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天の花  作者: 猫姫 花
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退学の予感


 ***


 部屋に入って扉を閉めると、薄暗い室内は密室となった。

 サンズは足の丈が微妙に違う椅子に座り、溜息を吐くと手袋を外した。粗末なテーブルの上に両肘を乗せると、拳を組んで祈りのポーズのまま眉間を小突く。


「何故・・・何故なんだ・・・」


 貧乏揺すりを始めた右足が止まらない。サンズは立ち上がり、先ほどの絵画を取り出した。座卓に立てかけると、ポケットに入っていたマッチを取り出し、擦る。小さな光が灯った棒を、テーブルの上にあった香壺の中へと放った。幾つもの小さな穴から、白い煙が漂う。サンズは壁の一部にかかった紫色の厚いカーテンを引き、その奥にある堀部屋のベッドへ腰を降ろした。


 痙攣している右足が、煙の充満とともに大人しくなり、体が気だるくなってゆく。深い溜息を吐くと、それと同時にベッドへと倒れた。両手を投げ出して目を瞑っていたサンズは、顔を顰めて押さえる。髪に隠れている部分が、ひりひりと痛み出した。


 フラッシュ・バック。

 灼熱の右手。


 サンズは体を縮こまらせ、胎児のような姿勢になる。体が小刻みに震え、食い縛った白い歯の間から嗚咽が漏れた。


「何故・・・何故なんだ、ミスター・クロティス・・・何故・・・あなたばかりが・・・」


 サンズは歪んだ顔をシーツに埋め、震える拳を握り締めた。


 ***


 図書館のほぼ真中に腕章をした生徒が立つと、持っていたガラスのベルを鳴らした。読書に耽っていた生徒達が立ち上がりだす。ルイカは目頭を押えながら深い溜息を吐き、かぶりを振った。


 ロビンは肩を押えながら首を回し、ルイカを見た。


時間切れ(タイム・アウト)


 ルイカは立ち上がり、浮かない顔で頷いた。


「どうするつもり?」


 ルイカは数秒沈黙し、本棚の死角にいるロミオを呼んだ。本棚の陰から、ロミオの首だけが覗く。

「なに?」

「明日も来るから、ここの本はそのままにしておいてくれる?」

「いいよ」


 ルイカはロビンと共に特別閲覧室を出て、元来た道を戻り始めた。図書委員を横切ったところで、ルイカの横目がロビンを見る。


「明日解決法が見つからなかったら、学校に報告するわ」


 ロビンは数秒、沈黙した。


「運が悪かったら・・・退学?」

「・・・かもしれないわ」


「二番目のお姉さん探しは?」

「中止ね。家の者が許すわけないもの・・・」


 ロビンはまた沈黙し、制服のネクタイをぎゅっと締め直した。


「報告する前に、シドに相談した方がいいんじゃない?」

「そうね。でも・・・ナーズの所にはいなかったの・・・」

「そう・・・」


 図書館の扉を開けて、二人は外へと出る。


「明日も手伝うよ」

「ありがとう」


 二人は頷き合うと、反対の方向に向って歩き出した。


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