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異世界姫滞在記  作者: いぬがさき
第7章 開戦
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作戦開始

電撃作戦の性質上、『一角獣ユニコーンの進撃』作戦は簡素に、かつ迅速に開始された。



本隊の兵達が見守る中、ユニコーンの『角』であり、『一番槍』である30名の有志兵が動き出す。


角の先頭を並び駆けるのは、聖獣ペガサスに騎乗する白い騎士と、同じく聖獣である雪華狼シエラウルナに騎乗する姫騎士。

ミーシャと優太、リリとアリスである。


そして、彼らの後ろを自らの契約獣に騎乗したユステス将軍の近衛騎士らが駆け、更にその後方を一般兵士が乗る軍用車両が追従する。



優太とアリスは指定された大通り、少し前までは魔王軍の先遣隊がひしめき、今ではそのむくろ)が至る所に打ち捨てられ、そこら中で黒煙が立ち上る荒れた地を、足をとられないよう、そして、後続との距離に気を払いながら駆け進める。


リリやミーシャら聖獣が本来の速度を出そうものなら、軍用車両は言わずもがな、近衛騎士達の契約獣でさえも瞬く間に置き去りにしてしまうからだ。

とは言え、軍用車両も法定速度を超える速さで走行しているので、進軍速度に遅れは感じられない。



有志隊の目的は魔界の門への到達ではなく、本隊を魔界の門へと導く為の道作りである。


優太とアリスのみが先行して、魔界の門へいち早く辿り着けたとしても、出来上がるのは針のような細道であり、本隊はもちろん、有志隊が通過するのも困難となる。

そもそも、彼らが来る前に道は塞がれてしまい、優太達は門の前で孤立無援になってしまうだろう。


そして何より、先遣隊といえども相手は伝説の『魔王軍』。


その軍勢相手に2騎だけで、門まで辿り着ける可能性は皆無だといえる。



作戦開始から十数分経過した頃。


優太達は魔界の門まで約10kmの地点まで到達していた。

進んできた距離と合わせるとおよそ中間地点となる。


本部から5km程までは、ユステス将軍達による本部帰還時の掃討、火守の血の封印などの際に撃ち漏らした魔物しかおらず、散発的な戦闘のみであった為、難なく通過できた。


その後、8、9km過ぎた辺りから斥候と思われる魔物達との会敵が増え始める。



つまり、魔王軍側も体勢を立て直しつつあるという事だ。


魔王軍が完全に整ってしまえば、電撃作戦は失敗であり、30名程度の有志隊など瞬時にすり潰される。



ー 急がないと! ー



本部、本隊にその旨を伝達し、優太達は近衛騎士や兵士達を置き去りにしない程度に直線の大通りを、速度を上げて駆け抜ける。



ー ダダダダダダダダダ! ー


ー ダダダダ!ダダダダ! ー


軍用車に搭載された銃火器が轟音を伴って火を噴く。


すると、奇襲をかけようと姿を現したゴブリンやコボルトの身体が、瞬く間に蜂の巣のように穴だらけになり絶命した。


また、弾雨を掻い潜って勇敢にも有志隊の前に立ちはだかった魔物達も、リリやミーシャ、契約獣や軍用車によって轢き殺された。


先頭の優太達が速度を上げた事により、『角』のように隊列が縦に伸びて左右からの奇襲に弱くなったものの、魔王軍の斥候相手では問題なかった。



斥候達を蹴散らしながら14km地点を通過する。


目標地点まで残り5kmほど。


作戦成功の兆しがみえ、有志隊の士気が上がるのを優太は肌で感じた。



勢いそのまま15km地点を通過した頃合いであった。


大通りの遠方に数体の巨影が立ちはだかっているのが見えた。


先頭を疾走る優太達が、魔法で強化された身体能力で以て確認すると、影の正体はオークで、地面から引き抜かれた電柱を掲げている。


その姿はまるで槍投げの選手がする構えであり、更にオーク達の後方で、先の戦いで見た、馬に似た頭部と、牛に似た頭部を持つ2体の大きな魔物が巨大な鉄扇を構えているのが見えた。



(まずい!)


「前方に複数のオーク確認!遠距離攻撃の可能性あり!皆のもの、回避行動を取るのじゃ!」


危険を感じたのはアリスも同じであり、有志隊全体に警告を飛ばす。



幸いにも隊列が縦に伸びている為、お互いの動きを阻害せずに各々不規則な動きですぐさま回避行動を取り始めた。


その直後。


オーク達が数歩の助走をつけ、凄まじい脊力で以て電柱を投擲した。


ー ゴォオオオオオオ! ー


ー ブォオオオオオオオ! ー


更に、馬と牛頭の魔物が鉄扇を扇いで生じた暴力的な風が電柱を加速させる。



ー ゴォオオオオオオ! ー


音速の域にまで達した電柱は轟音を伴い、瞬く間に優太達のもとへ飛来した。



そして、着弾。


ー ズドォオオン! ー


地面に突き刺さった電柱は、腹に響く衝撃音と土砂を盛大に撒き散らした。

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