マカロニとの再会
出張窓が付いた書斎の机には、束になった資料らしきものが積み重ねてあった。
シスターは本棚から一冊のファイルを取り出すと、義務的に言った。
「エリック君のオジ・・・確か父方のご親戚ですわね。毎月のご寄付、心より感謝していますわ」
「いいえ。それよりも、エリックの容態は?」
「ええ。今は眠っておりますが、回復に向かっております」
「あとで子供達とお見舞いをしたいのですが・・・」
「それが、悪性が強いとお医者様に言われまして・・・本人もこのような状態では会いたくないと申しておりますし、何よりミスターや子供達に移ってしまっては大変ですわ」
「何とか・・・五分、いえ。一目だけでもいいんです。何とかなりませんか」
「ミスター、ニロー」
シスターはファイルを机の角に無造作に置いて、クロトの必死な顔を見つめた。
「あなたはエリック君の体質をどの程度、お知りになられているのです?」
クロトは眉間を寄せた。
「体質?」
「ここがどのような施設であるかを、ミスターはご存じですか・・・?」
クロトはますます困惑した。
「どういう意味でしょう?エリックには何か、私の知らない持病があるんですか?」
シスターは数秒クロトを見つめ、口を開きかけた。それとほぼ同時に、エリックに関するファイルが机の角から滑り落ち、床の上で広がった。
クロトはそれを拾う。
「あ、いえ。私がっ・・・」
シスターが慌ててしゃがもうとした時には、すでにクロトがファイルに手を伸ばしていた。クロトは何気なくファイルを覗きこみ、そしてゆっくりと目を見開いていく。冷静そうなシスターの顔からは、一気に血の気が引いていった。立ち上がったクロトは、ファイルされている便箋をシスターに示した。
「これは、どういうことですか・・・これは僕が、エリックに宛てた個人的な手紙です。それが何故、こうして中身が開けられて、あなたの手元にあるんですか・・・?」
驚愕と怒りの篭ったクロトの声に、シスターは沈黙した。
***
ロビンとシドは中庭の木陰の辺りで、ふと周りを見渡した。ベンチで読書をしている十二・三才の男の子以外、人影がない。ロビンは唸りながら頭をかく。
「完全に迷ったね」
「どうやらお得意技が出たようだ」
「探す?」
「そうだな。じゃあお前は―」
「ロビン?」
振り向くと、そこにはベンチから立ち上がった少年がいた。首を傾げていたロビンは、やがて少年が近づいて来ると、珍しく驚いた顔で声を上げた。
「マカロニっ」
縮れた金髪の少年は、擦り傷がたくさんある顔を顰めて、ぶっきら棒に言った。
「やめてよ。その呼び方・・・それより、どうしてロビンがここにいるの?問題起こして送り返されたの?」
「違うよ。観光みたいなとこ。―そっちは移動?」
「そう。一応進級したの」
「おめでと」
「知り合い?」
シドが聞く。
「一緒に住んでた」
ロビンは言った。
「僕DRKに入る前の二年間、こういう施設で育ったんだ。その時別の施設で、一年ぐらい一緒だった」
「へぇ・・・そうだったのか」
初耳だったので、シドは驚いた。
「こいつ誰?新入り?」
「同じ学校のシド。シド、こっちはジュード。通称マカロニ。でも呼ぶと、怒る」
「当たり前だろっ・・・同じ学校って・・・」
ジュードはシドを用心深く見上げた。
「あんたも魔法学校に行けたんだ?じゃあ優秀生か問題児だね?ハーフ?」
シドは目を見開いて、ジュードを見つめた。
「・・・今なんて?」
「違うの?」
不思議そうなジュードに、シドが困惑してロビンを見る。
「シドは生粋の魔法使いだよ。魔法界に住んでるんだ」
「本物っ?マジでっ?」
「そう。マジで」
じっと見つめられたシドは、混乱したままロビンに聞いた。
「どういうことだ?何であっちの学校のことを―?」
「みんな知っているよ」
ジュードの方に振り向いたシドは、さらに困惑した。
「みんな?」
「そう。この園の全員」
「はっ?」
シドが目を見開いているのを気をとめず、ジュードは続けた。
「そのだいたいの子は、アトリムグの魔法学校ねらってるんだよ」
ルイカは何故か屋内にいる自分に、溜息を吐いた。
「なぜ・・・?」




