第11話 Sランクの雷使い? ああ、ただの急速充電器ですね
剣崎「兄貴! 一生ついていきます!」
透「ついてくるな。静電気がうっとうしい」
500万払った上に、パシリになった男の話です。
決闘から数日後。
俺の口座には、約束通り五百万円が振り込まれていた。
学費を払い、欲しかった高性能なパソコンを買い、高級焼肉を食べてもまだ余る。
最高だ。
これで当分、危険なダンジョン清掃をしなくても生きていける。
俺はキャンパスのベンチで、優雅に缶コーヒーを飲んでいた。
「――兄貴ッ!!」
その至福の時間を、暑苦しい怒号が切り裂いた。
ズザザザッ!
砂利を蹴立ててスライディング土下座をしてきたのは、金髪オールバックの男。
先日、俺がカツアゲ……いや、正当な勝負で賞金を頂いた、雷帝こと剣崎レオだ。
「おはようございます、兄貴! 今日もいい天気ですね!」
「……誰が兄貴だ」
「へっ、とぼけないでくださいよ! あの魔法消滅を見せられて、惚れない男はいませんよ!」
剣崎はキラキラした目で俺を見上げてくる。
どうやらコイツ、完敗したショックで頭の配線がショートしたらしい。
以前のキザな態度はどこへやら、完全に「地元のヤンキーの後輩」みたいなノリになっている。
「頼みます! 俺にもあの『魔法消し』の極意を教えてください!」
「無理だ」
「そこをなんとか! 靴でも舐めましょうか!?」
「汚いからやめろ」
俺が鬱陶しそうに追い払おうとしていると、横からもう一人、面倒なのが現れた。
「ちょっと剣崎! 師匠の邪魔をしないでよ!」
銀髪をなびかせた如月凛だ。
彼女は剣崎を見るなり、フンと鼻を鳴らした。
「新入りの分際で、師匠の隣を確保しようだなんて百年早いわ。一番弟子はこの私なんだから」
「あ? うっせえぞ凛! 俺は兄貴の魂に惹かれたんだよ! 弟子とか関係ねぇ、俺は『舎弟』だ!」
弟子とか舎弟とか、俺の許可なく派閥を作るな。
Sランク探索者が二人。キャンパスの真ん中でギャーギャーと騒いでいる。
目立つ。あまりにも目立つ。
「はぁ……」
俺は溜息をついて、ポケットからスマホを取り出した。
時間を確認して、そろそろ帰ろうと思ったのだが――
「あ、充電切れてる」
昨晩、動画を見過ぎて充電するのを忘れていたらしい。画面が真っ暗だ。
これじゃ電子マネーが使えない。帰りの電車賃が払えないじゃないか。
「チッ、モバイルバッテリー忘れたな……」
俺が独り言ちると、剣崎がピクンと反応した。
「兄貴? どうかしましたか?」
「ああ、スマホの充電がなくてな」
「なーんだ、そんなことですか! 俺に任せてください!」
剣崎はニカっと笑うと、人差し指を立てた。
バチバチッ!
指先に微弱な電気が走る。
「俺の雷魔法なら、電圧調整もお手の物っスよ! 貸してください!」
「……壊すなよ?」
俺はおそるおそるスマホを渡した。
剣崎は充電端子に指を押し当てると、器用に魔力を流し込む。
バチッ。
フォーン……。
数秒後。スマホの画面が点灯し、バッテリー表示が100%になった。
「へい、お待ちどう様です! 急速充電完了!」
「おお」
俺は素直に感心した。
こいつ、意外と使えるじゃないか。
ダンジョン内では電源の確保が難しい。こいつがいれば、スマホもライトも使い放題だ。
「よくやった。お前、いい『ポータブル電源』になれるな」
「……え? 電源?」
「ああ。これからも充電が必要な時は頼むわ」
俺が肩をポンと叩くと、剣崎は感極まったように震え出した。
「あ、兄貴に……褒められた……! 聞いたか凛! 俺は兄貴の役に立ったぞ!!」
「くっ、卑怯よ! 私だって、私だって師匠の肩揉みくらいできるわよ!」
「ハッ、俺は『インフラ』として認められたんだよ! 格が違うぜ!」
Sランク「雷帝」。
世間では恐れられる最強の探索者が、ただの「充電器」扱いされて喜んでいる。
どうやらこの大学の偏差値は、俺が思っているより低いのかもしれない。
まあいい。
使えるものはゴミでも使う。それが清掃員の流儀だ。
俺はフル充電されたスマホをポケットにしまい、二人のSランク(従者)を引き連れて学食へと向かった。
◇
**【SNSの反応】**
@大学内の目撃者
速報。剣崎レオ、インベーダーのスマホを充電させられる。
@雷帝ファン
嘘だろ……あの雷魔法を、そんな雑用に使ってるの?
国家予算レベルの無駄遣いじゃん。
@インベーダー信者
インベーダー氏にとっては、Sランクも「家電」扱いなんだろうな。
雷帝=充電器
凛ちゃん=……なんだ? 愛玩動物?
@弟子入り希望ちゃん(凛)
違います! 私は一番弟子兼、お世話係です!
(※必死の書き込み)
Q:雷帝の正しい使い方は?
A:災害時の非常用電源としてご活用ください。
これで主人公パーティー(?)が3人になりました。
掃除屋、アイドル、充電器。
……バランス悪すぎませんかね?
次回、そんな凸凹トリオに、政府からの緊急要請が届きます。
いよいよ物語のスケールが大きくなってきますよ!
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