第8話 ファンクラブ? いや、会員番号1番がSランクなのはおかしいだろ
友人「インベーダーのファンクラブができたらしいぞ」
主人公「へえ、物好きな連中もいるもんだな」
友人「会長は『銀髪の女神』らしい」
主人公「……(嫌な予感)」
週明けのキャンパスは、異様な熱気に包まれていた。
「おい見たか? インベーダーの新規映像!」
「Cランクボスが一瞬で消えたやつだろ? マジで神!」
「ギルドも公式に見解出したらしいぞ。『正体不明だが敵対の意思なし』だって」
どこもかしこもインベーダーの話ばかりだ。
俺はキャップを目深に被り、気配を殺して学食へと向かった。
いつもの「陰キャの指定席」で、三百円のカレーを食べる。これが俺のささやかな幸せだ。
だが、向かいに座った山下が、その平穏をブチ壊してくれた。
「なあ相馬! ついに出来たぞ!」
「何がだ」
「『インベーダー非公式ファンクラブ』だよ!」
ブッ、とカレーを吹き出しそうになった。
「……なんだそりゃ」
「SNSで立ち上がったコミュニティだよ。開設からたった一日で会員数三万人突破! すげぇ勢いなんだ!」
山下がスマホの画面を見せてくる。
そこには『人類最強の掃除屋を応援する会』というダサいタイトルのサイトが表示されていた。
「しかも見てくれよ、この会員番号1番! ハンドルネーム『弟子入り希望ちゃん』!」
「……」
「この人がまた凄いんだよ。インベーダーの最新情報をどこよりも早くアップするし、考察も的確なんだ。正体は探索者業界の重鎮じゃないかって噂だぜ」
俺は遠い目をした。
『弟子入り希望ちゃん』。
そのアイコン画像が、見覚えのある「銀色のレイピア」だったからだ。
(……あいつ、暇なのか?)
Sランク探索者ってのはもっとこう、世界の危機を救うとかで忙しいんじゃないのか。
「おーい、相馬くーん!」
その時。
学食の入り口から、聞き覚えのある鈴のような声が響いた。
一瞬で、騒がしかった学食が静まり返る。
そこに立っていたのは、銀髪をなびかせた如月凛だった。
しかも今日は、いつもの装備や清楚な私服ではない。
フリルのついたエプロン姿だった。
「は……?」
学生たちがフォークを落として固まる中、彼女は一直線に俺のテーブルへとやってきた。
「見つけました! もう、食堂にいるなら連絡してくださいよ」
「……なんでお前がここにいる」
「師匠の健康管理も弟子の務めですから!」
彼女はそう言うと、持っていた大きな包みをドサリと机に置いた。
三段重ねの重箱だ。
「ジャーン! 手作りお弁当です! 最高級オーク肉のハンバーグと、ダンジョン産トマトのサラダ、あと回復効果のある薬草茶も用意しました!」
パカッ、と蓋が開けられる。
黄金色に輝くおかずたちが、俺の三百円カレーを嘲笑うかのように鎮座していた。
ザワッ……!!
周囲の空気が変わる。
「おい……嘘だろ?」
「如月凛が、男に弁当を?」
「しかもエプロン姿……手作り……」
「あいつ誰だよ!? なんで凛ちゃんに餌付けされてんだ!?」
殺気。
ギルドの査問会よりも重いプレッシャーが、俺に突き刺さる。
「……凛、しまえ」
「えっ? お口に合いませんか? あ、もしかして『あーん』待ちですか!?」
「違う! 目立つからやめろと言ってるんだ!」
だが、彼女は止まらない。
箸でハンバーグを摘まむと、キラキラした笑顔で突き出してくる。
「はい、師匠! あーん!」
終わった。
俺の「モブとしての平穏な大学生活」が、音を立てて崩れ去った。
隣で山下が、白目を剥いて気絶している。
周囲の男子学生たちが、スマホを取り出し、「相馬透」という名前を検索し始めている。
俺は悟った。
ダンジョンのモンスターよりも、Sランクのヒロインの方が、よほど「災害」に近いのだと。
この日を境に、俺は大学内で『Sランクのヒモ』『前世で国を救った男』と呼ばれることになるのだが――
それはまた、別の話だ。
◇
**【ファンクラブ掲示板(会員限定)】**
No.1 弟子入り希望ちゃん(管理人):
【速報】師匠にお弁当を食べていただきました!
「目立つ」と照れていらっしゃいましたが、完食です!
やはり師匠はツンデレですね!
No.2 名無し会員:
管理人さん何者だよwww
師匠って誰? インベーダーのこと?
No.3 特定班:
待て。今SNSで「如月凛が大学で男に弁当食わせてる」って目撃情報があるんだが。
もしかして管理人=如月凛?
そして師匠=その男=インベーダー?
No.1 弟子入り希望ちゃん:
あ。
ヒロイン、自爆しました。
ネットの特定班を甘く見てはいけません。
これにて第1章(日常崩壊編)は終了でしょうか。
明日からはペースを落として更新していきます!(作者のSAN値回復のため)
ブックマーク、【☆☆☆☆☆】評価がまだの方は、このタイミングでポチッとしていただけると嬉しいです!




