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勇者×魔王ランデブー  作者: 朱鷺
2/2

主役×村長 1 向かう

短いです。

登校のペースはまちまちです。

なるべく早くを心がけますが、色々時間に余裕を持てない人間ですのでご容赦ください。

ミーナを助け出してから三時間が経った頃。

 三人は無事、禁止区を抜け出し、現在は既に村の入口が視認出来る距離のところだ。

 三人が視認できるということは、当然村の見張り役からも見えているわけなので、村の中には三人が到着するより一足早くに報せが齎される。

「あっ! 帰って来たぞ! ギルとルナだ。 ちゃんとミーナもいる! 無事みたいだ!!」

「本当か!? よし、村長とミーナの両親を呼んで来る」

 入口の門の側に建てられている物見櫓に居る二人の見張り役のうち、痩身の男が言うが早くに階段を駆け下りて走っていき、もう一人の屈強そうな男の方は依然その場でたたずんで、三人の到着を待っている。

 そして、三人が入口の前まで来ると、見張り役の屈強な男は声を大にして問い掛けた。

「止まれ。 問う、汝らの真実を答えよ。 まず人数は?」

 その問いに対して、代表としてギルが答える。

「三人だ。 俺の名はギル・クレティ、隣はルナ・セルティ、この子はミーナだ」

「おいおい、先に答えるなよギル。 面倒くさいのも分かるが、こいつぁ儀式なんだぞ」

「分かってるけど、どうしたって面倒なものは面倒なんだからしかたないだろ、セス」

 ギルが親し気に話しかける屈強な男――セス・バートは、ヤレヤレといった様相で首を横に振る。

そして、セスがそのまま櫓の中で何やらごそごそと動いてから一言、

「よし、通っていいぞ。 結界への入域許可を出した」

「入域っていうか、俺らここに住んでるんだけどな」

「仕方ないだろうが、急ぎで許可印を渡せなかったんだから。 てか、細かいことはいいから早く入れ。 危ないし、村長がミーナの両親連れてそろそろ来るんだから」

「分かったよ。 さてと、行くか」

ギルの言葉を皮切りに三人は結界の膜を抜けてから門をくぐり抜けて、村の中へと入る。

 門をくぐり抜けた先には人の山があった。

「おお、帰ってきた!」「無事みたいだ!」「ギル兄~!」「ルナお姉ちゃ~ん!」

「ミーナだ~」「流石の二人だな」「おいおい、傷一つ無いぞ」「強いなぁ~」

 三人の目の前に居る者は皆口々にギルとルナを称賛し、ミーナの無事を祝う。

 丁度、三人が入ってすぐの大通りの道幅の横いっぱいにいる彼らは皆この村の住人だ。

 彼ら、というよりはこの村の全員がギルとルナの二人には、その類稀なる強さに一目を置いているのだが、やはりどんなに強くて安心とは言えども、家族が危険な場所に行っていたとなれば心配するのが当然。故に彼らは自然とこうして集まったのだ。

「おいおい、皆でそんなに広がるなよ。 邪魔になるぞ」

 そんな光景を見て、この後今此処にいる全員が村長に怒られるだろうことを予測し、その原因たりえる『通行の邪魔』を指摘するギルだった。

「またお前は~」「可愛げのない奴だな~」「泣いてもいいんだぜ~?」「感動しろよ」

 心配で集まった身としては、ギルの指摘は最もであっても可愛げのなさにつながったのだろう。人の山の大半はギルの指摘で未来が予想出来て、『安否も確認できたことだし、帰ろう』と、そそくさと帰るが、内訳少数の何人かがギルの指摘に野次を飛ばす。

「うっせぇよ。 だーれが泣くかっての! アホなこと言ってないで、道開けろって。 でないと、面倒なことにな、る・・・遅かったな」

「あ? 何言って――あだっ!」「イテェ!」「ぐおぉ、村長・・・!」

 ギルの言葉が終わる一歩手前で、残りの彼らの脳天に拳骨をくらわしたのは、体格のいい雰囲気だけは大人し気な初老を纏うの男性、この村最年長の村長だった。

「お前たちは・・・人のことを考えんか。 心配であったとしても、邪魔であろうが」

拳には確かな力による威力を携える一方で、その声音はまるで我が子に躾として教えを諭す親のように穏やかなものだ。

 そして、村長が察しの悪い少数派のギャラリーの面々に一言「行きなさい」と短く告げるのと、村長の後ろからミーナ目掛けて二つの影が飛び出すのはほぼ同時だった。

「「ミーナ!!」」

「お父さん、お母さん!!」

 飛び出した二つの影の正体はミーナの両親だった。二人はミーナをしっかりと抱きしめるとそのまま無事であった喜びを噛みしめるように、何度も何度もミーナの名前を呟く。対して、ミーナの方も改めて両親と再会できたことが嬉しかったのだろう、先程までニッコリとした笑顔を浮かべていた顔は、今や大粒の涙でぐしゃぐしゃになっている。

 そんな三人を見守るギルとルナだったが、いつの間にか少し離れていた筈の村長がすぐ真横まで来ると一言、二人に告げた。

「お帰り、二人とも。 ミーナも含めて三人、全員無事で何よりだ。 帰ってすぐで悪いが、このまますぐに私の家に来てくれ。 お前たちの報告と私からの話があるのでな」

 そう言うが早いか、村長はスタスタと元来た道を戻り去って行った。

 そんな村長の後ろ姿を、唐突に告げられた言葉から来た驚きと困惑からただジッと見つめるだけになってしまった二人。

 そのまま村長の後ろ姿が人込みに紛れて見失うまで見続けていた二人は、後ろ姿を見失った瞬間に顔を見合わせて困惑を口にする。

「おかしいな、普段なら装備解除の上で報告をって、必ず一息つかせてくれてたのに」

「確かにね。 お帰りこそ言ってくれたけど、何だか不安気だったし、何か急いでる感じだったわ」

 たかだかすぐに来いと言われただけで二人が困惑するのには理由がある。

 第一に、村長の言葉だ。普段の村長は必ず二人に召集を掛けるときは武装しないようにとキツく言づけてあるのだ。今までその言づけを破ったことは二人自身からは勿論、村長からも無い。

 だが今回は違う。『そのまますぐに』と明言して召集を受けているからには、武装は解除せず、そのままでということに他ならない。

 第二は、村長の態度だ。村長は表情は動かさないし無口故に、よく知らない者が抱く印象は『怖い』やら『冷たい』やら、果ては『冷徹』などとどれも良くない部類の印象ばかりだが、その実はとても優しい。彼を知る者は皆、口を揃えて彼を『ツンデレ』・『恥かしがり』等々呼ぶ。村長は彼らの呼称通り、人に好意的な感情を向けられたり、逆に向けることを面と向かって行うことを恥ずかしいと感じるタイプの性格の持ち主なのだ。

 更に言えば、どんな心境なのかは不明だが気持ちを大きく外に向ける事さえも恥ずかしいと感じる気持ちも持っていたらしく、それらが原因で彼は極力顔にも行動にも自らの気持ちを出さない生活を幼少から営んでいる内に、それが普通になり、周囲から怖がられるようになってしまったのだ。本人はそれで良いのだと納得している風だが、実際は結構気にしているらしく、心がけも虚しく微かな感情が滲んでしまうことが多々あった。本人としては気付いていないのだが、それが幸いして彼の『相手を心配している気持ち』、寂しい・気になると言った感情が僅かではあるが外に出るので、僅かな感情を感じ取れるようになった者はそれを感じ取ることができるのだ。しかし、感じ取れるようになるには、慣れが必要になるのが必然。

 だから、彼と接する期間が短く機会が少ない者は彼には良くない印象を抱き、期間が長く機会が多い者は全く逆の印象をいだくのだ。

 話しを戻すと、そんな優しい村長が一方的に『来い』とだけ告げて、足早に去るなんてことは、今まで一度として無かったのだ。

「・・・・・・とりあえず悩んでいても仕方ないし、行こう」

「そうね、行きましょう」

 村長の態度に疑問を抱きつつも、悩むだけ無駄だと結論付けて二人は村長のいる家へと向かう。


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