プロローグ
他にも連載している小説があるにもかかわらず、アホみたいな主人公を書きたくなってついやってしまいました。後悔しているようなしていないような。
実に変な小説ですが楽しんでいただけたら幸いです。
うっひゃひゃあーっ!
はいすみません。いきなりこんな始まり方でドン引きですよね。でも大目に見てください。これにはやむにやまれぬ、山より深く谷より高い、あれ何か違う? とにかく事情があるのです。
と言いますかちょっと聞いてくださいよ奥さん! 私、音楽家を目指して田舎からスヴェレン皇国の皇都に出てきたんですが。出てきたんですがっ! 私が女だというだけで、楽団なんかにも入れないし、偉ーい音楽家さんに弟子入りも出来ないし、むしろ誰も相手にしてくれないし、なんか危うく田舎から出稼ぎに来ている食堂で働く娘的ポジションに落ち着くところだったのです。
ですが。
ですが!
何と、この度ついに、紆余曲折を経て、何か怪しげな酒場で演奏する専属楽隊の一員に抜擢されたのですよ! うっはっは! いやあね、ちょっと音が聞こえてきたものだからね、ふらりと立ち寄ってみたのですよ。何だか場末臭がぷんぷんする小汚い(失礼)酒場でしたが、まだ夕方だったし、すぐお暇すれば大丈夫かと思いまして。
んで、入ってすぐ楽隊の目の前を占拠して瞳を輝かせながら演奏を聞いていたまさにそのときですよ。リーダーっぽいおじさんがサービスで、音楽をやめてしまったかつてのメンバーが使っていたといういわくありげなフルートを吹いてみないかと。
…え? 当然吹いたに決まってるじゃないですか。どこに疑問の余地があるんですか。とにもかくにも、フルートは経験があったの軽ぅく吹いてみたら、即採用。
フフフフフフフフついに世界がこの私の才能を認めたということですねフフフフフフフフ。
まあ「なかなかの演奏だな、坊主!」とか言われたことは全力でスルーさせていただきますがね。ちょっと日中働いている食堂で服を汚してしまって、男物の服を借りていただけなのに誰一人女だと気付いてくれないとか結構グサグサ来ました。気分転換に髪を縛っていたのも悪かったのかな?
そんなこんなで少々釈然としないことを残しつつも、こうして私は晴れて楽隊の一員となったのでした。
めでたしめでたし。