膠着
「く、口移しですか…。」
顔を伏せて彼が言う。
耳まで赤くなってる…。
「そ、そんなショックか?」
そう言った瞬間、顔を上げた。
まだ真っ赤な顔だけど…。
「い、いえ。す、少しびっくりしただけで…。い、嫌という訳では…。」
なんだ、この生物は…。
なんだか苛めたくなってきた…。
「そうか…。そんなにショックだったか…。」
「い、いえ。う、嬉しいです…。あ、貴女のような綺麗な人に口移しで食べさてもらえてたなんて…。」
「じゃあ、してやろうか?今…。」
間髪入れず問う。
「ふぇ?」
「今してやろうか?く・ち・う・つ・し。」
ボンと真っ赤になり、彼はヘナヘナと机に突っ伏した。
い、苛めすぎたか?
罪悪感を感じる…。
あっ、復活した。
「せ、せめてあーんとかにしてください!」
あーんならいいのか?
とツッコミかけた。
まぁ、結果としてあーんで食べさした。
その時の彼はとても可愛いかった。
「それでは学校に行くか…。」
よく考えたらこんな時間になってる…。
「あっ、そうですね。いってらっしゃい。」
「何を言ってるんだ?君も行くんだぞ?今までそうしてきたしな。」
「へっ?植物人間状態だったのに行ってたんですか!?」
何かおかしなことを言ったか?
「あぁ、私が連れていっていた。」
「……なぜですか?」
愚問だな…。
「君が学校というキーワードで治るかもしれないと思っていたからだ。まぁ、実際、時間が経てば治るものだったみたいだが…。」
こうやって話すことまでできてるしな…。
「……今さらですけど、普通、僕って病院にいるものじゃないんですか?」
なんだ、そんなことか…。
「あぁ、それは病院を買収した。」
「…えっ?」
「私の親は金持ちだからな…。」
「初耳ですけど…。」
そういえば言ってなかったな…。
「まぁ、話してないからな…。そうだ、着替えをしなきゃな。」
楽しみを忘れていた。
「えっ?」
彼は固まった。