表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/20

第15話 世界を滅ぼす鍵? 汚いので洗濯機で洗っときます

政府「ダンジョンの『核』が見当たらない! どこへ消えた!?」

透「作業着と一緒に洗っちゃったけど、大丈夫かな」

とんでもないものを拾って帰りました。

 S級ダンジョンの「大掃除」を終えた俺は、地上に戻って撤収作業を行っていた。

 広場には自衛隊や政府関係者が溢れ返り、まるでお祭り騒ぎだ。

「相馬様! 素晴らしい戦果でした!」

「握手してください!」

 興奮した様子で駆け寄ってくる人々を適当にあしらいながら、俺はこっそりとため息をつく。

 疲れた。

 これだけの規模の掃除だ、流石に肩が凝る。

 早く帰って風呂に入りたい。

(……ん? なんだこれ)

 作業着のポケットに手を入れると、指先に硬い感触があった。

 取り出してみると、それは手のひらサイズの「黒い立方体」だった。

 表面には血管のような赤いラインが走り、ドクン、ドクンと不気味に脈打っている。

「いつの間に……?」

 さっき空中で結界を拭き取った時に、紛れ込んだのだろうか。

 俺はそれを光に透かして見てみる。

【対象をスキャン中……】

【名称:魔界のダンジョン・コア

【危険度:測定不能(世界崩壊クラス)】

【判定:産業廃棄物】

 うわ、なんかヤバそうなのが出た。

 産業廃棄物。つまり、処理に金がかかる一番面倒なゴミだ。

「……見なかったことにしよう」

 俺はそっとポケットに戻した。

 こんなのを行政に渡したら、「どこで拾った」「書類を書け」「保管料を払え」と面倒な手続きをさせられるに決まっている。

 後で燃えないゴミの日に、こっそり捨てればいいだろう。

「相馬君!」

 そこへ、血相を変えた氷室室長が走ってきた。

 いつもの冷静な彼女らしくない、焦った表情だ。

「お疲れ様。……ところで、何か『変わったもの』を見なかった?」

「変わったもの?」

「ええ。ダンジョンの『コア』よ。ゲートを維持していたエネルギー源が見当たらないの。あれがないと、ゲートが自然消滅してしまうわ」

「ああ、そうなんですか」

 俺はポケットの上から、黒い立方体をぎゅっと握った。

 ……これのことか?

 だが、今さら「持ってました」なんて言えば、ネコババしようとしたと思われるかもしれない。

 それに、あんな汚いゴミを渡したら失礼だ。

「いやぁ、見てませんね。洗剤で一緒に溶けちゃったんじゃないですか?」

「そ、そんな……。貴重なサンプルが……」

「それより室長、報酬の振込、早めにお願いしますね」

 俺は話を強引に切り上げると、送迎車に乗り込んだ。

 去り際、背後でゲートがシュンと音を立てて消滅するのが見えた。

 どうやら、このゴミ(コア)を持ち出したせいでダンジョン自体が消えてしまったらしい。

 まあ、掃除の手間が省けてよかった。

          ◇

 帰宅後。

 俺はアパートの洗面所に立っていた。

「汚ねぇな、これ」

 ポケットから出した「黒い立方体」は、ヘドロのような粘液でベトベトしていた。

 素手で触るのも躊躇われる。

 俺は蛇口をひねり、ハンドソープをつけてゴシゴシと洗い始めた。

『ギ……ギギ……ッ!?』

 ん?

 なんか今、悲鳴みたいな音が聞こえたような。

 気のせいか。

 俺は構わずタワシで擦る。

『ヤ、ヤメロ……! 貴様、我ヲ洗ウ気カ……!?』

 ……喋った。

 俺は手を止めて、泡だらけになった立方体を見つめる。

「おい、今喋ったか?」

『フハハ! イカにも! 我ハ深淵ノ王、混沌ヲ統べるモノ……プハッ!? 泡ガ、目ニ沁ミル!』

 どうやら、相当高機能なAI搭載スピーカーらしい。

 最近の落とし物はハイテクだな。

「うるさい。今洗ってるんだから静かにしろ」

『貴様、我ニ向カッテ命令ヲ……グボァッ! 水ヲカケルナ! 我ハ水ニ弱イノダ!』

「知るか。綺麗になるまで漬け置きだ」

 俺は洗面器に水を張り、漂白剤をドボドボと注いで、その中に立方体を放り込んだ。

『ギャアアアアアッ! 沁ミルゥゥゥ! 貴様、覚エテオレ……ボコボコボコ……』

 沈んでいった。

 しばらくすれば大人しくなるだろう。

 俺は満足して、夕飯の準備に取り掛かった。

 まさかその「ゴミ」が、世界中の裏組織が狙う『魔王の心臓』だとは、知る由もなく。

          ◇

**【裏社会のダークウェブ】**

:【急募】新宿ダンジョンの「コア」

:報酬:100億円

:政府が確保に失敗したらしい。

:誰かが持ち去った可能性が高い。

:見つけ次第、奪い取れ。所持者は殺しても構わん。

Q:魔王の心臓を手に入れました。どうすればいいですか?

A:まずはハイターで消毒しましょう。

主人公、とんでもないものを拾ってしまいました。

次回、漂白された魔王(?)との奇妙な同居生活、あるいは世界中の暗殺者に狙われる日常が始まります。

面白い!続きが気になる!と思ったら、ブックマークと【☆☆☆☆☆】評価をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ