再演
あれから数日が経った。
彼は学校に慣れたようだ。
笑顔も増えて、周りの人間を幸せにしている。
だが、家に帰れば、なぜか暗い顔をする。
その理由を聞いてみたら、悲しい顔で…。
「今日も、何も思い出せませんでした。」
と言った。
彼の中でどんどん不安やストレスが溜まっていっている。
どうにかしたい…。
だから、私は…。
「大丈夫だ。思い出さなくても、君は君だから…。」
そう言ったら、彼は頬がひきつった笑顔で…。
「ありがとうございます。」
と言った。
悲しくなった。
私は彼を助けたい。
守るだけじゃなく、救いたい…。
その気持ちがどんどん強くなっていくのがわかった。
今日もいつも通り、学校が終わり、家に帰った。
最近、あの女から何も言ってこない。
遠くから彼を見て、顔を赤らめている。
まるで、恋している乙女だ。
いや、恋をしているのだが…。
今は夕食の時間。
彼といつも通り、食事をしている時、それは起こった。
「はい。あーん。」
「あ、あーん…。」
彼の口の中に入れようとした、瞬間、彼の目の色が変わった。
「どうした?」
「うわぁぁぁぁ!!!」
彼は私の手を弾いた。
私が持っていた箸はとび、ご飯が周りに散った。
彼は椅子から転げ落ち、何かから逃げるように後退りした。
「ど、どうした?」
「はぁ、はぁ、はぁ。」
明らかに過呼吸。
瞳孔が開いている。
「虫ぃぃぃ!!!」
この発言で確信を持った。
幻覚だ…。
もしかして、昔のあの麻薬が残っていたのか?
「ひぃやあぁぁぁ!!!」
まるであの時と同じ。
彼が壊れた時と同じ!!
私の中のトラウマが蘇る。
助けたい。
でも、助けれない。
私の無力…。
あの時と同じ。
私は彼に何もしてやることができないのか!?