表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天の花  作者: 猫姫 花
55/91

シド・イザナズミ

 

 六章 バラの花束 編



 クロトは温かいお茶を飲んで、深い溜息を吐いた。ルイカが入れてくれた特別ブレンドだ。ジャスミンみたいな香りに鎮静効果があるらしい。

ルイカは薄黄緑色の液体が入ったポットをテーブルに置き、クロトの顔を覗き込んだ。

彼の目はまだ、充血している。


「冷やした方が良さそうね」


 ルイカは首から黒い紐を引っ張り出し、透明な石の欠片を取り出した。三センチ弱の大きさで、あまり加工がされていないために、鋭利な形だ。


「クリスタル?」

「いいえ。とっても似てるけど、これはアイストーンっていう名前なの。クリスタルの語源は『氷の化石』だって知っている?」


「ああ・・・どこかで聞いたことがあるよ」

「アイストーンは、本当に化石化した氷だと言われているの。永久凍土の洞窟からしか発掘されない、アトリムグでも貴重な宝石よ」


 ルイカはクロトの目元に宝石をかざすと、ロウソクの火を消すように、アイストーンを吹いた。すると冷たい風がクロトの目元に届き、瞬時に赤みが引く。


「わぁ・・・すごい」

 クロトは目元を押さえ、アイストーンを興味深そうに見つめる。

「触っていい?」

 ルイカから宝石を受け取ると、クロトはその冷たさに驚く。


「使ったあと数秒は、そういう風に冷たくなるの」

「溶けないの?」


「気温の変化には強いの。アイストーンが溶けるのは、所有者が魔法を使った時だけよ」 

「じゃあ僕のために?」


「気にしないで?あれぐらいなら、さほど変りは無いわ」

「・・・大事なものだったから、いつも首にかけてるんだね?」


 ルイカはアイストーンを受け取ると、首に掛けながら微笑した。


「宝石の価値というより、送り主の価値が高いのよ」

「送り主の価値?」


 クロトの質問と同時、トントン、とキッチンのドアがノックされた。

 クロトが振り返ると、窓の向うに少年がひょっこりと顔を出した。

 ルイカは思わず声を上げる。


「シドっ」


 ルイカはドアを開け、少年を見上げる。白人の金髪で、根元は暗め。白い歯が笑うと、スカイブルーの瞳が細まった。


「やぁ。元気そうだね?」


 背中に回っていたシドの片手が正面に戻って来ると、そこには真紅のバラの花束が握られていた。それをルイカに差し出すと、ルイカは十数本も束ねられている花束を、何の抵抗もなく受け取った。


「ありがとう」

「うん。計算されたみたいに服と似合うね。―何で赤?」


「まぁ、いろいろ・・・諸事情により、よ」


 まるで俳優かモデルみたいだな、とクロトは思った。なんだか映画のワンシーンを見ているような気分だった。


「ああ、そちらがミスター・クロティス=ニロー?」


 CMに出てくるみたいな爽やかな笑顔で、シドはクロトに握手を求めた。クロトがそれに応じると、わざとなのかそうでないのか分からないぐらいの加減で、手に力を入れられた。クロトは微かな敵意を感じ取ったが、その笑顔とのギャップに内心首を傾げる。


 気のせいかな?と思い直す。


「シド=イザナズミ。ルイカの同級生で幼馴染み、イトコにあたります。十五歳。ついでに独身です」


 クロトはふ、と笑う。


「奇遇だね。僕も独身だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ