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暗雲

「あの、一緒にお風呂入るんですか?」


「あぁ、そうだな。」


「うぅ。」


「まぁ、仕方ないだろう。君は一人にする訳にもいかないしな。」


「は、恥ずかしくないんですか?」


「いや、毎日だったからな。そういう気持ちはない。」


「………。」


「さぁ、行こうか。」


彼をお姫様だっこをして、風呂場へ…。


「あ、あの、目隠しとかありますか?」


「残念ながらない。」


「………。」


今度こそ風呂場へ。



彼の服を脱がしていく。

椅子に座っている彼は顔を真っ赤にしながら、その様子を見ている。


「あ、の、やっぱり、恥ずかしいです。」


「大丈夫だ。心配するな。襲ったりはしないよ。」


「そういう問題じゃ…。」


彼の言葉が途中で止まった。


「どうした?」


気になって、彼を見る。


彼の視線は鏡の方に向いていた。


右手で自分の顔を触っている。


「これが、僕の顔なんですね…。」


「あ、あぁ、どうした?」


「こんなこと言うと、自慢みたいですけど、綺麗だなって思ってしまいました。」


「当然だ。君は綺麗なんだよ。だから自信を持っておけ。」


「自信、ですか…。僕から見たら、この顔は他人の顔っていう感じがするんですよ。」


彼は続けて、こう言った。


「まるで、僕の存在が肯定されてないみたい…。」


「君の存在が肯定されてない、だと?」


「目覚めて、まだ一日目ですけど、わかるんです。皆、今の僕じゃなくて、昔の僕を見てる…。」


「………。」


「自分のことなのに、僕は何も知らないんですよね…。どんな性格だったんだろうとかどんな風に皆と接していたのかとか、昔の僕がどんな感じだったのか…。」


「今の君でいいよ。昔なんて考えなくていい。」


私は焦った。

彼が昔の自分を知りたがっている。


それは駄目だ。

あんなことは思い出さなくていい。


「…僕は、僕でありたいんですよ。」


「………。」


何も言えなかった。

彼の不安は大きなものだから…。

自分のことを知らないのは苦痛だろうから…。


でも、思い出さないでほしい。


今の君でいいから…。

今の君がいいから…。


だから、そんな悲しいことを言わないでくれ…。


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