奇妙な世界 下
どうしたら元に戻れる。
おれはそう目の前のフード野郎にそう言った。
「失敬な、これでも私は女だ。もっと可愛らしい呼び方にしてくれ。」
え、どこが。
「どこがって体を見ればわかるだろう」
うーん
彼女(笑)の体を頭の上からつま先まで見てみる。
身長は、まあ小さい。少なくとも俺よりは。
顔は、まあ認めたくはないが美少女、と言えるだろう。悔しいが。
髪はショートカットで切られていている。ちなみに俺はポニテ派だ。
胸は・・・ぷっ
「で、なにか言い残すことは?」
と、目の前の超美少女で超カワイイ女の子が何か言ってはいるが、何も聞いていないうん
「そうか、じゃあな」
Wait!待ってくれ。聞いていました。べつになんにも俺は考えていません思っていません。
決してあ、こいつ胸小さいなーとかそんな女性に失礼なことなんて微塵にも思っていません。
「・・・」
や、やったか!?
「問答無用」
そうして俺はしばらく気を失った。
ということをついさっき聞いた。
「いや、済まない。私も大人気なかったな。たかが餓鬼程度に腹を立てることもなかったな。」
グッ・・・いや我慢だ。冷静になれ。
そういえば、お前の名前ってなんだ。
「ああ、そういえば言ってなかったか。」
ああ、今さらだが。
「むう・・・教えたいのは山々だが、あまり簡単に語れる名前ではないのでな。」
もしかして、神様とかなんとか?
「ほう・・・どうしてそう思うんだ。」
ほら、こういうやつって神様から力をもらえるとか、そういうフラグじゃないの?
「・・・なるほど、しかしハズレだ。わたしは神様なんかじゃあない」
なん・・・だと
じゃあ、お前は何者なんだ。
「そうだな、いろんなことができる万能系美少女だな。」
おとしはいくつめされてい「どうやら命がいらぬと見えるが」
いえいえじょうだんですよ、いやほんと
「まあ、神様ではないが、それに近いものではある。」
どういうことだよ。
「わたしはお前たちと同じだ。
といっても現在は私しかいないのだが。」
答えになっていないと思うけど。
「まあ、それもここに私がいるからなんだが」
おい、無視か。
「お前はさっき契約といったな、何らかのフラグがあると」
長い沈黙を破り、彼女はそう聞いてきた。
まあ、確かにそういった内容の小説とかは結構あるし、
俺も読んだことあるからそう思っただけだけど。
「興味はあるのか?・・・その・・・私の力に」
いや、あるにはあるけれど・・・
何でそんなに恥ずかしがっているの。
「ちなみにその小説の主人公はどんなことしてたの」
まあ・・・そうだな。
主人公が神様に間違って殺されてしまって、その神様から力をもらって
チートよろしくその世界でいろいろやるみたいな、そんなの
「・・・随分とまあ勝手な神様だな。お前も欲しいのか。」
まあ、ないといえば嘘にはなるな
だけど、俺は元の世界に帰りたい。
帰って寝たい、ゲームしたい、パソコンしたい。
「お主・・・意外と小さいんだな」
うるせぇ、背は関係ないだろっ
「いや、そうじゃなくて・・・まあ、いい。
・・・帰りたいんだな、お前は」
まあ、帰りたい。
けどその前に記憶を取り戻したい。
自分の家とかわからないし。
「・・・私も手伝っていいか?その・・・記憶を取り戻すのを」
ん?その言い方だと取り戻す方法を知っているのか。
手伝ってくれるなら、ありがたい。どんな方法なんだ。
「お前の心の奥深くに潜る。そこで記憶を"見つける"。」
"取り戻す"じゃあなくて"見つける"のか。
「・・・お前は私が怖くないのか
この・・・神様とか得体の知れないとか言っているのに」
それこそ今更だな。おれはそのたぐいの告白は中学生の時に
何回も受けてきたから問題ない。
「人を勝手に中二病扱いするな!
・・・全く、お主は・・・」
と彼女は初めての笑顔を俺に見せてくれた。
ホント、胸さえよければ「何か言ったか?」
・・・イエナニモゴザイマセンオジョウサマ
「ふう・・・私もいい加減この場所に居続けるのも飽きてきたしな。」
アンタはここにどのくらいいたんだ。
「そうだな・・・145を数えてからは数えていない。」
・・・よくここにいられたな。
「それはお互い様だ。お主こそ、な」
まあ、何がともあれ、暫く宜しくな。
「・・・ああ、よろしく」
こうして俺は、しばらく相棒となる正体不明な生物と共に
俺の記憶を見つけ出す旅へと進みだした。
どれくらいかかるのかもわからない、そんな道を
俺たちはゆっくりと、しかし確かに進むんだ。
「とでも思ったか」
「どうした急に。とうとう壊れたか。」
「まあ、仕方ないんじゃない?いきなりこれだからね。」
現在、俺の心の深いところにいるらしい。
追先ほど俺の記憶を取り戻すため、
長くなるであろうその道を踏み出す決心をした。
ああ、したさ。自分のためだし。
だけどなんだよ、このあっけなさ。
俺の決断とは裏腹に、取り戻すのは簡単だった。
まあ、簡単に済んだのも、目の前の男のおかげなんだが。
「どうだい調子は、桐島くん。」
王城時。それがこいつの名前らしい。
男性とでも女性とでも言える優れた容姿に少し嫉妬心が沸く。
爆発しろ。