開花前の日常⑧
『でも、俺は』
俺はその時、何をしようとしていたんだっけ。
『君を絶対に』
俺はその時、何を言ったんだっけ。
朧げな記憶のピースがバラバラになって脳内で乱舞していた。俺はそれを一つ一つ手繰り寄せて行く。そして、織り成していくのはある夕暮れの記憶。
少年、と少女が。
お互いに笑いあって話し合っている映像だった。
♦︎
「今朝のは一体?」
俺はあの夢の正体を掴めずにいた。いや、実際は覚えている。漠然として、だが。細かいことは思い出せない。
あの少女誰なのか。
俺はあの時何をしたのか。
そんな大事な情報がするりと頭から抜け落ちていたのだ。
「兄さん、おはようございます」
「……ああ、おはよう」
「どうしたんですか?」
そんなに他人にわかるほど、わかりやすい顔をしてたかな。
「いや、ちょっと考え事」
「そうですか」
そんな些細な会話だったが、香澄が自分から話しかけてくるなんて。昨日のこともあったし、敬遠されても仕方ないとタカをくくってたんだけど。
朝食は昨日と同じくすごく盛り上がっていた。家族団欒というやつだ。だが、相変わらず香澄は口数が少ない。
なんで、俺と話すときのような感じでしないのだろうか。
「たくちゃーん、きたよ」
インターホンから恵の声が響いた。ああ、もうこんな時間か。
俺はさっさと支度を済ませ玄関へと向かった。だが、なぜか香澄が玄関のところに身支度を済ませた上で立っていた。
何の用だろうか。
「私も、行きたいです」
そんなことを言った。
「ああ………別にいいよ」
「…………よかった…」
その声は非常に小さく俺の耳に届くことはなかったが。
「おはよう。たくちゃん………と、妹さん?」
「ああ、そうだ。俺の妹の香澄だ」
「はじめまして、神辺香澄です」
「こちらこそ、はじめまして。拓人くんの幼馴染の柏木恵です。よろしくね」
そう言って二人とも挨拶を終えたのだが、なんか怖いなぁ〜。
なんだかんだで俺たち三人は登校を始めた。
だが、雰囲気が重苦しくて何も話さない。よく分からないが、すごく重圧感がここにはあった。
「香澄ちゃんはなんで昨日たくちゃんと一緒にご飯を食べたの」
「っ!……….それは、兄さんに少し用事があったからです」
「ならあの場で話せばよかったよね。それにメールでもできるし」
たしかに言われてみればそうだ。だが、何か香澄が困ってそうだったので。
「実は俺が弁当の箸を忘れててさ香澄がそれを届けてくれたんだよ。お礼に学食でなんか奢るって話になって」
「そうだったんだ」
恵はなっとくした様子で、俺の方に相槌を送っていた。
はぁ、これでなんとか収まったか。あれ、ちょっとまて、これって話す話題なくなったんじゃね。
そのまま俺たちは一切話すことなく正門へと入ることになる。
次がラストです!
8時です。よろしくお願いします!




