第19話「血の後始末」
「はい、大樹。これ持って」
仁美が差し出したのは、黒いビニールシートとガムテープ、そして大型のカッターナイフだった。
「……なにこれ」
「死体処理セット。さっさとやんないと、藍影会の仲間がすぐ嗅ぎつけてくる」
床には、先ほど倒した男たちが転がっている。
まだ温かい血の匂いが立ち込め、大樹の胃の奥がきゅっと縮む。
「ま、まさか……解体、とか?」
「そうよ。運ぶより細切れの方が楽でしょ? ほら、関節の隙間をこう——」
仁美は慣れた手つきで男の腕を捻り、関節部にナイフを差し込んだ。
骨が外れる音が、やけに鮮明に響く。
「うっ……」
思わず目をそらす大樹の背後で、仁美が笑う。
「何? 今さら引くの? あんた、もう立派に“やった”んだから」
仕方なく大樹も作業を始める。
汗と血と鉄の匂いが混ざった空気の中、手が震えてテープがうまく切れない。
その手を、仁美が後ろから包み込むように押さえた。
「力の入れ方、こう」
耳元で囁く声が妙に近く、鼓動が早まる。
二人で袋詰めを終えた頃、仁美は外の気配に眉をひそめた。
「……やっぱり来るわね」
「え?」
「藍影会の報復部隊。血の匂いを嗅ぎつけたか、追跡してきたか……どっちにしろ厄介よ」
その瞬間、廊下の向こうから重い足音が響き始めた。
大樹は手に持ったカッターナイフを見下ろし、唾を飲み込む。
——今度は、もう迷っていられない。




