第14話 S級の大量発生? くん煙剤で一発ですね
防衛省「総員、対空戦闘用意! 撃てぇぇぇ!」
透「窓閉めてください。煙焚くんで」
新宿の空で、大規模な害虫駆除が始まります。
直後、新宿の空が悲鳴で埋め尽くされた。
「ギョオオオオオオオッ!!」
開かれたゲートの奥から溢れ出したのは、翼を持った異形の群れだった。
ガーゴイル、ワイバーン、そして最奥にはドラゴンのごとき巨影も見え隠れしている。
その数、数千。
S級ダンジョンに巣食っていた魔物の大群が、餌を求めて一斉に地上へ雪崩れ込んできたのだ。
『ひ、被害甚大! 迎撃ミサイルが効きません!』
『数が多すぎる! このままでは地上が火の海に……!』
インカムから絶望的な報告が響く。
地上では自衛隊が対空砲火を浴びせているが、S級モンスターの硬い皮膚には豆鉄砲も同然だ。
「相馬君! 撤退して! これだけの数は君一人じゃ――」
氷室室長が叫ぶ。
だが、俺はヘリのハッチから身を乗り出したまま、冷静にその「害虫」の群れを見つめていた。
「撤退? 何言ってるんですか」
俺はポケットから、新しい軍手を取り出して装着する。
「換気扇のカバー外したら、虫が湧いて出てくるなんて想定内でしょう。ここで逃げたら部屋(東京)中に散らばって、余計に面倒なことになりますよ」
害虫駆除の鉄則。
それは「拡散させない」ことだ。
元を断つなら、巣穴が開いたこの瞬間こそが絶好のチャンス。
「ヘリの窓、閉めておいてくださいね。ちょっと煙たいんで」
『は? 煙……?』
俺は右手を空高く掲げた。
イメージするのは、部屋の隅々まで行き渡る、あの強力な「くん煙剤」だ。
成分は、魔力そのものを中和し、強制的に活動を停止させる鎮静化ガス。
【対象をロック。種別:特定外来生物(多数)】
【広域駆除を開始します】
「――『空間燻蒸』」
プシュッ。
俺の指先から、白い霧のような魔力が爆発的に噴き出した。
それは風に乗ることもなく、意志を持った生き物のように瞬く間に空を覆い尽くしていく。
新宿上空が、真っ白な霧に包まれた。
「ギョ、ギョエ……?」
先頭を飛んでいたワイバーンが、霧を吸い込んだ瞬間、痙攣して白目を剥いた。
翼の力が抜け、石のように落下していく。
一匹だけではない。
十匹、百匹、千匹。
ボトボトボトボトッ!!
まるで空から雨が降るように、S級モンスターたちが次々と墜落していく。
断末魔の叫びすらない。
ただ、殺虫剤を浴びた虫のように、ポロポロと落ちていくだけだ。
『な……っ!?』
『全滅……!? あの大群が、霧に触れただけで!?』
モニター越しに見ている政府高官たちが絶句しているのが分かる。
数分後。
空を埋め尽くしていた脅威は、一匹残らず新宿中央公園の広場に積み重なっていた。
ピクピクと痙攣しているが、もう起き上がる力はないだろう。
「ふぅ。換気完了」
俺は空気を入れ替えるように手を振った。
霧が晴れ、再び青空が戻ってくる。
「室長、駆除終わりました。下の広場に集めておいたんで、あとは自衛隊の方で焼却処分(ゴミ出し)お願いします」
『……』
返事がない。
どうやら、あまりの手際の良さに言葉を失っているようだ。
「あ、そうだ」
『な、なによ……まだ何かあるの?』
「今回の経費に、くん煙剤代も上乗せしておいてください。業務用なんで高いんですよこれ」
俺が悪びれもせず請求すると、インカムの向こうで誰かが倒れる音がした。
◇
**【SNSのトレンド】**
1位:インベーダー
2位:害虫駆除
3位:新宿の空からモンスター
4位:バルサン
@現場の自衛官
目の前でワイバーンの山ができた……。
俺たちの対空ミサイルは何だったんだ。
あの白い霧、なんの成分?
@化学マニア
映像解析したけど、毒ガスじゃないっぽい。
魔力そのものを「無害化」する成分?
そんなの現代科学じゃ作れないぞ。
@インベーダー信者
結論:インベーダーさんにとって、S級モンスターは「コバエ」と同義。
スプレーひと吹きで解決。
@弟子入り希望ちゃん(凛)
師匠! その殺虫テクニック、今度私の家でもやってください!
(※文脈がおかしい)
Q:数千体のドラゴンをどうやって倒したんですか?
A:バルサン焚いたら落ちました。
これにて「新宿上空・大掃除編」は完結です。
日本政府も、もう彼をただの清掃員として扱うことはできないでしょう。
(本人はバイト感覚ですが)
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