謎の留学制度
ガチャリとドアが開くと、クロトは三人が出て来たことに驚いた。
「そろそろ本当のことを、話してくれてもいいんじゃなくて?」
ルイカがクロトの横につくと、他の二人もソファのうしろに立った。
シドがクロトの肩を掴んで座らせると、ロビンがもう片方の肩に手を添えた。
「座っててね」
ルイカはお客三人を見据え、目を細める。
「DRK魔法学校、四年。ルイカと申します。こっちはシド。こっちはロビン。わけあってクロトさんの味方です。お見知りおきを」
「DRKって・・・あのっ、DRK?」
驚いている左側の男を見て、クロトはロビンを見上げた。
「そんなに有名なの?」
「らしいね」
「あっ。ロビニーア=コナーっ」
ロビンは片眉を上げ、マクドナルドの右側にいる男と目を合わせ、眉間を寄せた。
「誰?」
「君が施設に入る時に、担当した者だよ・・・」
「ふぅん?――じゃあ・・・僕の能力、分かってるよね・・・?」
ロビンが指を鳴らすと、手の上に炎が出現した。火柱が天井の辺りにまで伸びると、シドとルイカ以外の全員が身を竦める。
「な、なんで君達がっ――・・・ミスターっ。あなたはこの子達とどういう関係なんですかっ。あなたはっ。あなたもまさかっ―」
「ええ・・・」
クロトはやっと落ち着きを取り戻し、まっすぐと彼を見つめた。
「僕はウィタジィの血を引く者です」
お役人三人は、大きな溜息を吐いた。
「なんだ・・・ならばどうして、早めに言ってくれないんですか。そうすれば、こんな周りくどいことをしなくともよかったのに・・・」
意外な反応に拍子抜けして、クロトは破顔した。
マクドナルドは座り直す。
「ええ・・・ええ。その小さな魔女さん達とお知り合いなら、あなたの甥子さんのことも知っているのですね?ウィタジィだと?」
「ええ。最近知りました。会わせてください」
「それはできません」
クロトが眉間を寄せると、いったん収まっていたロビンの火柱が暴れ出した。
マクドナルドはソファの背に背中をぶつけた。
「わっ、わたしはっ・・・わたしにはどうすることもできませんっ。上の方からの指令で動いているんですっ。わたしが言えるのは、エリック君はもう人間界にはいない、ということだけですっ」
四人は息を飲んだ。
「「いないっ?」」
「え、ええ・・・エリック君はすでに人間界を離れ、魔法界に留学しているんです。彼は優秀でしたから、奨学生としてどこかの魔法学校に入ったとしかっ」
ロビンの炎が上がる。
「本当ですっ。資料にはそれだけしかなくてっ――あっっ」
シドがひったくるように資料を取ると、マクドナルドは声をあげた。
「勘弁して下さいよっ。それは秘密事項なんですよっ」
無視して資料に目を通したシドが、かぶりを振る。
「本当だ・・・学校名は書いていない」
「だから言ってるでしょうっ?上の指令なんですっ」
「上?上って誰のことです?」
マクドナルドは数秒の間を置いた。シドから資料を取り上げ、ケースへと戻す。鍵を閉めて側にいた男に渡すと、クロトを見た。
「ミスター。我々が役所に勤めている人間だ、ということがどういうことなのか・・・お考え下さい・・・」
クロトはだんだんと目を見開いていった。
「まさか役所が・・・政府は知っているのですねっ?ウィタジィの存在をっ?それで隠しているっ?」
「しっ」
マクドナルドは口に人差し指を立て、小さく頷いた。
「エリック君が入っていたあの園も、個人的なものでは――つまり、国立なのです・・・ミスター・・・これはあなたの個人的な意思で、どうにかなるような問題ではない。これは国家に関わる重大な秘密なのです。あなたと、あなたの甥子さんが幸せに暮らすためには、政府の庇護が必要なのですよ」
マクドナルドは立ち上がり、会釈した。
「わたくし共がご説明できるのは、残念ながらここまでです。どうか、ミスター・・・くれぐれも、他言はしないでいただきたい。どうしても詳しい事情を知りたいのなら、そちらにいる小さな魔女さん達に聞くといい・・・」
ドアが、バタンと閉まった。
クロトは男達が帰ったあとも、暫く呆然と座ったままだった。




