表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/31

最悪

「紅葉が綺麗だな。」


昨日言った台詞をまた言う。


「そ、そうですね。綺麗だと思います。」


昨日までと違うことは彼が返答してくれること。


「まぁ、君の方が美しいがな。」


こうやってからかうこともできる。


「ふぇ?あ、ありがとうございます。」


それに対する反応がやはり可愛い。

顔を真っ赤にするところを見るなんて本当に久しぶりだ。



こんなやりとりをしている間に学校が見えてきた。


「ほら、あれが私たちの学校だ。」


「お、大きいですね。」


「そうか?私の本家よりかは小さいが…。」


「……あれよりも大きいってどういうことですか…。」


「金持ちだからな。」


「…忘れてました。」



そんなやりとりをしている間に校門前。


待っていた先生がこちらにやってきた。


「あの人、誰ですか?」


と彼が問う。


「あの学校の中で一番信頼できる先生、だな。階段を上がる時などに手伝ってもらっている。」


「へぇー。君に一番信頼できる先生と言われるなんて嬉しいな。」


いつの間にか、目の前まで来ていた。


「本当のことですよ。」


「…そんなことよりも、目覚めたのかい、彼は?」


「あっ、お世話になってます。」


「あぁ、別に構わない。しかし、驚いたな…。昨日まで本当は人形なんじゃないのか?と疑っていたが…。」


「先生、ちょっと話があるので来てください。」


先生を連れて、少し彼から遠ざかり、彼の現状を伝える。


先生は少し驚いた顔をしたが、すぐに真剣な顔になった。


「そうか。記憶喪失か…。」


「はい。少し予想外なことです。」


「だが、君にとっては好都合じゃないのか?彼は覚えてない方がいいと思うが…。」


「まぁ、確かにそうですね。ですから、彼の記憶を刺激させるようなものをできるだけ隠しておきたいのです。」


「それで、俺が先に先生方に伝えておいてほしいということか…。」


「はい。お願いします。」


「あぁ、わかった。」


よし。これでいい。

と思って振り返れば…。


…彼がいない。

どういうことだ?


「わっわっわ!」


彼の声が聞こえた。

そちらの方を向いてみると…。


彼の車椅子がもうスピードで坂を下っていた。


サイドブレーキを入れるのを忘れていた!!


私も駆け出した。


くっ!

手遅れか?


と思いながら走る。


追いつけない。

距離が開いていく。


もう坂が終わってしまう!

と思った時に彼の車椅子が動きを止めた。


誰かが止めてくれた。


やっと追いつき、息も絶え絶えでその止めてくれた人に…。


「ありが、とう、ござ、います。」


と礼を言った。


「いえいえ。気をつけてくださいよ。彼が怪我してしまったら困りますからね。」


聞き覚えのある声…。


私ははっとしてその声の持ち主の顔を見た。


それは…。



あの女だった…。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ