花茶
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「似てるって、顔が?能力が?」
「どっちも。入学試験をトップでクリアして、その姿が―・・・誰だっけ・・・トニー。コニー・・・ポニー?」
「馬づら?」
「ううん。ハリー、ホリー・・・ああ。ホリーだったかな?」
「イギリリスのホリー・・・ホリー=スミス。ホリー=ラジック。ホリー=バルベロス、ホリー=アリソン・・・」
ルイカが呟くと、ロビンは「うぅん」と唸った。
ルイカはクロトに向って肩を竦める。
「ロビンは異常なほど、人物名を覚えるのが苦手なの」
「それで・・・僕のも?」
「そう。別にからかってるわけじゃないから、お気を悪くなさらないでね?」
「別に怒ってないよ」
クロトは苦笑した。
ルイカはポットを回し、茶葉を蒸らしている。
ロビンは顔を顰めて唸りながら、その様子を見ていた。
薄ピンクの液体の中で、赤茶色の茶葉が踊っている。
「ああっ、そうだ。ポット。ホリー・ポットーだ。彼の十二・三歳ぐらいに似てるんだって。総合的に成績が抜きん出てるし、色白で丸メガネ、黒髪だって」
ルイカは数秒後に、「ああ~」と言う。
「ええ。彼ね・・・ロビン、とってもおしいわ」
「うん。分かったんならいいや。それでそいつの相棒のフェネクシーが」
ロビンはクロトを見る。
「フェネクシーは三つ足カラスのことね。で―」
再びルイカの方へ向いた。
「そのフェネクシーがとっても頭よくて、主人の言うことよくきくらしい。そんでそいつが昨日、キムリが立ち眩みして落とした卵を、みごとキャッチして救ったんだ」
「まぁ・・・やっぱりキムリ・・・抜けてるわ・・・」
「それでその時、超低空飛行したフェネクシーに驚いたアルバートが、中庭で派手に転んだんだ」
「アルバートが?」
ロビンは頷き、にやにやと笑った。
「それで、中庭には噴水に住んでる大きな鯉がいるでしょ?あいつが驚いて、そのひょうしに水飛沫をあげたんだ。それが見事にアルバートと取り巻き達にかかって、周りは爆笑と失笑の渦―」
ロビンは口を押えていたが、思い出し笑いが止まらないらしい。
「ルイカにも見せたかったっ・・・」
ルイカは口元に薄らと笑みを浮べながら、カップにお茶を注いだ。クロトにカップを差し出し、その中に赤い粒を三つ入れた。
「アルバートは、アポロリック家に並ぶ貴族の家の次男なの」
「ルイカの家は、貴族なの?」
ルイカは、あ、と言う顔を一瞬した。苦笑する。
「一応ね。アルバートは家柄を笠に着て悪さするから、媚びる者はいても、慕われるタイプじゃないの」
「なるほど・・・」
「僕、あいつキラーイ」
ロビンがそう言うと、クロトはカップの中を見て感動する。
「わぁ・・・可愛いな」
ピンクのお茶の中に、少し色の濃いピンクの花が浮いている。桜の花に似ているが、花弁が四枚しかない。とてもいい香りが、芳香していた。優しい、甘い香りだ。
「これは香りを楽しむの。自己主張しないから、クロトさんでも大丈夫かと思って」
「うん。いい香りだ」
「花は食用なの。一緒に飲み込んでも平気よ」
ルイカはロビンのカップに赤い粒を入れた。
「ゆっくり、目と鼻と舌で楽しむのよ」
「ういーっす」
ルイカは自分の分を淹れ、ふとロビンを見た。
「ねぇロビン、あなた校長のおつかいで来たんでしょ?通信道具運んで来たって言ってたけど―・・・いつ連絡が入るの?」
ロビンはズズズズと音を立ててお茶を飲みながら、数秒天井を見つめていた。
はぁ、と溜息を吐き、「あっ・・・」っと言うと、テーブルにカップを置いた。
「こっちから連絡するんだった」
ルイカは一瞬動きを止め、はぁ、と大きな溜息を吐いた。
「ロビン・・・」




