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天の花  作者: 猫姫 花
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危機一髪


 九章 花葬 編



「近くを飛んでみようっ」


 居てもたってもいられなくなったシドは、中庭のドアを開けようとした。途端にゴロゴロ、と空が唸り声を上げる。

 ロビンはその音に顔を顰めた。


「ダメだよ。授業で習っただろ。何とか、っていうひとが空飛んでる間に雷に打たれたって―」


 シドは不貞腐れたように眉間を寄せ、クロトにカサを借りて外へ出た。雨は先程よりも激しくなっていて、表に出ている人影は見当たらなかった。シドは『アマンダ』とは反対方向、公園側に向って歩き出した。左に曲がろうとすると、何かが足元で光った。


「これは・・・」


 シドは石畳の隙間に針を見つけて、それを摘もうとしゃがみこんだ。しかし針に触れた途端、驚いて手を引いた。針の表面が凍っていることに気が付く。ルイカの針は独特な長さだ。これはルイカの針。きっとクリスタスノスで凍らせたのだろう。シドはルイカがそうする理由を考えて、辺りを見渡した。


「まさか・・・」


 シドは板チョコに似たドアを開け放ち、キッチンへと走った。驚いているロビンとクロトを見て、針を見せる。


「ルイカが・・・さらわれた・・・」


 ***


 ナイフが振り下ろされる瞬間、ルイカは大声で何かを叫んだ。咄嗟にナイフが止まり、サンズは顔を顰める。さるぐつわを取ると、ルイカは叫んだ。


「卑怯よっ。どうして殺されるか話してもらえない上に、最後の言葉も言わせてくれないなんてっ」


 サンズは瞬き、数秒沈黙をした。


「どうして殺されるか・・・?それはお前が、魔女だからだ」

「どうして魔女だと殺されないといけないのよっ。それに私は魔女じゃないわっ」

「うそをつくなっ。俺は見たんだっ。お前が空を飛んでいる所をっ。そして黒い魔物を視線だけで蹴散らすところもなっ」


 ルイカは顔を顰めた。

 ならばビジュブラを見つけた日に尾行していたのは、家の者ではなくてこの男―。


「だったらなんだって言うの・・・魔女は魔物とは違うわっ」

「魔女は悪魔だっ。悪魔と契り、邪悪な力を得る異端者だっ」


 ルイカは数秒押し黙り、はぁぁ、と大きな溜息を吐いた。


「まだそんな・・・昔のおとぎ話みたいな話しを信じてる人がいるなんて・・・浅はかもはなはだしいわ・・・確かに魔物も、悪魔も存在するわ。だからって、何でもかんでも魔女と結び付けないで欲しいわね。全ての魔女が悪魔から力を貰っているなんて、そんなことあるわけないでしょう。魔法使いの間でも、悪魔は嫌われものなのなのよ。契約する者なんてそうそういないわ」


 サンズは眉間を寄せ、ルイカはじっと見つめた。


「魔女が何をしたと言うの。私が何かした?人間界でおきた魔女狩りのほとんどが、ただの人間を魔女にしたてあげた政治宗教のご都合じゃないのっ。私だって、好きで魔女に生まれたわけじゃないわっ。あなたに殺される筋合いなんてないのよっ」


 サンズはさらに顔を顰め、無言のままルイカを見下ろした。


「・・・そうして、ミスター・ニローも騙されたんだろうな・・・しかし私は騙されないぞっ。神が言ったのだっ。お前は醜悪な匂いがする悪魔の使いだとっ」


「・・・神?」


「そう。私のマスターだ。彼が言ったのだっ。お前を殺せとっ。命令は絶対だっ。お前が何を言っても、お前の運命は変らないっ」


「なら・・・あなたの運命は?」

「なに?」


「あなたの運命は誰が定めたの?あなたが言う、その神様なの?」


 サンズは一瞬沈黙した。


「そうだ・・・私は神に選ばれし、特別な存在なんだ・・・」

「あなの神は、罪なき者を殺せと命じるの?」

「魔女は、総じて『罪』だ」

「私はただ、魔女として生まれてきただけなのに?私が生まれてきたことは、それだけで罪なの?」


 サンズは沈黙した。


「神が・・・神が定めたことに間違いは無いっ」

「ならば何故あなたの神は、罪が生まれてくることを定めたの?何故それを止めなかったのよ。何故自分で裁きを下さずに、あなたの手を汚させるの?」


「それはっ―・・・それはっ・・・」


 サンズは顔を俯け、髪を掻き毟るように頭を抱える。

 ルイカは金髪に隠れた顔半分を見て、目を見開いた。

 サンズははっとルイカを見て、後退りする。


「それは・・・あなたの神が・・・?」


「これはっ、これは選ばれし者の印だっ。決してっ・・・違うっ。私はっ・・・あの方は私をっ・・・違うっ、違うっっ」


 サンズは頭を抱え、何かわけの分からないことを叫びだした。


 ***


 サンズに気絶させられた時、ルイカは指輪の中に隠していた針を取り出し、凍らせた。それを意識がなくなる瞬間に道に捨て、味方の発見を願った。あとはただ、自分の運を信じるしかない。

 ルイカはサンズの異様な様子を窺いながら、何とか時間稼ぎの方法を考えた。


 ***

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