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開花前の日常⑨

ラストです!


ここまで読んでくれて本当にありがとうございます。

あっ、物語はまだまだ続きます。

 それは本当に唐突だった。


「たくちゃん、週末どっか遊びに行こうよ」


 今は下校中だ。


 今日は昼に香澄はこなかったが、逆にクラスの面々に香澄との関係を聞かれて正直鬱陶しかった。


「まあ、暇だけど…….」


 無論それに続く言葉は『自堕落に過ごしたいし』『ゲームしたいし』だ。だが、女の子の前でこんなことは言えない。


 くそっ!俺ってばつくづく不幸だ。


「じゃ、じゃあ、ショッピーグモール行こう。あの駅前の」

「ああ、あそこか」


 俺たちの最寄駅『神崎駅』の近くには非常に大きいショッピングモールがあるのだ。


 その名は『神崎ショッピングセンター』。


 正直ダサいと思う。これ考えた奴は筋金入りのバカだなと初見思った。


「いいよ、行こう」


 あそこなら、漫画とか売ってるし。


「や、やった」

「おう、よかったな」

「!」


 なぜか赤く染まる恵。今回ばかりはなぜかは分からなかったが。


「じゃあ後で細かいこと連絡送るね」

「わかった」


 そう言って俺たちは分かれて行った。



 その夜。ベッドで適当に寝転がってるとスマホのバイブ音がした。どうやら、恵から週末の詳しい情報が来たらしい。


『朝9時、赤坂公園』


 まあこれだけ覚えとけば大丈夫だろう。そのまま俺は微睡みに誘われ、スヤスヤと寝息を立て落ちていった。



 そして、あっという間に週末が訪れる。服装はいつもより少しカジュアルにしていく。なぜなら女の子と一緒に歩くからだ。


「じゃあ、行ってくる」

「兄さんどこ行くんですか?」

「買い物だけど」


 そう言うと香澄は不機嫌な顔になり、ついには。


「私も行きます」


 とか言い出した。いや、別にいいけどさ。



「時間ギリギリ」

「アウトだね」


 恵が俺に合わせるようにそんなこと言ってきた。そんなの四捨五入すればセーフだろ。


 だが、そんな会話もすぐ終わり、恵の視線は俺の後方へと向いていた。


「たくちゃん………なんで香澄ちゃんがいるの?」


 ヒューと風は吹き抜ける。


 言われた香澄は戸惑っていた。


「いや、女の子の意見が必要かな、て」


 その言葉に恵は不服そうに。


「たくちゃんなにも分かってない」


 と、短く告げるのだった。



 なんだかんだで、ショッピングモールだ。縦長な建物には、様々な看板が付いていて、その規模の大きさを表しているようだった。中に入れば休日というのもあって人は多かった。


「それじゃあ、服屋でもいく?」


 俺のそんな提案に恵は「うん」と頷き、香澄も言葉にはしないが、首肯をしていた。


 そして、服屋に到着。


「たくちゃんはどんなのが好き?」

「俺?俺は…….清楚系、ないしは淑やか系、かな」


 恵それを聴き終えるとダッシュで奥へと入っていった。よほど、楽しみにしてたんだろうな。


「香澄はどうするんだ?………はっ!」


 香澄にも、と思い、聞こうとしたのだが、そこには。


 グラマーな黒の下着に手をつけようとしている香澄の姿があった。見られた香澄の顔は真っ赤に燃えていて。


 すぐさま手を引っ込め、テクテクテクと服屋の店内の奥の方へと隠れるように入っていった。


 これは、見てはいけないものを見てしまったんだろうか。


「お客様」

「はっ、はい!」

「お連れ様………彼女さまがお呼びです」

「か、彼女?!いませんよ、そんな人」


 いきなりのことに訂正をしたが、その店員は強引に俺を彼女(?)のところに連れていった。


 そこにはカーテンがしまった状態の試着室があった。


「すみません、彼女って?」


 隣にいた女性の店員さんに聞いて見るのだが、微笑むだけでなかなか答えてくれない。


「褒めてあげてくださいね」


 店員さんはそれだけ言うと、その場を立ち去っていった。


「えっ?」


 ガシャッとカーテンが唐突に開く。


 そこにいたのは、恵だ。なのだが、今日着てきた格好とその服装は違う。今日来てきたのは、流行に乗っかった洒落たコーデだったが。これはどちらかと言えば緑や、青を使った控えめな服装であった。


「可愛い…………」


 無意識にその言葉は俺の口から溢れ落ちる。


 今回ばかりは本音の中の本音でしかなかった。


「そう?」


 と、恵は俯いたまま俺に言っていた。お互い、すごく恥ずかしい。


 そのまま、その世界は静止していた。


 ♦︎


 ああ、なんで私は黒い下着(あんなもの)に手を出していたのだろう。


 兄さんに見て欲しかったから?


 多分そうだろう。私もあんまり理解できてないこの気持ちが、だんだんと紐解けてきた。


 でも、なんで?私はこんなにも兄さんのことを……。


 人気の少ないところだった。だから、こんな目に遭ってしまった。


「んんっ!」


 突如後ろから現れた布に口を塞がれ、縄で縛られる。


「ん〜」


 私の悲鳴はかき消され、そのまま何処かへと連れていかれてしまった。


 兄さん……。


 "カタンッ"


 と握りしめていた携帯は滑り落ちてしまった。

そして、次が…………

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