすがにあんなものが現実だとは思いたくない。まさか、いるかも知れないという思いが強すぎてあんな夢を見てしまうとは。


 俺は伝っていた汗を拭う。夢の中でも安息の地がないなんて、神はなんでこんなにも俺に残酷なんだ。


「まあ、いい。早く行こ」


 そうして、ベットに手をつけた瞬間。


「ひゃん?!」


 と可愛らしい声。うん、この感覚は覚えがあるな。この慎ましやかなか感じで、控えめな大きさな、柔らかいものだ。


 神さま、こんちくしょう。


「なんで、お前がいるんだあぁぁああああ!」


 鍵かけたのに。防犯対策バッチリだったはずなのに。


 そんか叫びなどさして気にした様子もなく、香澄はただ淡々と俺にこういう。


「あ、兄さん。おはようございます」

「………おはよう」


 もう別にいいよ。



 そこからは案外あっさりしたまま進んでいった。


 そう、朝ごはんをあ〜んで食べさせられたり、着替えを手伝われそうになったり、パジャマを盗まれそうになったり、したことはあったが。


「あれっ、そういえば今日はあの泥棒ね………恵さんはいないんですね」


 おい、今恵のこと泥棒猫って言いそうになっただろう。お前って本当に腹黒い(ヤンデレ)だな。


「今日は朝練なんだよ」

「へぇ、部活入ってたんですか、あの人」


 恵さんからあの人にグレードダウンしました。


「あっ、そうそう。香澄今日家に帰ってから、荷物の支度しろよ。泊まりに行くからな」

「えっ……………はいっ♡」


 一瞬の不穏な間が気になったが、ちょっと動揺しただけだろう。そうだろう。そうであってくれ。


「じゃあ兄さん、また後で」


 周囲の様子は相変わらずだ。香澄が転校したばっかの時は周りに人が集まっていたのだが、香澄のそれを知ったがために大体の人は下がってしまっていたのだ。


「相変わらず、妹ちゃん可愛いじゃねえか」

「あ?隼人。本気で言ってるのか?」

「世の中の妹は兄を嫌うもんだぞ」


 そして、隼人はこう続ける。


「まあ俺には妹がいないんだけどな」

「知ってるよ」


 とだけ返しておいた。



 そして放課後。今日の昼休みも騒がしかったなのいう感想を頭に思い浮かべつつ、俺は香澄とともに下校していた。


「っていうか、香澄はなんでそこまで恵に突っかかるんだ?」

「別に兄さんは知らなくていいですよ」

「ソウデスカ」


 恵と香澄が仲良くなればな、と俺はこの問いを投げかけたのだが、やっぱやめておこう。


「兄さんはあの人のことどう思ってるんですか?」

「そりゃ、好きだよ」


 ひっ!香澄がありえんぐらいの負のオーラを解き放っているのだが。


「兄さん、どういうこと、ですか?」

「どういうことも何も、恵は好きだし……もちろんお前のことも好きだし」

「なんで私とあの女が同列なんですか?兄さんにとって私はなんなんですか?私にとって兄さんは全てです。だから兄さんも私のことだけ考えていてください」


 香澄が呪詛のようにそんな言葉を言う。


 だが、俺はそんなことはできない。


「香澄……少しは落ち着け!」


 とチョップ。そのまま手刀は香澄の頭部に激突。


「な、何するんですか?!」


 香澄はあまり見せないような顔を俺に見せてきた。それは、怒っている顔だった。普段は俺によく見られようと笑ってしかくれなかったが、今は確かに怒っていた。


 俺はそれに。


「うん、可愛い」

「えっ?」

「だから可愛いんだって」


 わかりやすいまでに顔の色が変わっていく香澄。


「兄さん、そんなことでさっきまでの話を誤魔化せるとでも」


 とは言ってくるものの、その顔は赤面していて、顔を俯かせ恥じらっているようだった。



 身支度を整え、さあ出発だ。と玄関を出かけた時。


「兄さん、パスポートはいらないんですか?」

「香澄は一体どこへ向かおうとしてるの?」

「それはもちろん、兄さんと私、二人の楽園ですけど………どこがいいです?ハワイですか?メキシコですか?フランスですか?イギリスですか?」

「どこでもない。行くぞ」


 香澄を無理矢理外へ引っ張り出した俺は、何着かな着替えと、数個の生活用品を持ってそこへと向かった。



「兄さん、徒歩で行ける宿泊施設がここにはあったんですか」

「そんなのあるわけないだろう」

「じゃあ、ここはどこですか」


 目の前にあったのは今になっては珍しい体の何倍もの大きさを持つ門だった。


「兄さんはヤクザの一員………これは、行けますよ!」


 何がいけるの?


「早く、開けてくれんかな?」


 としばらく待っていると。


「曲者!」


 後方からそんな声が鳴り響いた。俺はそちらを一瞥するとそこにこちらへ向かってくる影が一つあることに気がついた。


「死ね!」

「………させません」


 香澄は俺の前に立ち、そう言うと、拳を突き出してきたその影の腕を横から掴み、その動きを止めた。


「あなた……今兄さんに手を出しかけましたよね?それは有罪です、重罪です。どうなるか………」


 そして香澄はその影の顔を覗き込み、その視線を捉えるように目を合わせ、こう言った。


「わかってますよね?」


 俺の身を守ってくれた香澄だが、俺はその手を離すように指示をする。


「香澄やめろ」

「ですが……」

「その人は大丈夫だから」

「兄さんがそう言うなら……」


 香澄はその手を解く瞬間、その影の方にギロッと殺意を込めた視線を送っていた。


 怖いな。

案外押しに弱い香澄ちゃんだった

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