混沌
放課後…。
彼と私は途方に暮れていた。
雨が降っていたのだ。
「どうするんですか?傘、持ってきてないですよね…。」
「あぁ、すまない。今日はバタバタしていて、予報を見るのを忘れていた…。」
「………。」
「し、仕方ないだろう。き、君が急に目覚めてしまうから…。」
「…すいません。」
「い、いや、君のせいという訳じゃなくてな…。」
「お嬢様、お迎えにあがりました。」
「ご苦労様です。」
…あの女、いつの間に執事なんて呼んでいたんだ?
「あら、帰らないのですか?」
「「………。」」
「あぁ、傘を忘れたのですね。…乗りますか?」
「お前の手助けなどいらない!」
「えっ?乗せてもらった方がいいんじゃないですか?」
あの女の車に乗ってみろ、確実に彼ごと誘拐される…。
ここは絶対に乗らない方がいい。
「いや、私が車を呼ぶから問題はない。」
最初からそうすれば良かった…。
「あら、そうですか?それでは、また明日。」
「さようなら。」
「………。」
案外、あっさり退いたな…。
本当に改心したのだろうか?
いや、これもあの女の策略かもしれない…。
家に到着した…。
「帰りました。」
彼は律儀に言う。
「ふぅ。」
今日はすごく疲れた。
彼が目覚めたのは嬉しいが…。
あの女が帰ってきた。
昔、私達は友達だったのに…。
一体、いつから彼の取り合いになっていたのだろう?
最初からか…。
私もあの女も、彼と遊びたくて、独占したくて…。
彼を引っ張りあいもしたな…。
最終的に彼が痛がって、泣いたんだったな…。
…今はもう昔の話だ。
彼は渡さない。
誰にも…。