第10話 必殺技? 眩しいので消しておきますね
雷帝「轟け、雷鳴ッ!!」
透「電気の無駄遣いはやめましょう」
時給換算1億円のバイト(決闘)、開始です。
大学の演習場は、異様な熱気に包まれていた。
観客席には、噂を聞きつけた学生たちが鈴なりになっている。
SNSでの拡散力は凄まじい。もはや全校生徒が集まったんじゃないかという騒ぎだ。
「おい見ろ、剣崎だ!」
「相手はあの作業着の男か?」
「瞬殺されるんじゃねえの……」
フィールドの中央。
剣崎レオは、バチバチと身体から紫電を迸らせていた。
Sランクスキル『雷帝の威圧』。
空気中の電子を操り、触れるものすべてを黒焦げにする攻防一体のオーラだ。
「へっ、逃げずに来たことは褒めてやるよ、掃除屋」
「早く始めましょう。俺、この後スーパーの特売に行きたいんで」
俺は棒立ちのまま答える。
装備はいつもの作業着と軍手だけ。
「ナメやがって……! その余裕、いつまで持つかな!」
「両者、構え!」
審判役の教官が手を挙げる。
剣崎が両手に膨大な魔力を集中させる。
「始めッ!!」
開始の合図と同時だった。
「消し飛べェェェッ! 『ヴォルティック・カノン』!!」
剣崎の両手から、直径一メートルほどの極太の雷撃が放たれた。
轟音と共に、空気が焦げる匂いが充満する。
直撃すれば人間など蒸発する威力。手加減なしの殺害予告だ。
「うわあああッ!?」
「死ぬぞあいつ!」
観客から悲鳴が上がる。
だが。
(……なんだ、この光)
俺の目には、それが「脅威」としては映らなかった。
ただ、視界を遮る「光害」に見えただけだ。
眩しい。
そして、うるさい。
近所迷惑な騒音と発光現象。
これは立派な環境汚染だ。
【対象をロック。種別:ノイズ、および光化学スモッグ】
【環境美化のため、消去します】
俺は迫りくる雷撃に向かって、軽く手を振った。
まるで、目の前の煙を払うように。
「――『消音』」
フッ。
音が消えた。
光が消えた。
世界を白く染め上げていた雷撃のエネルギーが、俺の手前一メートルで、蝋燭の火を吹き消したように消失した。
「……は?」
剣崎が間の抜けた声を出す。
放ったはずの必殺技が、何のエフェクトもなく「無」になったのだ。理解できるはずがない。
「な、なんだ今のは!? 俺の雷魔法だぞ!? 防御魔法ですらない、ただ手を振っただけで……!」
「眩しかったんで」
俺はスタスタと歩み寄る。
「く、来るな! 『ライトニング・スピア』! 『サンダー・ボルト』!」
剣崎が半狂乱になって魔法を乱射する。
雷の槍が、稲妻の矢が、雨あられと降り注ぐ。
だが、俺には当たらない。
俺に届く前に、すべて「処理」されているからだ。
「はい消去。これも消去。あ、それは燃えないゴミ」
俺は事務的に魔法を消しながら距離を詰める。
一歩、また一歩。
最強の雷使いが、後ずさりして顔を引きつらせる。
「ば、化け物かテメェは……ッ!」
「失礼な。清掃員だ」
俺は剣崎の目の前まで到達すると、右手を差し出した。
「ひいっ!? や、やめろ! 殺さないでくれ!」
「何を言ってるんだ?」
俺は不思議そうな顔で、手のひらをクイクイと動かした。
「五百万」
「……え?」
「勝ったらくれるんだろ? 五百万。早くくれ、帰るから」
剣崎は腰を抜かしてへたり込んだまま、ポカンと口を開けていた。
審判の教官も、観客たちも、誰一人として言葉を発せない。
圧倒的な蹂躙。
魔法を無効化するどころか、「なかったこと」にする異常性。
そして、勝利の余韻に浸ることもなく、即座に現金を要求する守銭奴ぶり。
「……しょ、勝者! 相馬透!!」
遅れて響いた審判の声に、会場が揺れるような歓声――ではなく、どよめきに包まれた。
こうして俺は、労働時間わずか三分で五百万円を手に入れた。
時給換算、一億円。
過去最高効率のバイトだった。
◇
**【SNSのトレンド】**
1位:インベーダー
2位:雷帝敗北
3位:魔法消滅
4位:時給1億円
@剣崎ファンクラブ
嘘でしょ……あのレオ様が、手も足も出ずに完封された……?
しかも相手、一歩も動いてないぞ。歩いただけだ。
@弟子入り希望ちゃん(凛)
見ましたか皆さん! あれが師匠の『魔法殺し(マジック・イーター)』です!
(※そんな技名はありません)
@一般通過学生
試合後の第一声が「五百万」でワロタ
この人、本当にお金のことしか考えてないんだなwww
Q:最強の雷魔法をどうやって防いだんですか?
A:テレビの電源を切る感覚で消しました。
500万円ゲットです。
これで当分、学費と食費には困りませんね!
(※なお、翌日から剣崎が「兄貴!」と呼んで付きまとってくるようになります)
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