悲観
彼は悩んでいた。
なぜ視線が自分に向いているのかを。
彼は自分の美しさに気づいていないのだ。
誰よりも輝いているから人はそれを見たいと欲する。
あの女はたぶん、他の人間が彼を見るのが許せなかったんだと思う。
自分だけが独占したいと思い、歪んだ“愛”を彼に与えた。
しかし、彼が欲しいのはそんな形の“愛”ではない。
情欲でも独占欲でもない。
だから彼は欲しくもない“愛”を与えられて、パンクしたんだと思う。
彼は悩んだまま、その年の秋に消えた。
最初は疑問に思っていたが、病欠とのことだった。
お見舞いにと家に行ったが、誰もいなかった。
それはさすがにおかしいと思い、彼を捜索するが、証拠がないために難航してしまった。
それでやっとあの女の家にいるとわかったのは半年後だった。
遅かった。
結果、彼はパンクしていて、心を失った人形となってしまった。
水を与えられて続けたら花は枯れてしまう。
それと同じことが彼に起こったのだ。
…そうか。
今、私は気づいた。
たぶん今も彼は“愛”を欲しているのではないのか?
では親と同じように“愛”を与えれば…。
という考えに至ったわけだが…。
残念ながら彼は人形になっている。
認識できなければ意味がないではないか…。
それにこれは仮定であって確立したものではない。
私は嘆息した。
こんな長々しく過去を振り返り、現実逃避をしたところでやはり無意味なのだ。
また嘆息する。
仕方ない。
もう起きることにしよう。
とその前に…。
「おはよう。」
恒例となっている挨拶。
「…おはようございます。」
そして今日も彼は挨拶を返してくれるのだ。
あぁ、なんと幸せなことか……えっ?
「えぇぇぇええぇえ!??」
私の絶叫が全世界に響いた。
“彼”が目覚めました。
急展開ですよね。
まぁ、これからどんどん書き方が変わっていくと思います。
感想など、お待ちしております。