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『改めましてこんにちは! 私歌手をやってます! ライラです! この度私実況として、参加させていただくことになりました! よろしくお願いしまーす!』
『おおおおおおお!!』
会場を温めるとはこういうことを言うのだなと俺は実感と共に納得した。
実況やるのほんとだったのかとか、そんな事はどうでもよくなるほど、会場のテンションがやたら高い。
コメントの速度も尋常ではなく、観客の数も前回以上だ。
もうホント勘弁してほしい、そう思わずにはいられない。
そしてスタジアムには見覚えのある顔がすでに待ち構えていた。
相変わらずのタンクトップの野球帽の女の子は、帽子のつばをきゅっと直して、俺を下から鋭い目で睨んでいる。
いや単に、背が低いだけなのかもしれないけれど。
「よく逃げずに来たね。待ってたよ?」
「そりゃ来るけども……」
小学生から見下ろされる構図というのもなかなかなか趣深い物がある。
俺は小学生のほぼ素通りして自分のステージに向かうと、さっそく手元のパネルを念入りに確認する。
勘違いでなければ前回同様対戦相手との通話は健在、ただいまマイクのテスト中だ。
向かい合うのは例の小学生。従えるパーティは変わらず例の三人。
俺は端末を差し込み、自分のメンバーを呼び出す。
『今回の相手は、この私を下した、噂の邪神ヤシロ選手! 今回もその独特のプレイスタイルを余すところなく発揮していただきたいですね! それでは今日のフィールドはこれだ!』
アイドルさんの言葉は爽やかだったが、俺達に対するプレッシャーが少なからず籠っていた。
全画面に投影されるフィールドは岩山が無数に存在する荒野。
味気ないフィールドだが、広さと迫力だけは十分だった。
「よし……逃げ場はありそうだ」
だだっ広いフィールド上等である。投影された砂塵にまみれた黄土色のフィールドに確かな手ごたえを感じた。
『さて調子はどうですかな?』
「まぁまぁだね。そっちの首尾は?」
『上々……っと言ったところです』
「そいつはよかった、後はどう転ぶか、神のみぞ知るって所かな?」
『それは、それは最高ではないですか。すべては貴方の手のひらの上という事です我が神よ』
「それだと最高なんですがね」
おじさんの軽口は今日もすべりがいい。
スライムも、スケルトンも今日に向けて調整は万全だ。
俺は腰に手を当て、端末に目を落とす。
このゲームをきっかけに、俺は最近悪名名高い邪神として世の中に知れ渡っているらしい。
一時的な物だろうが、不名誉は不名誉。
だが――それもいいだろう。
ヒール役と言うのも、これはこれでやってみると奥が深い。
『……よろしくお願いします! 僕らは正々堂々戦って完全に勝ってみせるから!』
小学生が俺に向かって宣言する。
左右に構えるワーウルフが二体、さらに中央に巨大な大剣を地面に突き刺して、こちらを見据えているのは例のゴトウ戦士だ。
「ああ、お手柔らかに頼むよ。こっちも手は抜かない」
『当然。僕らの方が強いのに手を抜く暇があるとでも?』
「……憎たらしい事を言うなぁ」
『当然!』
小学生が吼え、俺は静かに頷く。
『さぁてみなさん、注目の邪神ヤシロVS圧倒的な力技で勝利をもぎ取る戦神ユウ! 試合開始です!』
アイドルさんの実況が観衆を盛り上げて。
大きなブザー音と共に勝負は始まった。




