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れっつ えんどたび

私は、今までいた田舎に別れを告げて、

コンクリートではなく土でできたような、

地面をとぼとぼと歩いていた。

この茶色い地面はいつまで続くのだろうか・・・。

そう考えると気が重くなってくる。

気分転換に空を見ようと、

顔を上げると、目の前に山があった。

私は、特に理由はないが、

そこに山があるから、山に登った。

綺麗な緑をした木が青々とそびえたっていた。

木と木のすきまから入ってくる太陽の灯が、

とても幻想的で、美しかった。

私には、その光があまりにも眩しくて、

地面に目を向けた。

やっぱり自然はいいものだ。

私は、今とても「しあわせ」な気分だ。

そもそも、この旅で、本当に、

「しあわせ」に出会うことはできるのだろうか。

私には不安しかなかった。

だが、この山を登りながら、

世界の中の自分たった一人のことを思うと、

「しあわせ」に出会えるなどという、

しあわせは、私には少し贅沢な気がした。

この木々を見ていると、不思議と、

私は、今、ここに、在るんだ

と思った。

世界には、私以上に、

「しあわせ」に出会えない人もいる。

でも、そういう人は、日常の中の、

小さな、小さな「しあわせ」を見つけて、

しあわせになっているんだろうと思う。

そう考えると、やっぱり私は、すでに

「しあわせ」に出会っているのかもしれない。

私は、やっぱり欲張りなんだ。

でも、「しあわせ」に出会わずに、

毎日同じことの繰り返しをしているよりも、

「しあわせ」に出会うために、こうして、

あてもない、途方もない、むちゃな旅をしているほうが、

私には、よっぽど楽しかった。

こうして、自分を見てみると、

ますます自分が嫌いになってしまいそうだが、

そんなことは、今は忘れる。

こんなことを考えていたら、

ますます気が重くなりそうなので、

何も考えずに、ただ黙々と歩いた。

歩いて、歩いて、歩いた。

すると、山の中に、小さなかわいらしい小屋が建っていた。

気になって、扉を叩いてみると、

中から赤いワンピースを着たかわいらしい少女が出てきた。

「こんにちわ。」

すると少女は、とってもにこやかで明るい笑顔を見せながら、

「こんにちわ、お姉ちゃん。」

と言ってくれた。

「ずっとここに住んでるの?」

と聞くと、

「うん。そうだよ。ずっとここに住んでるの。」

と言ってくれた。

私は決めた。

「ねぇ、しばらくお姉ちゃんをここに泊めてくれない?」

少女は少し戸惑い、

奥に消えて行った。

帰ってきた少女は、温かい笑顔で、

「いいよ。お母さんもいいってさ!」

と言ってくれた。

私は、こんなに愛らしい少女といたら、

「しあわせ」に出会えそうな気がした。

私は、この場所をとても気に入った。

この旅は、一人で行おうと思っていたが、

やはり、人に会えないのは、さみしい。

今頃、母はどうしているだろうか。

今は夏休みだからいいけど、

夏休みが終わるまでに帰れるだろうか。

この旅をすることを、一学期の初めから考えていた私は、

夏休みのいーっち番初めの日に半分を終わらせ、

次の日に、もう半分を終わらせた。

きっと点数がわるくなるだろうが、そんなことは、

気にしてられない。

私は、以前無計画の旅だ。といったが、

ある程度の計画というか、考えはあって、

この旅に出ている。

でなければ、今頃飢え死にして、

リュックにつぶされていることだろう。

私は、少女と何時間も話した。

少女は、母が畑仕事に行っている間に、

山を探検したそうだ。

少女に聞けば、山のことは何でも分かった。

少女に、何かきれいな場所はないかと聞くと、

目をきらきらさせて、

「あるよ!とっておき!あたししか知らないの!」

そう叫ぶやいなや、少女は、

私の手を引いて、駆け出した。

私はこけそうになりながら少女についていき、

息を切らせて下を向いていると、

少女が、

「お姉ちゃん、見て!とぉってもきれいでしょ?」

と元気な声で私に言った。

私は、息を整えて、前を向く。

そこには、きらきら輝く水が流れる、

一筋の川があった。

言葉がでなかった。

あまりにも美しすぎて。

私は、息をのんだ。

この世にはこれほどまでに美しい場所があるのかと。

私は、これほどまで素敵で、

美しく、リラックスできるところはあるのだろうか?

と思うほど、この場所を気に入ってしまった。

今度は、私が少女の手を引いて、急いで帰った。

リュックを背負い、少女に別れを告げた。

「ありがとう!私、あっちに泊まることにした!またねー!」

と叫び、少女に手を振った。

少女は少しおどつきながら、

「うん!またねー!あたし、遊びに行くぅー!」

と言って、手を振ってくれた。

私がそこについたころには、もう鈴虫がなく夜になっていた。

さすがに、石の上に寝るのは私にも、できないので、

寝るときは、森に入ることにした。

しかし、寝るまでは、堅くて痛い石の上に寝転んで、

星空を眺めていた。

星空を眺めていると、夜の空に、

母の顔がうかんだ。

愛しき、友達の顔が。

そう思うと私は悲しくなった。

気づかないうちに、私の頬に涙が流れていた。

気づいた時には、声を上げて泣いていた。

やっぱり、私にはこんな旅、むりだったんだ。

かわいいこには旅をさせろなんていうが、

私は、まったくと言っていいほどかわいくないので、

旅はしなくて良かった。というか、しなければよかった。

私は、今自分がどこに在るのかわからず、

急に怖くなった。

空を見るのをやめて、

石に抱き着いた。

自分でもおかしいと思ったが、

何かを抱きしめたかった。

だれかのぬくもりを感じたかった。

石は、冷たかった。

私は、泣いた。

泣いて、泣いて、泣いて、泣いた。

気が付くと、疲れ果てて、

石に抱き着いたまま寝ていた。

朝起きると、頬に涙が流れた跡があった。

私は、きらきら輝く水で顔を洗った。

さらに、その水を口にした。

全身に、その水の潤いがいきわたるのがわかった。

私は、やっぱり恵まれていて、すでに、

「しあわせ」に出会っているのだ。

ただ、私は「しあわせ」に

出会っているのに、気づかなかっただけなのだ。

ただ、それだだった。

昨日の夜、母の顔が空に浮かんだ。

愛しき友達が。

友達を思い、母を思い、

泣けてしまうのは、

自分が恵まれている証拠ではないのか?

私は、今までなぜしあわせに気づかなかった。

私は本当にバカだと思う。

自分を哀れに思う。

しかし、「しあわせ」に出会った今、

私は、「しあわせ」なのではないのか?

本当に、これで「しあわせ」じゃないか!!!

私は、自分がいとおしく思えた。

思ってから、自分が気持ち悪くも思えたが、

そんなことは気にしないことにした。

私は、やはり、しあわせだった。

こんな無謀な旅に出ずとも、幸せだった。

だが、この旅に出ることで、

その幸せに気づくことができた。

しあわせに気づけた私は、

しあわせだ。

しあわせ、しあわせなんてほざいているが、

人は、幸せだと思えば、

いかなる状況であろうとも、

しあわせなのだ。

しあわせになれるのだ。

ただ、自分の「気持ち」だけで。

全てが自分次第なのだ。


れっつ しあわせ~!!





I'm Happy♥

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