開花前の日常⑦
第四弾!!
ヤンデレまで、あともうちょっとです
チクタクと揺れる針。
何分かボーとしてたな。幽体離脱してる感じだった。まあどうでもいいが。
「風呂でも入るか」
唐突に発した一言。俺はそれに倣ってお風呂場へと足を進めた。
なんか、今日一日色々ありすぎて本当に疲れた。ゆっくり風呂に入って疲れを癒そう。
慣れた足つきでその場所へと向かう。
脱衣所に入り、そして服を脱ぐ。
見れば風呂場の電気が付けっ放しだった。誰だよ。ちゃんと消していけよ。
まあ俺が入るからいいけどさ。
"ガチャ""バタンっ"
開けて、閉じた。なんか今、肌色に包まれた人間の姿が見えたのだ。いや、違うよな。違う。絶対違う。
そんな、いるわけない。いくらなんでも入りすぎだろう。
よし、今のはきっと幻覚。疲れすぎてそんなものまで見えてしまうようになったのか。
そして、扉を再び開ける。
「…………」
「…………」
その世界が凍った。俺と香澄、隔てるものは衣服を含め何一つなく、生まれてきたままの姿でお互いがお互いを眺めていた。
一際目立つ純白の肌、そして背中に沿って長く伸びる黒髪、強調しすぎない胸の膨らみに、腰のくびれ、スレンダーさが目立つその裸体に一瞬、俺は目を奪われた。
ってダメだろう!妹の体に欲情するなよ、俺!
香澄はその二つの草丘を腕で覆い隠し、恥じらいからか目を背けていた。
「兄さん、早く閉めて」
「えっ。ああ、うん」
思ったより、あんまり怒らないな。
「ねえ、兄さん………….一緒に入る?」
「な?!入るわけねーだろ!」
何言ってんだこいつは。俺は男だろ。いくら兄とはいえ年齢が年齢なんだから考えろよ。
そして、正気に戻った香澄は湯けむりが漂うこの空間でもはっきりと見えるくらい、頬を赤く染め上げた。
「は、は、早く出て行って!兄さん!」
「あああ!すいませんでしたぁぁぁぁああああ!」
ああ、また一つ。香澄に貸しができてしまった。
♦︎
なんで、兄さんがここにきたの。それにさっき、私あんなこと言っちゃうし。
一体、なんなの。この感情はなんなの。この気持ちはなんなの。
全然わからないよ。
いや、本当はわかってるんだ。でも、怖いんだ。間違いかもしれない。私の勘違いかもしれない。
もしそうだと思うと、怖くて怖くて。
だから、私はこんな曖昧な気持ちしか持ててないんだ。
瞼に映るのは幼い頃の記憶。
そこには目の前で無邪気に笑う私より一つ年上の少年の姿があった。




