無力
七話目です!
寝不足が…。
彼を助けた時、彼はボロボロで涙を流していた。
その時の彼を見た時の変わらない美しさに私も涙を流した。
発狂して暴れ狂っている彼を押さえて、抱きしめた。
そしたら、彼は鎮まった。
抱きしめた時、彼は冷たかった。
私で暖めてあげたくなった。
壊れてしまいそうな彼を優しく、でもしっかりと抱きしめた。
そしてお姫様だっこをして、彼をこの忌々しい地下室から助け出して、そこにあったソファーに座らした。
彼はまだ泣いていた。
しゃっくりをあげて、泣いていた。
儚げで、でも美しくて、私もまた泣いた。
体に付けられた傷を見て、あの女を恨んだ。
憎んだ。
ここまで彼を壊した女を私は恨み、憎んだ。
時間が経った頃にあの女が帰って来た。
あの女が家に入って来た直後に私が呼んでおいた警察に取り押さえられた。
だがあの女は抵抗して、叫んだ。
彼は!?彼は無事なの!?あなた達、彼を奪いに来たのね!!私の彼は渡さない!!彼は私だけのものなんだから!!返して!!私の彼を返せぇぇぇ!!
と叫んだ。
それを聞いた瞬間、彼は怯え出した。
耳を手で塞いで、震えていた。
ソファーから落ちてまた暴れた。
そして彼もまた叫んだ。
なんでぇぇ!?僕は助けられたんじゃないのぉぉ!?なんでまだ僕は地下室にいるのぉぉ!?誰か!!誰かぁ!!助けてぇ!!嫌だぁ!!嫌だよぉぉ!!
私は呆然としていた。
ここは地下室ではない。
なのに彼はここが地下室だと言った。
幻覚を見ている彼はまた暴れ狂った。
尚もあの女が暴れて叫んでいた。
それに比例して彼も叫んだ。
うわぁぁああぁあ!!誰かぁぁ!!助けてぇぇ!!もう嫌だよぉぉ!!もう嫌だぁぁ!!もう何も、何もいらないからぁぁ!!誰か助けてぇぇ!!僕を救ってよぉぉ!!
私は彼を押さえようと、彼に触れた。
今思えばあの行為が彼を加速させたのかもしれない。
彼はそれを弾き、叫んだ。
嫌ぁぁぁぁぁ!!触るなぁぁ!!僕に触れるなぁぁ!!もういらない!!もう何も!!もう何も見えなくても、聞こえなくても、感じなくてもいい!!もう何もかも!!全部!!消えろぉぉ!!
そう叫んだ瞬間、彼の開ききった目の中の瞳が動きを止め、体も動きを止めた。
耳を塞いでいた手は力が抜けて、ダランとぶら下がった。
この時、彼は人形になった。
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