恐怖
「んっ…。」
目が覚めた。
今、何時だ?
…三時か。
少し早く起きてしまったな…。
どうするか…。
ふと、自分の腕の中にいる彼を見た。
可愛い寝顔…。
やはり、美しい。
目元に何かが光ってるように見えた。
…涙?
泣いているのか?
「へっ?」
突然、彼が私に抱きついてきた。
…震えてる?
「ごめん、なさい。」
「えっ?」
「ごめ、ん、なさ、い。」
彼が謝っている。
…なぜ?
まさか、夢であの時のことを見てるのか?
「こ、わ、いぃ。」
彼の抱きしめる力が強くなった。
少し痛い。
何がだ?
何が怖いんだ?
彼は一体、何に怖がっている?
私は彼の背中をさすりながら、こう言った。
「大丈夫だ。大丈夫だから…。私が付いてる。だから、安心しろ。怖いものなんて何もない。私が守ってやる。」
彼は寝ていて、聞こえない筈だったが…。
抱きしめる力が弱まった。
少しして、過呼吸気味だったのが、すぅすぅとテンポのいい寝息をたてている。
「ふぅ。」
私は安堵して、流れている彼の涙を舐めた。
少ししょっぱかった。
「おはよう。」
「おはよう、ございます。」
しばらく時間がたって、彼が起きた。
「よし、ご飯食べるか…。」
「あ、はい。」
昨日と同じく、彼をお姫様だっこをして、椅子に座らせる。
昨日と同じように、ご飯を食べさせる。
彼を着替えさせる。
また、今日も一日が始まる。
できれば、いい日になるといいなと思いながら…。