表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天の花  作者: 猫姫 花
72/91

変わり者たちのお茶会


「もしかすると校長にペットが多いのは、子供がいないからかもしれないなぁ・・・だいたいが対話できるか、意思の疎通がとれるタイプなのも、子供のかわりに可愛がりたいからなのかも・・・」

 頬杖をついたままのシドが遠い目をすると、ルイカも悲しげな微笑を浮べた。

「そうね・・・」

「だからミスター・ユリユルネスは頭いいのかな?」


 クロトは茶を啜りながら、彼らはどうなのだろう?と思った。ロビンは自分がフレーラーだと言い、それは『特殊』なことなのだと言った。そしてルイカも、『特殊』な状況に置かれた肉体であるらしいと、シドがそれらしいことを言っていた。


 クロトはふと現実に戻り、顔を上げた。


「ひぃひぃお婆さんっ・・・」

 三人がクロトに振り向いた。

 クロトは三人を見渡す。

「が―・・・生きてるって、さっき、言った・・・?」

「え?ええ、言ったけど・・・それが何か?」

「今でも同級生だった友人と文通してるって・・・その先生は・・・今でも現役の―?」

「ええ、そうよ?」

「何歳でっ?」


 ルイカは数秒沈黙。

「ああ・・・」


 ルイカは微笑った。その横と向かいで、ロビンとシドもおかしそうに笑った。


「なるほど。僕もアトリムグに毒されたなぁ・・・」

「普通の人間の世代交代は、生まれた順番だもんな」


 クロトは困惑した。


「アトリムグでも寿命は同じで、老化のしかたもさほど変らないんだろう?・・・それともルイカの―その、ひぃひぃお婆さん達は特殊体質なの?」

 でも、特殊体質は子供が作れないはずだ、とクロトは思う。

「ええ。そうね」

 ルイカは笑った。

「ある意味当ってるわ」

「ある意味・・・?」

「アトリムグには、『ネクタール』という、それを飲むと不老になると言われている飲み物があるの。でも、それは誰にでも作用するわけじゃなくて、『ある一定の条件を満たした』選ばれた者のみに効く薬なの」

「その条件は・・・何?」

「何だと思う?」

 クロトは数十秒沈黙し、降参した。

「答えは、生殖能力がない、ということよ」


「それは・・・さっきの特殊体質と同じで、『代わりに授かるもの』、が不老なの?」


「そうね。一般的にはそう言われてるけど・・・ネクタールは誰にでも効くわけじゃないの。それに生殖能力がない、という条件も、先天的に子供が作れない者には効かなくて、もともとあったけれど、年齢や事故で無くなってしまった者にしか効かないらしいわ。だから人間のイメージする魔法使いには、魔女が多いの」


「魔女の・・・イメージ・・・?」


「今は人間界もアトリムグも平和な治安だけれど、昔は争いがあちらこちらで絶えなかったでしょう?そのせいで男は戦いに借り出されるから、生殖能力が自然消滅するまで生きる、ということが、なかなか無かった・・・でも女は、比較的男性よりも長生きしたし、生殖能力は五十歳もすればなくなるわ。ネクタールは少量を継続して、二十年ぐらい飲み続けなければいけないの。寿命が延びたかどうかなんて、童顔の多いウィタジィには表面的に分かりにくいし、薬を飲んでいる間の歳月は、刻々と年をとっていく。五十歳から飲み始めたとしても、作用が出てくるのは七十歳ごろから。本当に不老になったと確信できるのは、人間でも運が避ければ生きていられる、百二十を超えたあたりからね。魔女のイメージが『老婆』なのは、信仰対象が若い女だと困るという当時の文化と、ネクタールによる老体からの不老―、そのためよ」


 クロトは暫し、ぽかんと口を開けていた。


「じゃあ、あの校長は・・・百二十歳を越えているの?」

「ええ。とっくに。確か・・・ひぃひぃお婆様の先輩だから、五百歳は越えてるわね」

「ご、五百っ・・・五百っ?」

「老体不老になった魔法使いは、よっぽどのことがなきゃ三百歳ぐらいは生きるよ。五百は中堅ぐらい。最高齢は七百五十歳だし」

 うろたえているクロトを見て、ルイカとシドは微笑した。

「大丈夫だよ、クロトさん」


 クロトはロビンを見た。

 ロビンは椅子に両膝を立て、コンパクトに座っていた。


「僕もはじめは驚いたから。そのうち慣れるって」

「そ・・・そうなの?」

 クロトが半信半疑に聞くと、三人は妙に自信有り気に、何度も頷いた。

「慣れるわ」

「慣れるよ」

「クロトさんならね」

「そう、かな・・・?」

「だってクロトさん、変だもん」

「変?」

「変と言うより、変ってるわ」

「奇妙、という方が適切かもよ」

「きみょう?」


 三人はクロトの顔を見て頷いた。


「だって・・・ねぇ?」

 ルイカが他の二人を見ると、二人は微笑した。

「何?僕のどこがおかしいのっ?」

「だって・・・」


 ロビンは言いかけ、可笑しそうに笑った。

 シドはそれを見て苦笑し、ロビンの言葉を引き継いで、代弁をする。

 クロトはそれを聞いて、破顔した。


「だって、俺達とまともにお茶会してるんだもん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ