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 どこからか響いてくる唸り声を聞いていると、俺も背筋が寒くなった。


 だがお金を儲けようと思えば、モンスターを狩ることは非常にスタンダードな方法だ。


 モンスター討伐はその種類に合わせて、後で報酬を受けとれる。


 これはRPGによくみられる、倒せばお金になる方式に近いものがある。


 その上、モンスターによっては取れる素材を売り払って二度おいしい収入源なのだ。


 森も随分深くまで入り込み、人の気配がまるでない。今すぐにでもモンスターが出てくると言われても納得出来てしまう不気味さがある。


 ではそろそろプレイヤーの義務として、俺はちょっと高めの視点を取ると、なじみぶかい作戦を提案した。


『では作戦を伝えます……名付けて、おびき出して落とす大作戦』


「……つまり、適当なモンスターを釣ってきて、落とし穴に落とすと。好きですね落とし穴」


 すぐに意図が伝わるおじさんは、飲み込みが速い、ちょっと恥ずかしいけども。


『まぁ好きかも。よく砂場に掘って怒られてたね昔』


 姑息でも安全に、用意周到に行くべきだろう。


 ここで効率よくいかないと勝てる勝負も逃す、そうではないだろうか?




「ぬおおおおお!」


「プギーィィィィ!」


 しかしこうやって遠くから眺めている分には全然用意周到なんてもんじゃないなぁ、という感想を抱かずにはいられない。


 ああおじさん、なんかすいません。こき使っちゃって。


 落とし穴は掘るのはいい。


 後はどうやって相手をおびき出すかなんだが、相手を挑発してくれるエサが必要になってくる。


 足が速くて、興味を示さなくなったら挑発を繰り返すことが出来れば言う事はない。


 スケルトンは穴を掘らなきゃいけないし、スライムは穴の中に潜んでいなければならない。


 結果おじさんは森を駆けることになった。


 複雑な森の木々の間を走りぬける姿はまさに疾風だ、必死だし。


「よっと!」


 歩幅を合わせ、穴を飛び越えるおじさん。


 怒りのままに突進するマッドボアという名のイノシシは、いきなりあらわれた穴になすすべもなく落下したのだ。


「プギイイイ!」


 断末魔の悲鳴を残し、スライムの消化が始まるのはもう数度目だ。


「はぁ……はぁ……これは中々堪えますね」


 肩で息をするおじさんにアイテム欄から水を差しだすと、おじさんは思い切り水を口に含んで生き返ったと息を吐く。


『どうもお疲れ様です』


 心から労をねぎらう俺だったが、おじさんから恨みがましい視線を向けられた。


「……考えたんですが、これって別に私がやらずともよいのではないですか?」


『ダメでしょうそれは。だって他に出来そうなメンバーがいない』


 家のパーティでは適役はおじさんしかいないとやる前に話し合ったと言うのに、今更である。


 往生際が悪いおじさんだが、それでもなおおじさんは首を振った。


 最初、意図をくみ取れなかったがおじさんは人指し指を立てて、自分の考えを口にする。


「いえいえ、目を引いて逃げてくればいいわけですから。その上、小回りが効けばなおいいのでしょう?」


『?』


 そう言っておじさんはじっと俺を見ていた。


 ん?


 後ろを向いてもスケルトンがいるわけではない。なんで俺を見ているのだこの人は?


 そこでハッとする。


『もしかして……俺にモンスターを釣ってこいと? さすがにそれは仕様外ではないかな?……』


 流石にモンスターから俺は見えていないんじゃないだろうか? もしそんなことが出来たらおとり役すらいらない。


 戦士の面目丸つぶれである。


 いっそ、またクソゲー認定してもいいくらいだった。


「まぁ物は試しと言いますし」


 ニッコリ笑うおじさんは本気の様で、引くつもりもないらしい。


『……よしわかった』


 はたから見ていて、大変そうだなぁとは思っていたんだ。


 出来るわけないんじゃないかとも同時に思ったのだが……まぁあれだ、試した結果を言うと、「クソゲー」だったと言っておこう。




『ぬおおおおおお!』


 大丈夫だとわかっていても叫んでしまうものだね。


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