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『寄る年波には勝てませんな、死んだのも初体験でしたが』


「自分で言うかなそう言う事?」


『若者は自己分析が正確に出来てないから、無謀と笑われるのですよ? せっかく得られた特典なんですから、使ってみるのがよかろうかと』


「だからそう言う事自分で言うかな?」


 すぐに反省会をする俺達である。本人の言う通り、おじさんは負け死に1を記録したわけだが、自分が死んでここまで軽口が叩けるのなら、寄る年波とやらもまだまだ大したことない気がする。


「しかし体力三分ってそれ、普通に狩りとか行って体力もつので?」


 一気に頼りなく見え始めたケビンおじさんを俺はジト目で眺めた。


 三分ってそんな限定的な条件なかなかないだろうし。


 するとおじさんはそうでもないとにやりと笑う。


「実戦とはいかに敵と戦わないようにするか、それにつきます。歴戦の勇者は戦い方以上に負けない逃げ方を心得ているものですよ。向かい合って戦うのは体力の消耗が激しいといいますし」


 まぁ言われてみれば、この闘技場の方が特殊といえば特殊だろう。


 俺はそれを踏まえて、結論した。


「……つまり、バトル形式はあまり得意じゃないと?」


『これは手厳しい』


 おじさんは肩をすくめていた。


『ああでも、フィールドに関してはもっと広いものもありますよ? ランダムですから時の運ですけど』


「結局ここでも運なんですね」


 なら俺ははすごく自信がない。とはいってもおじさんの実力は素直に評価すべきだと思う。


 なんだかんだ言っても相手をほとんど一人で追い詰めたのだから大したものだ。


 このケビンさんはなかなか強い、それは間違いなさそうだった。


 二つ名はないし、かなり年がいっているように見えたが、この人何者だろうとそっちのほうが気になったくらいである。


「ふむむ、課題は持久力か……。有名どころならそう言うところきっちり鍛えてあるんだろうなぁ」


『セリフの割に嬉しそうな声ですな我が神よ?』


「声でわかるものですかね? まぁ、期待させてもらおうかなと」


 勝機を見つけて笑う俺。


 折角いい気分だと言うのにゲームを堪能していた俺の肩をトントンと誰かが叩いた。


「ちょっと、お姉さん? ゲーム中にこういう冗談はマナー違反ですよ?」


『ええっと……すいません。それ私じゃないです』


「?」


 そんなこと言ったってここは受付だろうに。他に誰がいるんだか?


 俺はマウントディスプレイを外し、受付のお姉さんを見る。


 お姉さんのいたずらが成功した楽しげな笑い顔を想像していた俺は、まったく想像と違う、青い顔と目を見開いた表情に、まず困惑させられていた。


「なにごとです?」


 彼女の両手は、間違いなく両手揃ってカウンターの向こう側だ。


 だけど俺の肩には相変わらず手の重みがかかっているのである。


 手の平は後ろから添えられていて、俺は指先から順に目で追った。


 その先にはサングラスを掛けた怪しい女がいて俺を見ていた。


 何だこの人、怪しい以外の何物でもない!


 近年まれにみる純粋な恐怖を感じたが、逃げられない。


 彼女が自分で怪しいサングラスをずらすことでバッチリと視線が合ってしまった。


「どうもこんにちは――ちょといい?」


 その顔立ちはTVに出てくるアイドルみたいに整っていたのである。


「え? だれ?」


 顔は見たことある……誰だか思い出せないけど。


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