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思考停死 ―― その罪は 一度の死すら 生温い ――

 冒頭下品。注意。


 父を苦しめる理由を関連付けるヒントが一文字では少ないので、一文追加。

 ラストも追加。

 事の起こりは2か月前に遡る。

 ある晩、気のいい人物にメシを奢られ、たらふく食った。


 次の朝。起きて、トイレに行くと、閉じ籠った。

 切れ痔? 出血してた。

 それはいい。

 が、出せない…。

 いや、出したい。だが、踏ん張ると裂けるのか、めっちゃくちゃ痛い。

 そのため、出さないようにせざるを得ない。が排出したい欲求がそれを阻む。

 相反する欲求に困惑する。

 一気に出そうものなら、背筋が凍る。

 少しづつ、痛くないように。

 排泄欲求を深呼吸などでごまかしつつ、時間を掛けて用を足す。






 朝から地獄を味わった。

 朝食は食べる気が起きなかった。飲み物だけで済ます。


 部屋を出ようとすると鉄格子だった。


 は?

 意味が分からない。

 ホテルだと思っていたが違うのか?

 窓へ行く。嵌め殺しか。ガラスを割ろうとするが割れない。しかも景色は映像で窓はモニターだった。

 周囲を見渡す。ホテルじゃないが備え付けの電話を見つける。

 受話器を取る。


『やあ、おはよう。昨日は快食したね。快眠のようだったけど、快便できたかな。』


 ふざけた声が即座に応えた。

 あの地獄はこいつの仕業か。


「貴様は誰だ!」


 当然の疑問だ。


『やだなぁ。昨日は一緒に食事をしたというのに。つれないなぁ。』


 昨日の男か。


「何が目的だ!」


『絶望だよ』






 監禁された。

 メシは出た。しかし、あの地獄を回避するため、飲み物を中心に取る。マシになったが下痢でも染みて辛い。

 こちらの苦しみを理解しないのか、更なる攻撃に晒される。

 尿路結石か? 寝てる間に何かしている? 尿さえも苦痛に。

 水分を減らし、運動して汗を掻いた。ある程度は仕方ない。が対策だ。

 だが向こうは別の手を仕掛けてきた。

 布団にノミをバラまきやがった。

 痒い、カユイ、かゆい。

 さらに白癬菌までバラまきやがった。

 足、手、腹、複数やられた。

 最初ノミだけだと思っていたから悪化するまで気づかなかった。

 あちこちが痒くて気が狂いそうだ。

 皮膚表面は掻き過ぎ、血だらけでズタボロだ。

 寝てても掻いてたため、内部も打撲のようになった。

 が、一時的に痒みが収まる。痛いけども。むしろ快感になるほどだ。






 いつの間にか寝床に磔にされていた。手足は拘束されている。

 それからは更なる本格的な拷問だった。


 爪剥がしは当然だったのだろう。両手や両足。


 目の前でハムをスライスした機械に指を一本づつ入れられ。


 ハンマーで手足の骨は全部砕かれ。一本一本丁寧に。


 出血で気絶しないようにか点滴までしつつ。


 ちゃんと休憩まである。


 人工心肺に繋がって、溺れさせられる。


 皮膚を剥がされ、塩を塗られる。


 毛を毟られたり。


 歯を抜かれたり。沁みるように傷をつけられて食事させられたり。めちゃくちゃ甘い物や、逆に辛い物、酸っぱい物など固定して延々と食べさせられたり。


 騒音にさらされたり。甲高い不快音やら。鼓膜が破れる程の轟音など。


 酷い悪臭にさらされたり。納豆まで出たが効果がないとすぐ変わった。

 演技してたが脳波でも調べているのか?


 顎や肋骨を折られたり。

 

 ある時は密閉された容器に右足を入れられ、その中に軍隊蟻? のようなものが這い回る。

 足は骨と化した。


 左足には薬品が垂らされた。雫が落ちる。皮膚は溶け、肉は焼ける。


 股間はゆっくりと潰された。一個二個と。


 腹は裂かれ、臓器を取り出されていく。もちろん心臓も。麻酔もなく。


 もうその頃には脳は頭から出され、目玉と一緒に水槽に浮かばされていた。






 そして映像を見せられることになった。

 苦痛から解放された、と思った。

 見せられたのは息子の頭部と体。離された。

 絶叫したかった! ができなかった。

 息子が何をした! 普通に生活してたじゃないか。


 それから、体の方は母親に対面した。

 そして機械の電源を引っこ抜く姿を見る。


 母さん……。


 さらにその場に俺の心臓もあった。

 息子の体と同じ末路を辿った。

 虚しく響く電子音だけが室内に残った。






 脳と目だけでも拷問は続いた。

 以前自ら受けた拷問の映像と伴に電気刺激を繰り返された。

 慣れない程度に休憩を挿み。

 また映像を見せられる。

 家に俺の頭があった。

 そして母さんと会話する様子が映る。

 それも数日続くと変わった。

 ニセモノだとバラしたのだ。

 母さんの絶望が見るに忍びない。俺のために悲しませて。

 さらに継娘の臓器移植の提供に承諾のサインをするのを見る。


 やっとか。余計なことを言おうとしなければ、まだまだ母娘共々楽しめたのに……。


 それから母さんが倒れた。

 俺の頭部はそのために送られたものだったのか。

 あの中に放射線源でもを仕込んだのか。

 そして亡くなった。

 惜しいな。勿体ない。







 それにしてもなんだこの夢は。

 何とかならんのか。理不尽すぎる。そもそも脳を取り出して生きてけるわけないだろ!

 こんなもの夢だ。夢。

 もしくはヴァーチャルだ。

 毎回毎回発狂した方がいいような目にあっても休憩させやがって。

 交替しやがれ!

 チクショウ!


 ドアから男が入ってきた。

 この状態になってから初めてだ。

 男が口を開く。が耳もないから分からない。

 男が故意にやっていたのだろう。

 モニターが示され、文字が浮かぶ。


『いやあ、悪い悪い。もう耳がなかったね。』


 見下しやがって。


『そろそろ止めを刺しに来たよ』


 そう文字を表示すると同時にメスを構える。


『まずはもう体を動かさないから小脳からバッサリ行くね』


 モニターにカメラの映像が入る。水槽に浮かぶ脳だ。

 言葉通りばっさりと切られて取り出される。

 人工血管に繋がれた人工心肺から、この満たされている溶液が循環している。

 そのために出血はない。そう説明された。


『次はもう生存に必要なくなった脳幹行ってみよう』


 心臓その他諸々がない。呼吸すらしていない。生命維持には必要ないだろう。


『じゃあ手足もないから運動野もいらないかな』


 大脳にもメスが入る。

 一言言ってはちまちまと削られていく、俺の大脳。


『どこまで意思が保てるかな』


 二つに脳梁を分割した。


『死んだと思った?』


 そして闇に包まれた。

 次第に何かが無くなっていく。

――死にた、くな、い……






『死んだと思った?』


 そう表示して、もう一方の半球を切り裂いていく。

 水槽から切られた端から取り出されていく。

 最後の一片、前頭葉か、を取り出し、カメラの前で握り潰された。


『もう半分』


 それは俺が半分殺されたということだった。

 やばいやばいやばい。先ほどのように後頭葉を切り離さずに、ちまちま削っていく。


――死にたくない死にたくない。


 くそっ!走馬燈か。


――死にたくない死にたくない死にたくない。


 やり直したい。何とかならんか。


――死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない。


 どこで間違った。この男にタダメシ貰ったことか?


――死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ。


 あいつを始末し損ねたとこか?


『そろそろ一気に行きますか。後悔し絶望しながら、死ね!』


 その表示が出たら、男は水槽に手を突っ込んだ。


――死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ死ぬのは嫌だ


 実際に最後に見たのは握り潰される俺だった。


――死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない


 走馬燈が最後に見せたものは血に染まる継娘の逃げ去る姿だった。動いていた最後の。

 記憶に残る最後の口の動きが幻聴を聞かせる。


――死にたく、な、い …


『死ね!!』


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