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第9話 自称ライバル? いいえ、500万円です

ライバル「俺と勝負しろ! 負けたら凛に近づくな!」

主人公「(時給が発生しないなら帰りたいなぁ……)」

ライバル「賞金出すぞ」

主人公「喜んで!!」

 学食での「お弁当テロ」から逃げ出し、俺は人気のない校舎裏へと避難していた。

 凛は「講義があるので!」と満足げに去っていったが、残された俺の立場はどうなる。

 明日から変装用のサングラスが必要かもしれない。

「……おい、待てよ」

 溜息をついた俺の背中に、ドスの利いた声が掛かる。

 振り返ると、そこには金髪をオールバックにした、いかにもキザな男が立っていた。

 取り巻きらしき男子学生を数名引き連れている。

 誰だ?

 俺に借金の取り立てに来るような知り合いはいないはずだが。

「無視してんじゃねえぞ。テメェだろ? 凛をたぶらかしてる『詐欺師』ってのは」

 男が俺の胸ぐらを掴もうと手を伸ばしてくる。

 俺は半歩下がってそれを避けた。

 作業着が汚れる。

「誰ですか? 人違いだと思いますが」

「とぼけんじゃねえ! さっき食堂で凛に弁当を食わせてもらってただろ!」

 見てたのか。暇だなコイツ。

「俺の名は剣崎レオ(けんざき・れお)。Sランク探索者『雷帝』と言えば分かるだろう?」

 男がバサァッ、と着ていたジャケットを翻す。

 その下には、オーダーメイドの高そうな戦闘服が見えた。

 剣崎レオ。

 ああ、聞いたことはある。若手No.2の実力者で、凛のライバルとされている男だ。メディアへの露出も多く、確か凛に一方的に好意を寄せていたはずだ。

 つまり、ただの嫉妬か。

「で、その雷帝様がFランクの俺に何の用で?」

「決まってんだろ。凛から離れろ」

 剣崎は俺を睨みつける。

「凛はピュアだ。お前みたいな、得体の知れないペテン師に騙されているだけだ。映像を見たが、あんな『消滅』なんてスキル、存在するわけがねぇ。どうせCGかトリックだろ?」

 なるほど。

 世間では俺の力は「未知の強さ」として話題だが、同業者プロから見れば「ありえない詐欺」に見えるわけか。

 まあ、その方が好都合だ。

「そうですね。あれは全部手品です。だから放っておいてくれませんか」

「……あ?」

「俺は凛……如月さんとはただのビジネスパートナーです。貴方が心配するような関係じゃありません」

 俺は踵を返した。

 こんな手合いと関わっても一円にもならない。時間の無駄だ。

「逃げるのかよ!」

 背後で剣崎が叫ぶ。

「やっぱり偽物か! 凛もガッカリだぜ、こんな腰抜けを師匠なんて呼んで!」

「何とでも言え」

「だったら証明してみろよ! 俺と『決闘デュエル』してな!」

 決闘。

 探索者同士が、ギルド公認の闘技場で戦うシステムだ。

 だが、俺の足は止まらない。

「断る。メリットがない」

「チッ、金か? だったら賭けてやるよ」

 剣崎が懐から小切手帳を取り出した。

「勝負して俺が勝ったら、二度と凛に近づくな。もし万が一、お前が勝ったら……賞金として五百万円払ってやる」

 ピタリ。

 俺の足が止まった。

「……今、なんて?」

「あ? だから五百万……」

「税込みか?」

「は? て、手取りでいいよ!」

 俺は回れ右をして、満面の笑みで剣崎の手を握った。

「交渉成立です、お客様」

「えっ」

「その決闘、お引き受けいたします。場所と時間は?」

「お、おう……? じゃあ今すぐ、大学の演習場だ!」

 剣崎が少し引いている。

 無理もない。さっきまで無気力だった男が、金の話になった途端に営業スマイルになったのだから。

 五百万。

 時給換算で何時間分だ? 計算するのも馬鹿らしいほどの巨額だ。

 たった数分、この騒がしい男の相手をするだけでそれが手に入る。

 俺は剣崎の背中を見ながら、こっそりとスキルを発動する準備をした。

(……悪いな、雷帝)

 俺の目には、もうお前が『金ヅル』兼『粗大ゴミ』にしか見えていない。

          ◇

**【大学内掲示板】**

:おいヤバいぞ!

:演習場に剣崎レオがいる!

:相手は誰だ?

:あの「インベーダー」らしいぞ!

:【速報】Sランク雷帝 vs Fランク掃除屋、決闘決定!!

:これは熱いwww

:剣崎のやつ、公開処刑にする気満々だな

:インベーダーの化けの皮が剥がれるか、それとも……?

Sランク(かませ犬)の登場です。

次回、決闘開始。

雷の速さが勝つか、掃除の速さが勝つか。

(※主人公は五百万円のことしか考えていません)

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