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天の花  作者: 猫姫 花
43/91

花茶


 ***


「似てるって、顔が?能力が?」

「どっちも。入学試験をトップでクリアして、その姿が―・・・誰だっけ・・・トニー。コニー・・・ポニー?」

「馬づら?」

「ううん。ハリー、ホリー・・・ああ。ホリーだったかな?」


「イギリリスのホリー・・・ホリー=スミス。ホリー=ラジック。ホリー=バルベロス、ホリー=アリソン・・・」

 ルイカが呟くと、ロビンは「うぅん」と唸った。


 ルイカはクロトに向って肩を竦める。


「ロビンは異常なほど、人物名を覚えるのが苦手なの」

「それで・・・僕のも?」

「そう。別にからかってるわけじゃないから、お気を悪くなさらないでね?」

「別に怒ってないよ」


 クロトは苦笑した。


 ルイカはポットを回し、茶葉を蒸らしている。

 ロビンは顔を顰めて唸りながら、その様子を見ていた。

 薄ピンクの液体の中で、赤茶色の茶葉が踊っている。


「ああっ、そうだ。ポット。ホリー・ポットーだ。彼の十二・三歳ぐらいに似てるんだって。総合的に成績が抜きん出てるし、色白で丸メガネ、黒髪だって」


 ルイカは数秒後に、「ああ~」と言う。


「ええ。彼ね・・・ロビン、とってもおしいわ」


「うん。分かったんならいいや。それでそいつの相棒のフェネクシーが」

 ロビンはクロトを見る。

「フェネクシーは三つ足カラスのことね。で―」

 再びルイカの方へ向いた。

「そのフェネクシーがとっても頭よくて、主人の言うことよくきくらしい。そんでそいつが昨日、キムリが立ち眩みして落とした卵を、みごとキャッチして救ったんだ」


「まぁ・・・やっぱりキムリ・・・抜けてるわ・・・」


「それでその時、超低空飛行したフェネクシーに驚いたアルバートが、中庭で派手に転んだんだ」

「アルバートが?」


 ロビンは頷き、にやにやと笑った。


「それで、中庭には噴水に住んでる大きな鯉がいるでしょ?あいつが驚いて、そのひょうしに水飛沫をあげたんだ。それが見事にアルバートと取り巻き達にかかって、周りは爆笑と失笑の渦―」

 ロビンは口を押えていたが、思い出し笑いが止まらないらしい。

「ルイカにも見せたかったっ・・・」


 ルイカは口元に薄らと笑みを浮べながら、カップにお茶を注いだ。クロトにカップを差し出し、その中に赤い粒を三つ入れた。


「アルバートは、アポロリック家に並ぶ貴族の家の次男なの」

「ルイカの家は、貴族なの?」


 ルイカは、あ、と言う顔を一瞬した。苦笑する。


「一応ね。アルバートは家柄を笠に着て悪さするから、媚びる者はいても、慕われるタイプじゃないの」

「なるほど・・・」

「僕、あいつキラーイ」


 ロビンがそう言うと、クロトはカップの中を見て感動する。


「わぁ・・・可愛いな」


 ピンクのお茶の中に、少し色の濃いピンクの花が浮いている。桜の花に似ているが、花弁が四枚しかない。とてもいい香りが、芳香していた。優しい、甘い香りだ。


「これは香りを楽しむの。自己主張しないから、クロトさんでも大丈夫かと思って」

「うん。いい香りだ」

「花は食用なの。一緒に飲み込んでも平気よ」


 ルイカはロビンのカップに赤い粒を入れた。


「ゆっくり、目と鼻と舌で楽しむのよ」

「ういーっす」


 ルイカは自分の分を淹れ、ふとロビンを見た。


「ねぇロビン、あなた校長のおつかいで来たんでしょ?通信道具運んで来たって言ってたけど―・・・いつ連絡が入るの?」


 ロビンはズズズズと音を立ててお茶を飲みながら、数秒天井を見つめていた。

 はぁ、と溜息を吐き、「あっ・・・」っと言うと、テーブルにカップを置いた。


「こっちから連絡するんだった」


 ルイカは一瞬動きを止め、はぁ、と大きな溜息を吐いた。


「ロビン・・・」

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