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 大会でなら、データを改変できるかもしれない。


 社長さんはそう言った。そしてそれは俺が求めていた以上の答えである。


 ただし、もしそれが本当だとして、引っかかる所があった。


「……それって全国中継されている場面で、俺に相手のキャラクターをどうにかしろと?」


 念を押すと、社長は頬杖をついて俺を試すような目で見た。


「ああ、だが無茶なことには違いないから、相手は試合の最中に戦闘不能になるかも。しかし話を聞く限り、殺す必要すらない最高のハッピーエンドだろうと思うよ。だけどもちろんうまくいかない可能性だってある。キャラデータが壊れるかもしれない。だが――それでも相手キャラを殺してほしいっていう君のキャラの願いは叶うんじゃないか?」


「……」


 俺は突き付けられた選択肢に表面上は無表情を通したが、思っていた以上に動揺していた。


 心拍数は上がり、心臓の音にあわせて視界がぶれたくらいだ。


 だが社長さんの言うことはその通りだ。


 データが壊れるということはゲームのキャラクター達にとって本当の意味での死に等しい。


 それは彼女を殺してほしいと言ったおじさんの願いそのものだった。


「とまぁ、色々と考察を述べさせてもらったけれども、冷静に考えてもらえばわかると思うけど、もちろん今までの案はやらない方がいい」


「ええ、そうですね」


「どうするのか、それはあえて君が決めてくれ」


 社長さんはそれを踏まえて俺に考えろと促した。


「……貴方はいいんですか?」


「僕? 僕はうまくやるさ。それに、こんな面白そうな事、協力しない理由がないね」


 瞬きすらせず力説する社長さんの顔を見て俺は思った。


「……めちゃくちゃ楽しそうですね?」


「そりゃ楽しいさ! こう言うゲームの楽しさは非日常を疑似体験できるところだろう? 僕は根本的にゲームが大好きなんだからね!」


「そうですね……そうだなぁ」


 彼らも、俺が今どれくらい混乱しているのか顔にさえだしてしまえば、リアクションも変わるのだろう。


 これは困ったことになった。


 選択肢は相談したことで確かに増えた。


 いっそできないと太鼓判を押されればきっちりあきらめもついただろうに。


 それは当初の予定通りに、どちらを選んだとしても俺は後悔するだろう。


「師匠! がんばってください! 僕も応援しますから!」


 小学生はとにかく応援の姿勢を見せた。


「私はやっぱり反対。できるからってやっちゃいけないことだと思う」


 アイドルさんは若干心苦しいようだが、あくまで反対姿勢を貫くようだ。


「さぁ選択だ。――どうする?」


 社長さんは悪魔の囁きを語るポジションに酔っている。彼の目はまさに悪魔的な輝き方だった。


「そうですね――それじゃあ」


 迷ったが。俺はその場で回答した。


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