立場
ロビンとルイカは隣り合って歩き、休み時間特有の騒がしい廊下を歩いた。
ロビンはどこからか棒飴を取り出し、真っ赤な飴を口に入れた。横目でルイカを見る。
「シドに聞いた。倒れたって?」
「ええ。でも、何でもないわ」
「何でもなくはないでしょう。あとで保健室行っときなよ」
ルイカは数秒沈黙し、数メートル歩いたところで頷いた。
「あ、シドだ」
ルイカはロビンの視線の先に目を向けた。中庭を囲んだ渡り廊下の壁に凭れて、シドと取り巻きの少女達がいる。皆親衛隊の幹部なので、美人で気の強いのが揃っていた。談笑していたシドはふと二人を見つけて、目を細める。しかし昨夜とは違って、複雑そうな笑顔を浮べたまま「やぁ」と挨拶しただけだった。
片手を上げて挨拶したシドに、ルイカは「ハァイ」とそっけなく答えただけで、視線を前に向けて歩き続けた。ロビンはその横で気さくに手を上げる。
「放課後時間ある?」
「何かあるの?」
ロビンはシドの方へと振り向き、ルイカに背を向けた。
ルイカは思わず立ち止まり、ロビンの方へと振り返る。
「キョボック達と皆でお茶しようって。ルイカがクッキー焼いてくれるって」
「じゃあ行く」
「分かった」
シドがルイカを見ると、視線に気づいてルイカもシドを見た。それが気に入らなかったのか、親衛隊たちの顔が険しくなる。
「ねぇ、シド。クッキーなら私が焼いてあげるわ~」
「なら私も~」
「そんなに食べられないよ」
シドが困惑しながら笑っている。
「ロビン、行きましょう」
ルイカは歩き出す。
「あ。ルイカ」
シドはルイカを呼び止める。
「ちゃんと行くから」
「ええ。時間があるなら来てね?」
取り巻きの一人、上級生のマリアが言った。
「なぁにが入ったクッキーだか・・・」
その場が一瞬、張り詰めた。聖母と同じ名前ではあるが、それとは対極に位置するような性格の女だ。
ロビンは親衛隊を嫌っているので、明ら様に機嫌を悪くして彼女達を睨む。
ルイカは口元に微笑を浮べた。
「庶民が口にできないものよ、マリア」
取り巻きたちは目を見開き、赤顔之鬼のように顔を歪めた。
ルイカはそのまま踵を返して廊下を歩き出す。
煙草に見える白い棒を銜えたロビンが、その後に続こうと体の向きを変えた。
「君たちは招待されないみたいだね」
「なっ―」
細かなウェーブ髪の六年、ベティが何かを言おうとしたが、ロビンの視線が一瞬にして鋭くなったので、親衛隊たちは言葉を失くした。
彼を怒らせるのは、学校全体のタブー。特に四年から上の学年生は、彼の恐ろしさを目の当たりにしているので、恐怖に硬直した。以前、校内での火事や殺人事件に関わっているので、ロビンは普通の生徒からは遠巻きに扱われている。
ロビンは目を細めると、何も言わずに歩き出した。




